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第一章 邂逅 其の四

皆様 御無沙汰しておりました。不定期ですが、更新していきます。


良ければ読んでやって下さい。

一刀視点


篝火が焚かれている陣地を顔良・文醜に導かれながら、一刀は袁紹の待つ天幕へと歩みを進めていた。歩みを進めながら一刀は、袁紹がどの様な答えを出したのだろうと考えていた。


(…野営準備中に話していて感じた事は、過去はどうであれ今現在 袁紹は暗愚だった。時折見せる気配り等が、本来の袁紹で優秀な人物なのだろう。だがそれは、袁逢・袁隗の下に居た時点の話…南皮に移ってからは、長老達の毒牙に掛かり長老達の思う様に動き、不要となれば切り捨てられる『捨て駒』に作り替えられたのが現状だろう…それに袁紹自身の自尊心もある…そう簡単には、私の話を信じては貰えないだろうな…そうなると更に私へ追究の質問をしてくるのが当然だろうな…若しくは…)


一刀は、袁紹が此れから示して来るであろう行動を考えている内に、件の人の天幕に着いていた。


「麗羽様 北郷様をお連れしました。」


顔良は、天幕の入り口に立ち、中に居るであろう袁紹に対して口上を伝えていた。だが、天幕の中からは、返事が無かった。返事が無い事に不振がりながらも顔良は、もう一度声を掛けた。


「あ、あの…麗羽様…?北郷様をお連れしましたが…」


不安に成った顔良が天幕へと手を伸ばし掛けた時、中から返事が返ってきた。


「斗詩さんですの?そう…お連れしたのですね…お入りなさい…」


袁紹から返事が有った事に安堵したものの、袁紹の声色に覇気が感じられない為、顔良は文醜を見た。文醜も顔良と同じ感覚に囚われていたが、考えても仕方ないとばかりに天幕の入り口に近づいていた。


「姫、入りますよ~」


天幕に三人入ると一様に驚くのだった。…そう、蝋燭一本さえ灯さず月明かりのみの状態…天幕の中は、異様な程薄暗く人の気配が無い様に思われたからだ。だが、先程 天幕の中から袁紹の声が聞こえてきたので、居る事は解るのだが薄暗さの為か、直ぐには解らなかった。暫くして薄暗さに目が慣れてきて初めて袁紹が、長机の奥に設置されている椅子に腰掛けているのが解ったのだ。


「れ、麗羽様!ど、どうされたんですか!明かり一つ点けないなんて!」


顔良は、そう言いながら近くにあった蝋燭に火を灯すのだった。蝋燭に火が灯されると天幕の中の袁紹の様子が伺えたのだが、その様子を見た顔良・文醜の二人は、言葉を失ったのだった。袁紹は、ただ何も無い中空を虚ろな瞳で見つめていたのだった。その姿に覇気は無く生ける屍の如く、ただ其処に居るだけだった。


「姫!どうしたんだよ!何時もの姫は、何処に行ったんだよ!!」


その姿に耐えかねた文醜は、袁紹の下に駆け寄り膝を付いて問い掛けていた。顔良も文醜につられて袁紹の下に駆け寄っていた。


(…追い込み過ぎたのか…)


一刀は、袁紹の余りの変わり様に言葉を失っていた。確かに切欠を作ったのは、一刀である。故に今の現状を作り出したのも、一刀だと言えばその通りなのだ。駆け寄った二人を見やると、今にも涙が零れそうな状態だった。


「…袁紹殿…」


堪らず一刀が袁紹に言葉を掛け様とした時だった。


「…北郷さん…」


今まで虚ろな瞳で中空を見ていた袁紹が、ゆっくりとではあるが一刀に視線を移してきた。一刀は、袁紹が次に何を言うのか聞き漏らさない様に耳を傾けた。暫くの間 袁紹は一刀を見ていたが、ふと自分の下に駆け寄っていた二人に視線を落としていた。


「斗詩さん・猪々子…大丈夫…私は、大丈夫ですわよ…」


と、二人の頭に手を乗せ、まるで心配する子供をあやす様に優しく撫でるのだった。撫でられている二人は、安心した様に顔を上げ自分達が、敬愛する主を見上げるのだった。袁紹は、二人の頭を撫でながら、視線を一刀に戻した。


