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その優等生ゲスにつき  作者: カツ丼王
16/31

幕間


 その教室はどうしようもない悪意で満ちていた。


 表面上は仲良くしている様に感じられる。


 しかし実態は全くの逆。


 生徒たちの笑い声。教師による授業。


 どこにでもある日常。


 その全てが不快だった。


 どうしてあんなにも楽しそうなのか? どうしてそれほどまでに平然としていられるのだろうか?


 僕は教室のドアを開ける。


 クラスの生徒達の目が僕に集まった。


 僕はそれを気にしないように、気づかないように、一定のリズムで自分の席へと向かう。


 離れた席から嘲笑が聞こえてきた。ヒソヒソと僕の事を話している。


 教室内の全ての人間が僕の敵だった。


 最初の頃はこれだけで身動きできなくなり、お腹が痛くなったけど、今は我慢できるようになった。


 目線を逸らさず、前だけを見据え、出来るだけ視界に彼らが映らないように歩く。


 僕はそのまま席へとたどり着くことが出来た。


 机を見るといつものように落書きが書かれ、ガムなどのゴミが放置してあった。


『裏切り者』『死ね』『学校に来るな』『自殺しろ』


 何度聞いたか分からない言葉の羅列。


 僕はいつも通りそれらを消しゴムで消して、ゴミを払い落とす作業に従事しなければならなかった。


 僕のその姿を見て、再びせせら笑う様な声が漏れたようだった。


 惨めで、悔しくて、涙が出そうだった。


 でもそんな姿を見せてしまえば、もっと馬鹿にされ、笑われてしまう。


 だから平然としないといけない。


 そんなことしか出来ない。

 

 ――でも逃げる事は不可能だった。

 

 僕はそれだけの事をやったのだ。この痛みは受けなければならない。


 仕方がない。諦めるしかない。


 ……でも、どうしても考えてしまう。


 ついこの間まで仲良しで友達だったはずの僕に、どうしてこんな事が出来るのだろう? 何とも思わないのだろうか? 心は痛まないのだろうか?


 僕を親友だと言ってくれた男子生徒。


 僕の事が好きだと言いてくれた女子生徒。


 以前までの彼らは、僕に笑顔を見せてくれていたというのに。


 それがどうしても、気持ちが悪い。


 同じ空間にいる人間が仮面を被っているような感覚になる。


 優しかった友達も、褒めてくれたはずの先生も、何もかもが嘘だった。


 みんな僕の事を人間と思っていないかもしれない。


 けどそれは僕も同じだ。今だって、何ともない振りをしている。


 僕の気持ちが分かるのは、僕だけだ。


 他人は助けてくれないし、気づいてくれない。


 だから自分で自分を守るしかない。他人を当てにしてはならない。強くならなければならない。


 自分一人ですべてやらなければ、自分が変わらなければ、僕の世界はこのままだ。


 強い自分を、最強の自分の作らないと生きていけない。


 たとえそれが嘘で塗り固められた物だとしても、僕には必要だ。


 優しく、善良で、弱い、そんな自分を心の奥底に閉じ込める。


 そして狡猾で、残酷で、強い、理想の自分を演じる。


 そうしなければならなかった。


 でなければ、――俺は何一つ報いることが出来ない。


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