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その優等生ゲスにつき  作者: カツ丼王
28/31

26.決戦当日

 空は雲が覆い尽くしており、青い空はほとんど確認できなかった。今年は毎朝早くから登校するのが日課だったが、今日は生徒達に混ざって学校までやって来た。


 靴箱で上履きに履き替え、迷うことなく自分の教室へと向かい、鞄をデスクの横にかけて、テキスト類を引き出しにしまう。そんな動作すら、どこかぎこちなかった。自分でも気づかないうちに、緊張しているのだろうか?


 午前中の授業を受けている間も、内容は全く頭に入って来なかった。この後に控えていることを考えるだけで一杯一杯。……大丈夫、何回も状況はシミュレートしたし、準備も完璧にしてある。心配する必要はない。


 そうしている内に、四限目の終了を告げるチャイムが鳴った。教師が教室から退出し、それを合図に俺はすぐさま席を立つ。足早にクラスメイト達の間を抜けて廊下へと出ようとすると、伸也、三枝、雄介の三人が俺の方へと近寄ってきた。


「頑張れよ! 朝霧!」


「頑張ってね! 応援してるから」


 雄介と三枝が口々に俺へのエールを送る。


「任せとけ! 必ず決める! みんなにも協力してもらったんだし、無駄にはしない!」


 俺は彼らの言葉に対し、親指を立てて力強く返事をした。だがそんな二人とは対照的に、伸也の表情には不安が露わになっていた。


「……無理はしないでね。上手くいけばいいけど、やり過ぎたら……今度は鏡夜が大変な目に遭うかもしれないから」


 心配そうな声音で俺に語りかける伸也。


「無理なんてしない。それにほとんど会長がやるんだし、俺は付き添いみたいなもんだから……大丈夫だ」


 俺は平静を保ったまま伸也の言葉に応え、三人を背にして教室から出た。


 そのまま俺はある場所を目指して歩き出した。廊下や階段を通っていると、知り合いの先輩や後輩、同級生の友人たちが伸也たちと同じ様にエールを送ってきた。皆知っているのだ。これから俺達が何をするのかということを。


 俺は黙々と歩を進め、遂に目的の場所にまでやってきた。


 校長室前。


 ドアの横に設置してあるプレートには、その文字が彫られていた。


「……」


 生徒達が普段は訪れることのない部屋。当然のごとく、昼休みだというのに廊下には誰もいない。静かな空間には、俺一人が立ち尽くしていた。


 しばらくそうしていると、早足でやってくる足音が聞こえてきた。


「ご、ごめんなさい! ……ギリギリまで集計して、書類を作っていたから」


 やって来たのは錦織会長。手には何枚かの用紙が握られていた。


「そこまでやらなくて良いでしょう。とっくに票数は足りているんだし」


 俺がそう言うと、会長はムッとした表情になった。


「協力してくれた生徒の努力は、少しも無駄にはできないわ。……それに、一票でも多い方が有利になるかもしれないし……」


 会長もここにきて、緊張し始めたのだろうか。段々と彼女の顔は強張っていった。


「頼みますよ。……けど、ヤバくなったら俺も助けに入ります」


 錦織会長の緊張を解すために、俺はそんな言葉を送った。


 それを聞いた会長は徐々に元気を取り戻し、俺に笑いかけた。


「安心して! これでも生徒会長よ!? ……それにあなたが居れば、心強いわ!」


 会長は力強い言葉と共に大きく胸を張る。それを見て俺も思わず苦笑してしまった。この人は大丈夫だ。それなりに長い付き合いの中、俺にはそれが分かっていた。


「……じゃあ、行くわね」


 会長は俺に確認を取り、校長室の扉をノックした。


「失礼します」


 はっきりと響く声を発した会長は、扉を開けて中へと入る。それに続くように、俺も校長室へと足を踏み入れる。


 部屋の中はそれなりの広さがあり、壁にはたくさんの写真が掛けられ、客人に対応するための髙そうな椅子とテーブルが備えられていた。そしてその奥、扉を向くような形で五十嵐校長はデスクに腰かけていた。


