恥ずかしい、っていう次元ではない。
「はじめまして、恥ずかしいところお見せしました。」
「王女がうっかりしてすいません。」
姫君とお付きの美女のちょっと転んでしまった、みたいな言い方に我々の理解が追い付かない。
魔王、口を閉じなさい。
アホの子だとばれますよ。
「いちいち念話するなよ、口で言えよ!」
やれやれ、です。
外務大臣がおそるおそる問いかけました。
「姫君、先程怪我をしたように見えましたが大丈夫でしたか?」
「はい、大丈夫です。」
ちょっとはにかんで笑う姫君は美人とか美少女ではないが可愛らしい。
どことなく幼さもあるので、魔王と並ぶとロリコン趣味野郎にも見える。
やーい、犯罪者☆
「おまっ…柔和な笑みをたたえながら何失礼なこと考えているんだよ!」
うっかり念話を流してしまったので、魔王に襟首捕まれがくがくと揺すられる。
やめなさい、魔王。
姫君はキョトンとして、お付きの美女には物凄い冷たい目で見られてますよ。
宰相閣下が咳払いをすると魔王は私を解放し、直立不動となった。私も背筋を伸ばした。
宰相閣下は魔王様の教育係をかつてつとめていまして私共々しごか…イエイエ素晴らしい教えをシテクダサイマシタ。
「ちょっと死んでいただけです。お恥ずかしい…」
「王女様ったら嬉しくてはしゃいで馬車から出るからです。
申し訳ありません。石畳を血で汚してしまって。」
「「「は?」」」
「皆々様、王女様は環境の変化によりけっこうなレベルで死にますが、よくある事ですので慣れてください。」
お付きの美女の言葉にその場にいた全員が固まったのだった。