59輪
茫然としている僕を見て、千年樹の木霊は驚いていた
「なんだ、本当に知らぬのか?」
「はい………阿比王は何て言うか……大切なこととか、何も僕に話してくれないんです。おじいちゃんのこととか、阿比王自身のこととか………」
「ふむ…………ふふふ、血は争えぬ………か……」
えっ?なんでそうなったんだろ?
意味がわからない。だが、千年樹の木霊は楽しそうに笑っている
「主は陽日鎖より、常識的な存在だが、根本的なとこが似ているな、ふふふ。」
「あの、それって……」
「ふむ、主ら自身は、主ら自身の縄張りに対しての意識が強く、中に入れたモノには心から信頼し、その者を助けたい、その者をもっと知りたいと思う」
図星だった
まるで、僕の心の中を知っているみたいだ
「ふふふ、だが、忘れぬな……主は主、陽日鎖にはなれぬ……」
それは当たり前のことだ。当たり前のことなのにその時でた言葉は、「はい」の二字だけだった
―――――――――――
~???side~
あの者は今、幸せか?
いったい何度そう問うただろう?
あの者が幸せになるのなら、そう思い見送ったあの日
そして、久方ぶりに帰ってきたアイツから聞いた、大切な妖の存在
あの頃の様な笑みはなく、穏やかに、日の光の様な笑み
あぁ、最期にあの者にもう一度会いたかった
「山神様」
「山童か」
「千年樹の木霊からの伝言です」
『あの者の子は時期に…
壊れてしまう』
「そうか………」
コレが現実……
あの者はこの地に戻りたいのか?
それとも……
否、考えるだけ無駄だろう
「山童」
「はい」
「呼子に伝えろ『 』とな…」
「はい…」
~???side end~