「……何の用でしょうか?」


 眼鏡を掛け、鋭い眼光を放つ初老の女性。一切の乱れもなくスーツを着こなし、折り目正しい姿勢のままこちらを観察する。五十嵐梓――この女が憐明高校の校長を務めている。


「はい。実は校長先生にお渡ししなければならない物があり、お邪魔させて頂きました」


 厳格な態度の校長に対し、会長は臆することなく用件を伝え始める。その言葉にわずかに眉を吊り上げる校長だったが、それを尻目に会長は持っていた用紙を見せた。


「単刀直入に言います。『生徒のアルバイト禁止』という校則を撤廃してください」


 その言葉を聞いた途端、校長の動きがピクリと止まる。そして変わらない表情のまま、静かに口を開いた。


「……どういうことかしら? 説明して下さる?」


 声音は冷静な物であったが、目は明らかなまでの不快感を滲み出していた。


「全校生徒に校則の撤廃についての是非を取り、結果として過半数以上の賛成が得られました。規約に則って、学校側に校則の撤廃を申請する運びとなった次第です」


「そんな話、私は聞いておりません。生徒投票を行ったなど報告されていません」


 会長の発言に合点がいかないのか、校長は手を組んで疑問を呈した。


「今回は学校が休校したことに加え、放課後もすぐに下校しなければならない状況であったため、電子メールやソーシャルネットワークサービスを投票媒体として、活動を行いました。期間は一昨日の夜間から本日正午までです」


「……たったそれだけの時間で……?」


 校長が初めて驚いたような声を上げた。


 昨日は四割にも満たなかった投票数だが、今や三分の二に迫る勢いにまで増えている。それは昨日の夜に行ったアナウンスが原因だった。俺は票を入れてくれた生徒とその他連絡を取り得る者全てに、投票活動の中間報告を行ったのだ。――細工と工夫を施して。


 まずやったのは投票数の偽装。俺は全体の票数を過半数にまで水増しして報告した。これは見た者達が『生徒の多くが投票に参加している』と錯覚させることが狙いだった。『参加する者の方が多数派』ということを知れば、その流れに乗る奴が出てくると予想したからだ。


 加えて各クラス個別の投票結果も発表した。自分の所属するクラスの投票結果を知れば、誰もが無関係だとは思わないだろう。これは無関心な生徒の意識を変えることが目的だった。


 そして最後、おそらく最も効果的だった策。


 それは、報告の中にある文面を加える――ただそれだけ。『投票して下さった生徒には、後日正式な書式に記入してもらう必要があるかもしれません。その場合は生徒会が各クラスに赴き、参加して下さった方の名前と出席番号などを確認した後、記入をして頂くことになります』と。これは不参加の生徒からすれば、危機的状況に陥る可能性を含んでいた。なぜなら、この文言通りの事が行われれば、周りのクラスメイトに『自分が投票していない』ということが露呈するからだ。そうなれば、彼らは批判的な目で見られてしまうかもしれない。


 人は他人事には無関心で残酷だが、いざ自分の事になれば話が変わる。この策はその心理を上手く突くことが出来たのだろう。


「……我々に許可を取らず、独断で行った……これは問題です。それに、厳正な監視下で行わなければ、正当な結果とは言えないでしょう」


 校長は表情を厳しいものに戻し、淡々と追及の言葉を述べる。


「やり方にご不満があるのでしたら、今からでも正式なやり方で再投票を行います。一度投票してくれた以上、生徒達も快く協力してくれるでしょうから」


 会長も負けじと力強く発言する。


「それに……校内の生徒達は、今回の学校側の対応に不満を持っています。校則を破ったとはいえ、如月先生と桐生さんの行動や目的には、誰もが一定の理解を示すはず。にも関わらず、如月先生は謹慎、桐生さんにまるでは配慮がない……それに今後、更なる処分があるかもしれない。二人には、もっと温情を持って対応するべきです」


