18輪
牛車に乗って約三時間。牛車が止まったのでようやく目的地に到着かと思いきや、休憩タイムだった
「うぇ……吐きそう」
「身体のあちこちが痛いな……」
「うぇ……牛車って遅いんだな……おぇ……」
「酔い止めの薬ありますが、広野江君、瀧月君いりますか?」
「「是非」」
休憩してもらえなかったら、もっとヤバいことになっていただろうな……
ってか牛車だと遅いんだけど……
「後どれぐらいで着くんだ?」
亜矢椿先輩が式紙さんに訪ねる
「このまま順調に進んでいけば二時間後には」
「目的地に着くのか!?」
「いえ、馬に乗り換えてさらに三時間いった所にあります」
「長ッ!!!?」
「それって普通に馬で行けば……」
どうやら思っていたより道のりは長かった
―――――――――――
牛車に乗り二時間、途中で馬に乗り換え、馬が暴れだしたり、思った通りの方向に行かなかったりとで大変なめにあった。
幸運だったのは、荷物ダケは先に宿舎に送り届けられていたことダケだろう
そして目的の宿舎に来て、また絶句。
一体今日で何回目だろうか、でも思ってしまった
ここって『現代』だよね?
だって言うしかないじゃないか、宿舎がまさかあの古典とか、日本史とかで有名な平安貴族の私邸、『寝殿造り』なのだから……
周りが自然に囲まれている為に独特な雰囲気を醸し出す寝殿造り。まるでそこだけが、時代を飛び越えてしまったのでは?と錯覚させるほどのモノだった
僕たちはポカーンとしていたから気づけなかった。隣で阿比王が「変わらないな」と小さく呟いていたことに……
そして、阿比王がスタスタと中に入って行くのを見て、やっと全員の時間が動きだした
阿比王は至って普通に中に入って行くけど、僕たちは緊張でどうすれば良いのかわからなかった
知識としてなら、寝殿造りの構造は覚えていた為、(後々に知った事だが)僕たちが入って来た所が東四足門だと知った
「なぁ、俺たちさ……この宿舎(?)に入っても大丈夫……なんだよな?」
「うん……」
「宿舎とはいえ、平安貴族の私邸で有名な場所だからな……」
やはり、(阿比王を除く)皆は渋るみたいだ。まぁ、阿比王が堂々とし過ぎなんだけどね……




