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第一章 邂逅 其の一

お久しぶりです。この話より、一刀と麗羽達の物語が始まります。今回も何話かに分けて投稿致します。拙い文章で申し訳有りませんが、生暖かい目で見守って遣って下さい。


一人でも面白いと思って頂ければ幸いです。

一刀視点


「…ここは…」


一刀の周りに広がるのは、見渡す限り荒涼とした大地だった。遠くには山々が連なっており、一刀の知る限り日本の地では無かった。現代の中国でも、都市化が進み、今見えている大地は山間部に行かなくては、伺えない状態だろう…


「三国志の時代と聞いてはいたが…」


そう…今 一刀が居る場所には、人は勿論 人の存在を伺わせる物さえ無いのだ。ここで、考えも無く無闇に動いても、仕方ないと思い近くに丁度腰掛けるのに良い岩に座った。


「さて、これから先どうするか…」


腰には『備前長船兼光』の刀、矢を持っていないがカーボン弓を背負っている状態なので、万が一 追い剥ぎが現れても対処出来るだろう。


「この地に着いて早々襲われる事も無いだろうな…」


と、思っていた一刀だが、何処から沸いて来たのか三人組が一刀の前に現れた。


「よぉ…兄ちゃん…珍しい服着てんなぁ~。流星が落ちて来た時は、死ぬかと思ったが、俺達も運が回って来た様だな。」


三人組のリーダー格らしき男が、一刀を値踏みする様に見ながら話しかけてきた。


「アニキ!こいつ 何処かの貴族の息子だと思いますぜ!こんなキラキラする服見た事無いですぜ!」


三人組のチビが、一刀を貴族と思い込みリーダー格の男に話しかけていると


「オ、オデも、そう思うんだな!」


巨漢の男も、チビの意見に同意していた。


(こいつらは、どう見ても一般人には見えないか…言った傍から追い剥ぎに会うとはな…)


一刀は、現代日本でも犯罪に合う確率は低いだろうが、古代中国ではその常識は通用しない事を改めて認識していた。一刀が考えに耽っているのを、三人組達は自分達の存在に一刀が萎縮していると勘違いを起こしていた。