 会長は感情が籠った声で校長へと詰め寄った。だがその発言はマズイ。案の定、その言葉を聞いた校長は俺の方へと視線を向け、さらに鋭い目つきになった。


「朝霧君……あなたですか? 事の詳細を話したのは? 校内の不安を煽らないよう、発言は控えるようにお願いしたはずですが?」


 やはり来たか。詳しく事情を知る人間は限られている。そしてこの場に居る以上、俺に疑いを掛けるのは当然だ。まあ、こうなると分かった上で居るわけだが。


 俺は校長の方を真っ直ぐに見据え、弁明することにした。


「はい。校長先生に言われた通り、校内の動揺を考え、途中までは沈黙を守りました。しかしながら、脅迫状が届いたことで状況は変わりました。私と桐生さんの前に現れた男は未だ捕まっておらず、脅迫状の類を送り付けた過去があります。そのため今回の脅迫犯と同一人物かもしれないと思い、勝手ながら周知することを決めました。これは生徒達の身の安全を考え、情報を共有する方が良いと判断したためです」


 俺は出来得る限り冷静を保ったまま言葉を返す。それに対し、校長の表情は険しい物へと変わった。


「それは勝手な憶測です! 同一人物だとなぜ分かるのです!? あなたは勝手な判断をするべきではなかった……浅はかな行為だと言えます!」


 校長の言葉には怒気が含められていた。額には青筋が走り、年季の入った双眸で俺を睨み付ける。


「待ってください! 彼は被害者じゃないですか!? そもそもなぜ、そんな大事なことを私たちに黙っていたんですか!?」


 その様子を黙って見ていられなかったのか、会長が割って入った。彼女の発言を聞き、校長は再び平静な顔つきになった。


「錦織さん。私たちは決して黙っていたわけではありません。事実、みなさんに伝えたはずですよ。『我が校の生徒がストーカー被害に遭い、またアルバイト活動を行っていた。そしてそれに如月教諭が加担していた』と」


「ですが! 朝霧君の事は何も……」


 会長はなんとか食い下がろうとするが、校長は全く動じない。


「それは彼の学校生活を考えたからです。関わったと周知されれば、彼の日常生活に支障が出るかもしれない。……桐生さんは渦中の人物ですから、流石に伏せることは出来ませんでしたが、それでも実名は挙げていません。十分に彼らのケアが終わってから、再度詳細を皆さんに伝えるはずだったのです。……その前に、また問題が起きてしまいましたが……」


 校長は話しながら苦虫を潰した様な表情になった。ストーカーだけでなく、脅迫犯まで現れたのだから当たり前か。


「それに、私は桐生さんを処分しようなどとは考えていません」


「……え!?」


 校長の言葉に俺と会長は声を出して驚いた。


「彼女は確かに校則を破りましたが、それは教師の監督の下です。ですから、処分されるのは如月教諭だけです。彼女に責任を追及することはありません。……当然、アルバイトは今後禁止ですが」


 会長はこれには思いもしなかったのか、驚いた表情のままだ。だが一方で俺は焦っていた。この流れは校則の撤廃を出来る空気ではない。それではダメだ。桐生は……母を助けるためにバイトをしてお金を作る必要がある。それにこのままでは、如月先生も助けられない。だからこれは望む形ではないのだ。


「校則の撤廃は……生徒のアルバイト活動は禁止のまま、ということですか?」


 俺は校長に問いかけることにした。


「その通りです。あなた方の行動の意図は分かりましたし、校内にいる生徒の感情も理解しました。ですが校則の撤廃は出来ません。そしてルールを破った以上、如月教諭には責任を取って頂かなければなりません」