「北郷さん…貴方の仰った話…全てとまでは行きませんが、自分なりに考えましたわ…この子達が私の事を思って、貴方に伝えたのでしょうけど…」


袁紹は、そこまで言うと一旦言葉を切り、また二人へと視線を落としていた。そして、ほんの少しだけ沈黙が四人に訪れた。ほんの少しの間…だが、一刀には長い時間に感じられたのだった。


(…袁紹殿は、あの後どの様に考え今に至ったのだろう…此処へ来る間に考えていた通りに進むのか…または、更に斜め上の考えを示すのか……こればかりは、本人から聞かなければ此れ以上は解らないな…)


一刀は、そう思い袁紹から口を開くのをじっと待つのだった。



麗羽視点


時間は、少し遡る…


一刀の話を聞き終え顔良・文醜から野営設置完了の知らせが届くと、麗羽は三人に何も言わずに、その場を後にしたのだった。どうやって自分の天幕へ着いたのか覚えていない。用意された天幕に入り、麗羽専用の豪華な椅子に腰掛けた事さえ覚えていない。その間 頭にあったのは、一刀から聞かされた内容のみだった。自分と袁家の行く末、斗詩・猪々子の思い、長老達の政、それらの内容が麗羽の頭の中をグルグルと駆け巡っているのだった。


(…北郷さんの言われる事を鵜呑みにするなら、長老達は自分達の為に政をしている事に成る。…ですが、それは長老達自身に危険が返ってくる事が解らない人達では有りませんわよね…でも…斗詩さんや猪々子までが、私の身を案じている…遠からず表舞台から退場…あの子達が、嘘を付いているとは到底思えませんし…あぁ…私は、どうしたら良いのでしょう…)


いくら考えても、纏まらない。麗羽は悩みの無限ループに嵌まっていた。故に、自分で北郷を呼び出した事など気が付いていなかった。そうこうしている間に、文醜が顔良・北郷を連れて自身の天幕へ来た事が、解らなかった。漸く二回目の顔良の言葉が耳に入り、何時の間にか自分が、北郷を呼び寄せたのだと気が付いたのだった。気が付き返事はしたが、自分の考えが纏まっていない状態で話をしても意味が無い事位 麗羽も解っていた。だが、呼び出した以上は会わなければ失礼に値する。故に返事をした後も、自分なりに考えを纏め様としていたのだった。


そして、時間は戻る。


「…袁紹殿…」


北郷の声掛けに、ゆっくりと麗羽は一刀に視線を移した。


「…北郷さん…」


そう答えたが、次の言葉が出てこない。未だに考えが纏まっていないからだ。だが、漸く現実に引き戻され気が付くと、自分の脇に姉妹に等しい二人が、心配そうに自分を見上げていたのだった。


(この子達にも、随分と心配させてしまいましたわね…)


「斗詩さん、猪々子…大丈夫…私は、大丈夫ですわよ…」


自然と二人の頭に手を乗せ撫でていた。心配ない、私は大丈夫だからと…そう言わんが如く、優しくゆっくりと二人の頭を撫でるのだった。だが、それをずっとしている訳にも行かず、麗羽は視線を北郷に戻し、


「北郷さん…貴方の仰った話…全てとまでは行きませんが、自分なりに考えましたわ…この子達が私の事を思って、貴方に伝えたのでしょうけど…」


そこまで言うと、麗羽は言葉を切った。話をしなくては成らない。だが、その続きが出てこない。麗羽にとっては、大き過ぎる話である。それは仕方の無い事だ。だが、ふと思い出していた。


(…「長老達の報告のみを信じて、自分では確認しないのか?」…北郷さんは、そう言ってましたわね…言われてみれば、視察等…行った事有りませんわね…私に斗詩さんや猪々子が嘘を言う事は有り得ませんし…でも、長老達も自分の首を絞める政はしないでしょうし…あぁ!もう解りませんわ!!!…………そうですわ…実際に視察すれば解りますわね!そうしましょう!!私って最高ですわ!!おーほっほっほ!!)