「おい!兄ちゃん!命が惜しいなら、服と金と…その御飾りの剣を此方に渡して貰おうか!」


抜き身の剣を一刀にチラつかせながら、一刀に対して高圧的な態度で迫ってきた。


「早く出した方が、身の為だぜ!アニキは気が短いからなぁ…へへへ…」


「…んだぁ」


「てめぇらは、余計な事を言わなくて良いんだよ!おら!兄ちゃん さっさと出しやがれ!」


三人組の掛け合いを見ながら一刀は、ヤレヤレと言わんばかりに溜息を付いた。


「ふぅぅ…お前達みたいな輩が出るという事は、余り治安が良いと言う訳では、無い様だな…」


「何ぶつくさ言ってやがる!さっさと言われた通りにしやがれ!」


本当に気が短いのだろう、リーダー格の男は苛立たしく抜き身の剣をチラつかせた。


「お前達に遣る物等 持ち合わせていないな。」


一刀は、きっぱりと言い放った。


「なんだと!!!てめぇ…死にてぇらしいな…?望み通りにしてやろうかぁ?!あぁん?」


この一刀の発言にリーダー格は、ブチ切れた。


「てめぇ!アニキに口答えしやがって…アニキ こんな奴さっさと殺っちまって、その後に物を手に入れましょうぜ!」


「んだんだ!」


と、他の二人も痺れを切らしたのか、それぞれ自分の得物を抜き出した。


「それに、これは『剣』ではない。『日本刀』で『備前長船兼光』と言う『大業物』だ。お前達には、過ぎた代物だよ…それに、裸で居ると、変態扱いされるだろう?」


ちょっと違う方向の理由を述べた一刀に対し、リーダー格の男は、吼えた。


「俺達の知ったこっちゃねぇ!!チビ!デブ!殺っちまえ!!だが、服には傷を付けるなよ!売り物に成らなくなるからな!」


「へぇ!!承知してまさぁ!!兄ちゃん、覚悟しな!!」


「わかったんだな!!」


リーダー格の男の命令を各々が返事をして、襲い掛かったのだが…


一刀は兼光を上下逆さまに手を掛けたと同時に右足を一歩踏み出し、シャランと鞘擦りしたかと


「グヘェ!!」


「ゲフゥ!!」


と異様な声が聞こえた後、チビとデブは地面に倒れていた。


「チビ!デブ!!てめぇ…何しやがった!!」


目を血走らせながら、リーダー格の男は、一刀に襲い掛かっていた。


「何って…?こうしたのさ…」


上段の構えから襲って来るリーダー格に対して一刀は、左半身に交わしながら男の首筋に向かって峰打ちを放ったのだった。


「グゥゥ!」


呻き声と共に、リーダー格の男は、地面に伏していた。そう…相手の武器を交わし受け流しながら、その返し刃で峰打ちをしていたのだ。それも、刹那の一瞬で…


「流石は、最上級大業物と呼ばれるだけは在るな…」


普通 武器同士がぶつかり合うと、峰でも多少なりとも刃毀れするのだが、貂蝉が用意した『備前長船兼光』は、刃毀れどころか静かに輝きを放っていた。


「さて、こいつ等をどうするかな」


刀を鞘に収めながら、一刀は三人組の始末を考えていた。


「今の所 情報源は、こいつ等しか居ないな…。ふむ。叩き起こして尋問するか」


一刀は、リーダー格の男に近づき鞘で小突きながら、声を掛けた。


「おい…起きろ。お前に聞きたい事が有る………さっさと、起きんか!!!」


始めは軽く小突いていたが、余りにも反応が無かったので、つい大声を上げていた。


「ヒ!ヒィ!!!」


小突きと一刀の大声で、リーダー格の男は顔を引き攣らせながら、飛び起きた。


「相手の力量を計り切れなかった,お前が悪いのだ…

お前に聞きたい事が有る。素直に話せば命は助けてやるが…どうだ?」


顔を引き攣らせた男を見て、恐怖心で支離滅裂な事を言われても困ると思い、一刀はゆっくりとしかし伝えるべき事が伝わる様に語り掛けた。それが功を奏したのか男は、素直に反応した。


「は、はぃぃ!!俺等が知っている事でしたら何でも話します!!なので、どうか命ばかりは…!」


と、土下座をしながら男は平伏した。


「解っている。二言は無い。」


その言葉に安堵してはいるが、恐る恐る男は顔を上げて一刀が話し出すのを待った。


「まず此処は、大陸のどの辺りなのだ?」


一刀は、一気に話を詰め寄りたかったが、これが元で混乱されても困ると思い、一つ一つ聞く事にした。


「へ、へぇ…ここは、冀州常山郡でさぁ。そして、あの遠くに見える一際大きく見える山が、常山と呼ばれそこに『黒山賊』の根城が有ると聞いた事が有ります」


男は、何故そんな当たり前の事を聞くのだろう?と言わんばかりの顔だったが、命が惜しいので素直に話をした。


「では、現在 この冀州で一番の有力者は誰だ?」


「はぁ…南皮太守の袁紹でしょうか?一族の財は桁外れだと聞いていますが?」


「では、南皮もしくは、此処から一番近い街・村は、どっちに行けば良い?」


「な、南皮でしたら、ここから南東の方角ですが、徒歩では遠いかと…此処から南へ一里程行った先に一番近い村が有りますから、そこから移動手段を考えられては………」


余程、一刀が恐ろしいのだろう…始めの頃とは正反対の馬鹿丁寧に一刀に教えているのだった。


「解った。もう行って良いぞ…ただし、また同じ事をしていると私の耳入ったら、今度は命が無いと思えよ?御仲間も一緒に連れて行け。」


男の言っている事に嘘は無いと解った一刀は、聞きたい情報を得られたので、三人組を開放した。


「へ!へぇ!!もう金輪際、悪事は働きません!!

おい!お前等!何時まで寝てんだ!さっさと起きろ!!」


「う…うぅ………」


「あ、あぁぅ………」


要約意識を取り戻したチビ・デブを引き摺りながら、この場から立ち去ろうとした男に一刀は、声を掛けた。


「あぁ…そうだ…最後に一つ良いか?」


声を掛けられた男は、ビクッ!と身を震わせながら、恐る恐る一刀に身体を向けた。


「そう怖がるな。二言は無いと言っただろう?先程 お前の話の中に、『黒山賊』と言う言葉が出て来たが、どういった連中なんだ?」


歴史では知っているものの、実際とは違うと言う事象はよく有る事だ。故に一刀は、確認の為に聞いてみようとした。


「あぁ…黒山賊ですかい?奴らは、自分達を『義賊』と称しては居ますが、同じ盗人稼業ですよ…まぁ…盗む対象は、肥え太った役人や悪徳商人とからしいですがね…詳しい事は、あっしらも知らないんでさぁ…」


「そうか…解った。さぁ、行くが良い。」


「へぇ。では、あっしらは、これで…おい。もう自分の足で歩け!」


男は、チビとデブに叱咤しながら、急ぎ足でこの場から去って行った。


「やれやれ…まぁ、何らかの情報は聞き出せたから、良しとするか…南へ一里進めば、村が有ると行っていたな。まず、そこに向かうとするか…」


と、その村が有るであろう南の方向へ目を向けた瞬間、土煙を上げて来る集団が一刀の目に入っていた。そうこうする内に、その集団は一刀の半町先で停止した。その集団の牙門旗には、金色に『袁』と在った。


