37輪
『ありがとう』
誰?
『礼には及ばないよ!君は何一つ悪いことしてないんだから!それに僕は彼奴ら嫌いだから』
『人の子よ……』
『大丈夫!君を守れるなら彼奴らに嫌われてもいいから!』
子供特有の高い声、そして不思議と落ち着く綺麗な透き通った声
これが夢だと言うことがわかった
だけど、夢ならぬ夢と言える。だって、普通の夢と違ってこの夢は声しか聞こえないのだから……
―――――――――――
「クソッ!広野江!どこだ!」
陽炎とはぐれた三人は陽炎を探していた
「森の中だ。無闇に動いていなければいいのだが……」
「携帯も繋がらないみたいですし……」
美咲は陽炎と別れてから何回も電話をかけていた。繋がれという祈りを込めながら……
「アンテナはたっているのか?」
「圏外じゃないので多分……」
「広野江が電源を切っている確率は低いしな」
「そう……ですよね……」
そしてまた、美咲は陽炎に電話をかけた
プルルルルル
プルルルルル
プルルルルル
プルルルルル
ガチャ
繋がったのだろうか、向こうからでた気配がした
「!!もしもし広野江君!?今ドコに!」
『…ザー…ザザザー………ザザー…………アァー………ウァアアー……ザザー……………』
「広野江……君?」
返ってくるのは不気味な砂嵐の音の様で、その中に紛れる呻き声
「広野江!?オイ!広野江!」
『ヴウ…………ザーザザー……アァー………ザザー……ザー………ザザザザー…………ハハ……………………………………
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハキャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハアハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハグフェハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハギョゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!』
「きゃあ!なに……コレ!」
美咲は驚いて携帯を離した
携帯は地面に落ちたが、それでも不気味な笑い声が木霊し続けた
それは異常であり怪奇。亜矢椿は美咲の携帯をとり、迷わず電源ボタンを押そうとした時
『……ブツリ………ツーツーツーツーツーツー』
携帯ではあり得ない通話終了の音
「椿ちゃん……」
「大丈夫だ莉緒。瀧月、広野江を探すぞ」
「あっ、あぁ」
亜矢椿は今度こそ電源ボタンを押して通話を終了させた