頭が良いのか悪いのか解らない内容の心の葛藤だったが、取り敢えず自分の考えが纏った麗羽は、二人に落としていた視線を北郷に戻した。


「北郷さん。貴方の言が何処まで本当の事かは、解りかねますわ。でも…貴方の言われた通り、南皮に赴任して以来 視察を行っていないのも事実…ですから、これから南皮に戻り民の様子を観る事にしますわ!民達の様子を観れば一目瞭然ですわよね?」


そう言い伝えると麗羽は、北郷の目を見ていた。貴方の真意を見せてみなさいと言わんばかりに…



一刀視点


「北郷さん。貴方の言が何処まで本当の事かは、解りかねますわ。でも…貴方の言われた通り、南皮に赴任して以来 視察を行っていないのも事実…ですから、これから南皮に戻り民の様子を観る事にしますわ!民達の様子を観れば一目瞭然ですわよね?」


袁紹の言葉を聞き漏らさない様にしていた一刀は、袁紹の話が終えたと同時に袁紹の目を見ていた。其処には、先程までとは違う若干覇気を取り戻した袁紹がいた。そう…一刀を試す様な瞳で。


(ふむ…話が大き過ぎて解らないのは仕方無い事…それでも、自分なりに解る事柄を潰して行くのは、大いに結構…そして、自分の目で確かめるのであれば、尚更良し。ただ…これからと言うのは…激情家らしい答えなのかも知れないが………だが………)


等と一刀が思っていると、顔を上げた顔良から横槍が入った。


「れ、麗羽様。い、今から南皮に戻るのですか?」


まぁ、当然と言えば当然だろう。既に、どっぷりと陽は落ち酉の刻 現代で言えば21時だ。戦時下でもないのに、この時間から南皮に視察の為に戻るのは、常識を逸脱している。


「麗羽様 南皮に戻られるのでしたら、明日 陽が昇ってからでも遅くは有りませんよ?」


顔良は、袁紹に時間を改める様に無難な進言をしていた。それを聞いた袁紹も『はっ!』とした顔をして北郷を見た。つられて顔良・文醜も袁紹と同じく北郷を見たのだった。だが、当の北郷本人は、左手は右腕の上に、右手は顎に添える様にして、考え事をしていたのだった。


(…確かに…普通の視察ならば、出立するには遅すぎるか…だが…極秘で行うのであれば、問題無いな…袁紹殿の視察が、長老達に知られては工作される可能性がある…それでは、本当の民達の実情が解らなくなる…ふむ…恐らく袁紹殿は、考えなしで言ったのだろうが、中々どうして実を得ているな…面白いお方だ…)


等と一通り考えが纏まったので顔を上げてみると、三人が三人共 一刀に視線を集中しているのだった。此れには、一刀も慌てた。


「ど、どうされました?何か不振な事ても有りましたか?」


一刀は考えに没頭している内に、気に触る事でもしたのでは?と余計な事を考えていた。


「いえ。袁紹様が、これから南皮に戻られると言われたので、明日 陽が昇ってからにしては?と お伝えしていたのですが…」


だが、顔良から返ってきた言葉に一刀は安堵した。疚しい事はしていないので問題ないのだが、三人一緒に見られていると、恥ずかしさが先に立ったのだ。


「北郷様も、視察は明日で宜しいですよね?」


その様な事を解るはずも無い顔良は、一刀に対して先程の意見の確認をしてきた。


「いや…袁紹殿の言われる通り、今夜の内に立とうと思っていた所です。」


と、一刀は先程纏めた考えを三人に述べていた。その意見に顔良は、難色を示していた。それは、当然だ。

夜陰に紛れて視察に行くなど、普通は有り得ないのだから…スッと顔良が前に出て一刀の横に立つと袁紹には聞こえない音量で一刀に耳打ちをしてきた。


(北郷様…今 言われた事は、どの様なお考えが有っての事ですか?納得の行く説明をして頂かない事には、賛成出来ません。)


顔良の言いたい事は、尤もである。敬愛する主人を『はい、そうですか』と送る家臣など居ないのが普通だ。もし、その様な家臣が居るのなら、自分だったら『お払い箱』にするだろう。顔良の忠誠心に感銘を受けながらも、一刀は優しく答えるのだった。


(顔良殿の言われる事は、尤もの事。心配されるのも良く解る。だが、良く考えて欲しい。今の現状は、袁紹殿にとって不利にしか働かない。もしここで、明日 南皮の視察に向かうと、その情報が長老達の耳に入るかも知れない。そうなると、邪魔が入る可能性が大いに考えられる。偽りの情報を袁紹殿に与えたくないのですよ。それに、良い案も浮かびましたので、実行するには今夜が良いのです。)


