27輪
「おはようございます」
「あぁ、おはよう広野江」
「おはようございます。広野江君」
亜矢椿先輩と美咲さんが朝から頑張って料理を作っている。慣れないハズの薪での火力調節さえ、頑張っている……昨日何も出来なかった僕は……役立たず
あぁ、泣けてきた
「どうかしましたか?まだ朝早いですよ?」
「えっ!?今、何時なんですか?」
「今、4時36分だが?」
「…………」
阿比王ぉぉぉぉおぉぉぉぉッ!!(怒)
アレか!?煮魚が食べたいからか!?食べたいが故にこんな早くから起こしたのか!?
いつも僕6時頃に起きてるの知っててだよね!?
阿比王のボケェぇえぇぇえぇぇぇぇッ!!
「まぁ、ちょうどいい。広野江、起きて早々悪いが、この筒で火に息を吹きかけて消えない様にしててくれ」
「あっ、はい」
「私は卵焼きを作るのですまんな」
イヤ、亜矢椿先輩と美咲さん綺麗に和食作ってるんですけど……
肉じゃが、お浸し、お味噌汁、煮物……うわぁ~美味しそう……
「すごく……美味しそうですね……」
「あぁ、まぁ二人でよく作っていたからな」
「そうなんですか!?」
「莉緒は昔から趣味でこういう家庭的な事が好きなんだ」
「椿ちゃん!////」
うわぁ~……絶対にお嫁さんにしたい人だなぁ~
「それじゃあ、亜矢椿先輩の趣味は何なんですか?」
「私か?私は………剣術や武術みたいに身体を動かすことだな」
流石亜矢椿先輩……
「広野江君の趣味は?」
「えっ!僕!?僕は……………………」
アレ?そう言えば僕の趣味ってなんだろ?
勉強は論外だし、身体を動かすのもこれと言って好きじゃない。家庭的な事だってそうだし………
アレ? アレレ?
「すみません……趣味がわからないンです」
「はっ!?」
「えっ!?」
「僕、ほとんど生きた心地もなく家でひっそりとしていたし、趣味で何かを作るとかなかったし……」
「暇な時とかは何をしていたんだ?」
「えっ?小説を読んだり、文学史を読んだり……」
「それは趣味じゃないのか?」
「母さんに『暇なら小説とか文学史を読んで国語力をつけなさい!感想文も書いて後で持ってきなさい!』って言われてもですか?」
「あっ……いや、……悪い……」
「いえ、いいんです……」
僕の親が僕が小さい頃に言った言葉。友達と遊びたいと言っても、漫画を読みたいと言っても、僕のすることを全て管理し束縛した
僕を捨てたあの日まで…




