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60輪


「もう、行くのか?」


「はい」


「お世話になりました」


「否、別にお前達を世話した記憶はないが…」


美咲さんの返事にサラリと千年樹の木霊が言った


「そうですか……」


「でもさ、世話してもらったって意識がこっちにあったから……」


「そうか」


「「「…………」」」


話が続かない。気まずい


どうしよう…ι


「そちらにその意思がなくとも感謝の気持ちだけでも受け取って頂けませんか?」


亜矢椿先輩……


あの気まずい流れをモノともしないとは………流石です


「受け取りはした、だが主らを好いてはいない」


「そう………ですか………」


手厳しいにも程がある


「だが、これくらいの餞別はやろう」


そう言って袋を渡してきた


中には、水や木の実等が入っていた


「千年樹の木霊……」


「山神様からは道中、妖がお主らを襲わぬ様には言ってあるが、少なくとも帰りしなのみわからんがな」


「なっ!なんでだよ!」


「世の中、納得いくことと、いかないことの二つがある」


瀧月君の納得いかないといった状態から正論で返す千年樹の木霊


「不安……だね」


「莉緒……大丈夫だ。お前も瀧月も広野江も、私が守る」


千年樹の木霊の言ったことで、美咲さんは不安そうにしてたが、亜矢椿先輩の皆を守る宣言が漢前過ぎて涙でそう……


僕もあんなこと言えたら…………



まず無理だった


Lv.の差がありすぎ、もとい、経験の差がありすぎて……



数ヶ月前まで零感だったのが、あの日から霊感になったんだから……


その日から妖怪に襲われ、阿比王にこきつかわれ、妖怪に襲われ、阿比王に下僕にされ、囮役に使われ……



あれ?良いことなし?


確かに亜矢椿先輩みたいになりたいのに、無理だったとしても美咲さんみたいにサポートはしたいし……


「何ぶつくさとやってる下僕!」


ドガッ!


「いったぁ~ッ!!!何すんのさ!阿比王」


「蹴り飛ばしただけだ」


「何か文句でもあんのか?」と言うような顔を見て、阿比王を殴りたくなった


どうせ殴れないだろうけど………

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