 俺の問にきっぱりと校長は答えた。やはり認めないか……過半数以上の票を集めたのは良いが、この女に認めてもらわなければ意味がない。


「ですがここは学校……教育現場です。そして校則はその集団のルール……生徒を正しく導くために存在する物のはずです。桐生さんはアルバイトをしながらでも、高い成績を維持していました。正当な理由があれば、今回のような行動も認められても良いのではないでしょうか?」


 尚も俺は食い下がるため、必死に言葉を紡いだ。


 何としてでも桐生が今のまま、母のために働ける環境を用意する必要がある。アイツにはそれが不可欠なのだ。そうでなければ……あの親子は互いに優しすぎて、無理をしてしまう。どちらかに負担が偏れば、どちらも壊れてしまう。


 だが校長は首を横に振り、受け入れない意志を示した。


「特例を作るつもりはありません。教育現場であるからこそ、平等の下、厳しくルールを遵守させる必要があるのですから――」


「……ですが……」


 反論しようとするが、この状況を打破することは俺には無理だ。見込みが甘かった。申請にまで持っていけば、俺だけで何とかできると思ったのだが……。



「――そうでしょうか? 私は柔軟に対応することが求められていると思いますが?」



 でも、まだ切り札は残されている。


 俺達が話している最中、部屋の扉が開き、何者かがこの場に介入してきた。


「――な!?」


 目を見開いて驚く校長。


 何事かと振り返ると、そこには如月先生の姿があった。


「き、如月先生!? なぜここに!?」


 会長も予期せぬ人物の来訪に、ただただ驚くばかりであった。そんな俺達を余所に、如月先生はいつものように腕を組んだまま、どっしりと構えている。


「……自宅謹慎を言い渡したはずですが?」


 校長が如月先生を真っ直ぐに睨み付ける。が、その威圧感など全く気にしないといった様子で、如月先生は話し始めた。


「いえ、何でも生徒達が私のミスの尻拭いをしていると聞きまして……教師として、これは黙っていられないと思い参上した次第です」


 如月先生は校長を正面から見据えたまま、動じる素振りすら見せない。


「……彼らは校則の撤廃を申請しました。そしてそれは認められません。あなたの責任についても、厳正に対処するつもりです」


 校長は目を瞑り、淡々とした口調で如月先生に最後通牒を突き付ける。


「私の処分はどのようにして頂いても結構です。……ですが、校則の件については折れていただきます」


「――え!? せ、先生!? 一体何を!?」


 会長は先生のあまりの物言いとその内容に、度肝を抜いているようだ。校長も顔をしかめてその様子を観察する。


「……あなたの事です。この場に来たという事は、ただ宣言するだけではないでしょう?」


 校長は今までにないくらいに警戒心を露わにした表情になっていた。そしてそんなこと知った事ではないと言わんばかりに、如月先生はある書類の束を見せた。


「生徒から申請された案件は、職員達で話し合いを行い、校長もしくは理事長が最終的な決定を下す。……これは教員達に書いてもらった、生徒の申請を承認するようにお願いする嘆願書です。これも過半数以上あります」


 如月先生は軽い足取りで校長のデスクへと近づき、その紙束を渡した。


「……自宅謹慎をしていたはずですが……これはいつ用意したのですか?」


 校長は中身をペラペラめくり、嫌味を加えながら先生に問いかけた。


「ここに来る途中、職員室に寄って書いてもらいました。その場に居た人間にしか書いてもらえなかったので、残念ながらそれだけしか数がありません」


「……は!?」


 これには俺も度肝を抜かざるを得なかった。そんな寄り道するぐらいの気持ちで、職員の半分以上から嘆願書を書いてもらえたのか!? どんだけ人気と人望があるんだ、この人!?


