プロローグ
ゆるーいふぁんたじー
とある世界のとある大陸には長らく対立してきた人族と、魔族・獣人達がおりました。
何百、何千と戦い続けた彼らですがやっと手を取り合う時が来ました。
同盟と和解の証に、かつて歴代勇者を輩出した王国と、魔族と獣人をまとめた魔王の王国が婚姻関係を結ぶ事となりました。
本日は、その人族の王国から魔王の妻となる姫君がやって来る日です。
姫君にとって幸いなのは今代の魔王は人族に近い姿で、絶世の美しさを誇る事でしょうか。
ああでも、女性的には自分より美人な夫は複雑かもしれません。
「しかも、こんなだらけた外見詐欺だなんて知ったら深窓の姫君は卒倒してしまうやも知れませんね。ああ、おかわいそうに。」
「知らねーよ、つーか結婚相手の自由もない俺がかわいそう!」
ブスくれた魔王は、それでもなお美しいのでした。
魔王を名乗るだけあって、その魔力は絶大で、その気になれば人族なんぞお一人でも一捻りできますがそうもいかない事情がありました。
魔族や獣人は血が濃くなりすぎると出産率低下や乳児の死亡率が格段に上がってしまうようになってきました。
これは存亡の危機です。
そこで、検討されたのが人族との異種族婚。
三代前から歴代魔王達が人族や勇者と交渉、内部への説得を根気強く行ってきたことで実った今回の婚姻。
人族との結婚は血が濃くなりすぎる・魔力が強大過ぎる者達にとっては救いとなるからです。
「かつて無いほどの魔力を持ったがゆえ女性といちゃこらできない魔王様、贅沢を言わないでください。」
過度な接触をすれば相手方がぱーんって破裂する風船のごとく飛び散ってしまうのです。
あれはトラウマです。
復活の呪文を唱えれば生き返りますか、その生き返りも限りがあります。
人族と比べれば復活枠は多い我らですが、やはり痛みや恐怖は感じるのです。
故に、全てに傅かれる魔王ですか、美形で、地位もある魔王ですか、ぱーん事件後鑑賞用枠扱いで非モテ道まっしぐらで最近はやさぐれてます。
「俺がやさぐれてるのはモテないからじゃない!
お前らがよってたかって俺をこき下ろすからだ!」
やれやれ、です。