16輪
夏休み、僕達は阿比王の宣言通り夏期強化合宿所に来ていた
そして絶句した
「「「「………………………」」」」
僕達は声すら出せないほどの合宿所だった
広いとかデカイとか、色々ツッコミ所満載だけど、一番に言えるのは……ここって『現代』だよねの一言だった
「合宿所ってここ……だよな?ι」
「地図によるとそうなのですが……」
「敷地的に言えば、彼処の山のそのまた奥の山から此方の山のさらに奥の山までがそうらしいのだが……」
山々があり、蝉の鳴き声、小さな小川の流れる音、そして合宿所から聞こえる風流の綺麗な音色
「何ボサッと突っ立ってる?早く入るぞ」
阿比王にいたっちゃそんなことさえお構い無しに、堂々と入っていく。だが僕はあえてもう一度言う
ここって現代だよね?
―――――――――――
合宿所の地図によると、この合宿所の敷地は昔、1つの小さな村だったそうだ
この合宿所の敷地内にその村はまだ人が住んでいる状態であるそうだ
一応電気は通ってるみたいだが、ハッキリ言って、ド田舎とかそんなのならまだマシだろう。だってこの村、エアコンとかないのだから……
ってか合宿所の宿舎がまだまだ先なのもどうかと……
「まだかよ……」
「一応この村を過ぎた辺りのバス停付近に迎えの者が来ているそうなのだが……」
敷地内にバス停があるってことは、おかしいことなんですが……
でも普通にあるのでなんにも言えない
そして、合宿所の敷地内に入って、村を少し過ぎた辺りのバス停付近までにかかった時間。およそ1時間半、足がもうダメになりそうだ……
そして、何とか渾身の力を振り絞ってバス停付近までに到着した。バス停付近には既に一人の狩衣を着た人が立っていた。そして僕らに気づいたようで、コチラに向かってくる
「あなた方が本日から約1ヶ月間夏期強化合宿にいらっしゃられた方々で間違えないですね?」
「はい」
「そうだが……」
皆で辺りを見渡した。バス停付近での待ち合わせなので、バスか車かと思われたが、近くには何もなか………イヤ、あった
だが、本当に聞いていい?ここって何時代?
確かに車と言えば車だけど、牛車ってどうよ?しかも四台も……
「なぁ、まさかとは思うが、アレで行くのか?」
「そのまさかですが?」
マ・ジ・で・す・か!?
瀧月君が『まさか、まさか』と聞いた『まさか』が本当だった
ってか牛車に乗るのって初体験だよね?
皆が何とも言えぬ顔になっていたが、当の本人は何も気にしていないのか、普通に牛車に入れようとした
「ちょっ、待って!!」
「なんでしょうか?」
「ここって普通の車とか「ありませんよ?」えっ……」
「私は式紙故に、『免許』なるものを持っていませんので」
「牛車はしてるのに!!!?」
「自身の敷地内なのに免許なるものがいりますか?」
「イヤ、それを言ったら車とか持てよ」
もはや最初から大変だった……




