黒い羽
「父さん‼︎⁉︎」
「将司‼︎」
新山隆司は目を見開いた。
息子、新山将司は隆司と同じ目をしている。
同じ、目をしている。
「櫻子.......」
まっすぐな目だった。ただまっすぐだった。
鼓動の音が聞こえる。
恋をしている。
「君だけだ。僕にメロンパンを焼いてくれるのは。」
「あなたが私を捨てたんでしょ!......あなたが私をパン屋のおばちゃんにしたんでしょう⁉︎」
「あの時はああするしかなかったんだ!メロンパンがただ食べたかった‼︎」
わからない。どうして?
しかも今更になって私のメロンパンを.....
「君にはメロンパンを焼く側の気持ちしかわからない。食べる側の気持ちはわからない。」
優しく、重く、カラスは舞い降りる。
重く?
まだカラスはメロンパンを食べない。
隆司はメロンパンを受けとった。
ガブッ‼︎もぐめはぎゅなぎもぐもぎゅさぎなやまやりやま!
黒い羽。背中が内側から破れて‼︎
目は見開いたままだ!ただ、赤い。光る‼︎
光る光る‼︎ 光る‼︎
爪‼︎黒い羽‼︎
くち.......ばし......
禍々しい。隆司は禍々しい。
「父さん.....」
将司も目を見開いた。
ぎゃおおおおおおおおおおおおおととおお
カラスじゃない。カラス人間とでも言うだろうか
隆司は黒い
.......カラスはもういない