 校長は目を通し終わったようで、再び如月先生に向き直った。


「……なるほど、確かに数は揃えてありますね。ですが知っての通り、最終的な決定権は私と理事長にあります。そして私は理事長から学校管理に関しては一任されている……」


「ええ、その通りです。私達がいくら足掻いたところで、あなたが許可しなければ全て白紙に戻ってしまう」


 校長は全く妥協する様子がない。如月先生もそれを理解していたのか、さらに話を続ける。


「ですが、よろしいのですか? 今回の生徒達の活動はいずれ地域社会、PTAや父兄も知ることになるでしょう。そしてその動機も。……そうなると、我々教員達はどう思われるのでしょうか?」


 桐生彩という生徒を慮り行われた投票。生徒達が自主的に動き、問題を解決しようと努力した。それを学校が無下にしたと見られれば、おそらく批判の的になってしまうだろう。特に今、憐明高校は世間の注目を集めているのだから。


 正論であるが、俺は如月先生の挑発するような態度に怖気がした。いくらなんでも怖いもの知らず過ぎる。校長のことだ、怒り心頭になるに違いない。


 だが俺の予想とは裏腹に、校長の顔つきは真剣そのものだった。


「……あなたの言いたいことは分かりました。……良いでしょう、校則の撤廃までは認められませんが『生徒の家庭環境に已む得ない事情がある場合は、アルバイト活動を許可する』と、内容を改定する。……これでよろしいですね?」


 校長は観念したような表情になり、ため息交じりにそう答えた。


「え!? 良いんですか!?」


 まさかの校長の言葉に、会長は声が裏返っていた。


「生徒の過半数以上、教員の過半数以上……学校という集団の総意が出した結論です。私はそれの長であり代表です。……私個人は反対ですが、それは私の立場では許されない」


 校長の出した結論は至極あっさりした物だった。学校を治める長としての責任感がそうさせたのだろうか? 規律と風紀に厳しいだけの印象だったが、それは間違いだったのかもしれない。


「それと如月先生への処分内容は減給処分に変更します。……謹慎処分は守る気がなさそうなので。それとここ最近のゴタゴタした案件の処理も、全て一任します」


「分かりました」


 校長の言葉に先生は二つ返事で応答した。

面倒事も全て押し付けられてしまったようだが、先生も事なきを得たようだ。仲が悪いと思っていたが……実は仲が良いのではないだろうか? クビになると勝手に思っていたが、最初からそんな事にはならなかったのかもしれない。……俺がいくら考えても、この疑問の答えを知ることはないだろう。


 校長は俺達が入室する前に取り組んでいた作業に戻った。


「もう用はないでしょう? もうすぐ午後の授業が始まります。教室に戻りなさい」


「……はい」


 俺と会長は顔を合わせ、やるべきことが終わったのだと悟った。


「……ああ、それと、先ほど警察から連絡がありました。桐生彩さんをストーキングしていた犯人を逮捕した……と」


 退出しようと背を向けた俺と会長だが、校長のその言葉に目をパチクリさせて驚いた。


「ほ、本当ですか!? ……良かったね! 朝霧君」


 その場で飛び跳ねて喜ぶ会長。

犯人が逮捕された……それならば、もう桐生を脅かすような存在はいないということになる。校則も変わって、これからはアルバイトも堂々と行うことができる。


「そうか……良かった。これで何もかも……上手く行く……!」


 俺は喜びが込み上げて来るのを感じた。……全てやり切ったのだ。誰も傷つくことなく、誰もが望むような形で……。


「さあ、もう良いでしょう。早く行きなさい」


 校長は俺達の様子に気にも留めず、事務的に退出を促す。


「は、はい。……それでは失礼します」


 会長はハッとなって自分の行動に恥じらいを感じたのか、顔を赤くしてそそくさと退出する。


 俺もその後を追うように扉へと向かう。


「……朝霧、後で話がある……いつもの所で待っていろ」


「……え?」


 ドアノブに手を掛けると、如月先生が俺にしか聞こえないくらいの声でそう呟いた。何事かと振り返るが、先生は俺に背を向けたままだった。


 何となく返事が出来ず、俺はそのまま校長室を後にした。


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