55輪
「人の子よ……」
「はい」
「゛広野江゛の名を持つ悲しき運命に呑まれてはいけない」
゛広野江゛の名を持つ悲しき運命?
千年樹の木霊は何を知っているんだろう?
「それは一体どういう意味ですか?」
千年樹の木霊は答えない
ただただ、心配そうに見ているだけ
「心配し過ぎだろ、千草」
「阿比王!!」
「お前ッ!!」
「本当に神出鬼没だな……」
「それより千草って誰ですか?」
四人が各々の思ったことを言った
一番正論なのは美咲さんの『千草』が誰なのかだろう
「私のことだ」
千年樹の木霊がそう言った
「千草は真名だ」
「真名?」
千年樹の木霊もとい、千草はそう言った
「人が呼ぶ妖の名は人がつけた妖種名であって、元々持っていた我らの名ではない。何より真名は強い呪だからな」
千草のその言葉に僕は、前に陰陽師の事を調べた際に見た文を思いだした
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この世で最も短い呪
それは名だ
名はこの世で最も短い呪であると同時に、真名を知られてはならない
なぜなら真名はその者自体を縛る呪なのだから……
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そうなると、千年樹の木霊の真名である『千草』と言う名を僕らは呼ばない方がいいのだろうか?
「(あれ?そう言えば式神にする際の名付けは………)」
少し頭がこんがらかってきた
「人の子よ、真名とお前たち陰陽師が妖を式に降す時の名付けは違うぞ」
あれ?僕声に出してたっけ?
「って言ってるよ」
犯人は覚でした……