ここまで言うと一刀は、顔良の目を観て返事を待った。顔良は、ちょっと考えた様だったが、内容を理解したのか先程までの剣は無かった。


(北郷様の話は、納得しました。それに、袁紹様を助けて頂く様にお願いしたのも我々です。すみません。貴方を疑う様な言動をして…)


(謝る必要はないよ。その対応が普通なのだからね。)


一刀は、先程と同じく優しく答えたのだった。


(北郷様 先程 良い案が有ると言われてましたが…どの様な事なのでしょうか?)


そこで、落ち着いたのか顔良は、一刀から聞いていた良い案が気に成ったので、聞いてみる事にした。


(うむ。袁紹殿には、暫くの間 病に臥せって貰いたい。これは表向きの話でだ。その間に袁紹殿と私と数名の護衛で南皮に密かに戻り袁紹殿に南皮の現状を見て貰う。護衛には手練れの者で、門番等に顔が利く者を選んで欲しい。後、一人につき馬を二頭も用意して欲しい。そして、我々が南皮へ視察に行っている間 顔良殿・文醜殿のお二人には、調練を行って頂きたい。ただ単に我々が帰ってくるまで、無為な時間を過ごして兵の士気が落ちては困りますからな。)


一刀は、顔良には思った事を言っておくべきだろうと思い、包み隠さず話すのだった。一刀の話を聞いていた顔良は、得心した顔で一刀を見ていた。


(解りました。確かに北郷様の言われる様にした方が、良いでしょう。では、袁紹様に簡単に説明をして、準備に掛かります。)


(宜しく頼む。あ…袁紹殿の自尊心を擽る様な言葉でね。)


一刀は、手短に顔良へ答えると袁紹に向き直った。同時に頷きながら顔良も、袁紹の下へと歩みを進め、先程一刀と話した内容を簡単に説明するのだった。


「麗羽様、北郷様にお話を聞きました。今 我々は、民の為に賊討伐に常山まで進軍してます。なのに、麗羽様が何もせずに南皮に帰られると、民は不振に思いますよね。麗羽様は、民を見捨てたとか…」


ここまで説明した顔良は、袁紹の態度が予想ついていたのだろう、言葉を切り袁紹をチラリと見やった。


「なっ!!わ、私が何時 民を見捨てたのですか!!!そんな事 断じて有りませんわ!! 」


袁紹は、先程までの暗い雰囲気は何処へやら、憤然として顔良を見た。


「はい。麗羽様が、民を見捨てる訳が有りません。ですが、周りの者や民達が全て麗羽様の良い部分を見てくれている訳では有りません。ですから、こっそりとお忍びで民達の様子を見に行かれるのが良いのでは?と、北郷様と相談していたのです。」


顔良は、袁紹の自尊心を撫で擽る様に話を進めていた。


(上手い物だ。流石、姉妹同然に育った間柄だ。サワサワっと自尊心を擽っているな。)


と、一刀は顔良と袁紹の遣り取りを見ていた。文醜も話の中には入ってこないが、顔良の行動が袁紹なの為と解ったのだろう、何も言わずに二人の様子を伺っていた。


「解りましたわ。確かに真に民の様子を知ろうとするなら、私だと解らない様にした方が、民の実情を目の当たりに出来ますわね。いいでしょう。斗詩さん 準備は貴女にお任せしますわ。チャチャっと準備なさいな。」


「はい、解りました、麗羽様。暫くお待ち下さい。北郷様も御自分の天幕でお待ち頂けますか?準備出来次第お呼びします。」


袁紹が機嫌良く了承してくれたので、顔良は袁紹の気が変わらない内に行動した。


「解った。では、袁紹殿 また後程。」


一刀も、顔良の思いを汲んで二人の後に続き袁紹の天幕を出て、自分に宛がわれた天幕へと戻るのだった。この後、一刀にちょっとした問題が起きるとは思っていなかった。

如何でしたでしょうか?リハビリを兼ねていますので、グダグダしているかもです。

そんな内容ですが、宜しければ此れからも、生暖かく見守ってやって下さい。

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