「旗印は「袁」…先程の話に出て来た『袁本初』か?…タイミングが良過ぎるな…あぁ、貂蝉さんの計らいか…それだと辻褄は合うな…だが…」


一刀は、袁本初がタイミング良く現れた事に貂蝉の計らいと踏み納得し掛けたが、最後は口淀んでいた。それもそのはず、『袁』の牙門旗の元に居るのは、白馬に跨った金髪でカールを前髪以外に掛けた女性だった。その女性の傍には、側近の者であろう二人の女性が居た。片方は、薄い青の髪でボーイッシュな子で、もう片方は紺色で髪型をオカッパにした女性達だったのだ…


(これは…どう言う事だ…?貂蝉さんから、三国志の世界に赴く聞いていたが、私の知っている内容とは、懸け離れているぞ?)


一刀は、自分の知っている三国志の英雄らしき人物が、女性で在る事に困惑していた。そして、一刀は袁本初であろう人物を遠目ではあるが、マジマジと見つめているのだった。


(うーむ…まぁ、実際 私も生まれ変わらせて貰ったのだから、慣れない内は、今の様に困惑するだろうが、こう言う世界なのだと割り切る事が重要だな。さて、…あれが、袁本初の様だな…だが…実に惜しい…何故カールなんだ…?あれでは、高飛車なお嬢様にしか見えないではないか…元が良いのに…勿体無いな…ストレートにしたら、清楚で綺麗に見え映えるかもしないのにな…)


などと、自分の世界に入っていたので、一刀はその渦中の内 二人の人物が、近づいて来る事に気が付いていなかった。






麗羽視点


一刀が追い剥ぎに、絡まれている時に時間を少し遡る…


猪々子を先頭に麗羽達一行は、流星が落ちたであろう場所へ向かっていたが、そこへ斗詩が予め放っていた斥候が戻って来た。


「流星が落ちた場所は、在ったか?なぁ!なぁ!」


斥候が報告をするより先に、猪々子が斥候へ質問攻めをしていた。


「ぶ、文ちゃん!ちょっとは落ち着こうよ!」


「猪々子!報告を聞けば解る事ですわよ!少しは、落ち着きなさい!それでも、袁家の将軍ですか!」


麗羽・斗詩の二人に宥められて、渋々一歩引いた感じに猪々子が成った頃合に斥候に出ていた兵士が、話し出した。


「御報告致します。この先の流星が落ちたと思われる場所を確認して来ました。ですが、そこには流星が落ちた形跡は無く、ただ…」


兵士が、報告した内容に猪々子は、ガックリした様に項垂れたが、斗詩が続きを促したので兵士は続きを語りだした。


「ただ、形跡は有りませんでしたが、見たことも無い服を着た男が一人居ました。」


「男ですの?」


兵士の報告に麗羽は、何故か解らないがすぐさま反応していた。


「その男の服装とは、一体どんなものなのですの?」


そう…兵士の言う「見た事ない服装」が気に成ったのだ。


「はっ!上着の色は、白だと思うのですが、キラキラ輝いているのです。何処かの貴族かも知れませんが、絹でもあの様には輝きません。私は今まであのような服を見た事が有りません。」


兵士の報告に麗羽は、「確かに何処かの貴族ならば有り得る」と思ったが、男が一人と言うのが腑に落ちなかった。


「先程 男一人と言いましたが、間違いないのですの?」


「はっ!私が確認した時は、確かに一人でした。」


再度 兵士に確認したが、一人だと言う…普通 貴族の人間なら、共を連れているのが常識である。それが、共を付けず一人で居るのだから、余程腕に覚えが有るか、それとも唯の馬鹿かである。本当に貴族ならば後者が正解だろう。今の麗羽なら、興味無いと言わんばかりに放っておくのだが、流星が落ちたと言う状況が状況だけに、面白半分で見てみようと歩を進める事にした。


「貴族の者が、この先に居られる様なので、保護しに向かいますわよ。盗賊でも現れて、身包み剥がれるのを、見て見ぬ振りをしたと在れば、袁家の恥ですわ!その人物の半町先まで前進ですわ!!」


「「「「「はっ!!」」」」」


麗羽の号令で全軍 件の男が居るで在ろう場所まで、駆け足で進むのだった。


「あ!姫!見えてきましたよ!」


猪々子の言葉に麗羽は、前方にキラキラ煌く服を着た人物を確認した。


(なるほど…確かに、あの様に煌く服は、見た事有りませんわね。何処かの貴族の方かも知れませんわね。ここで、この私が保護して差し上げたら、私の名声を更に上げる事に成るに違い在りませんわ!)


などと、自分の名声が上がる事を想像していた麗羽は、斗詩の声で現実に引き戻された。


「れ、麗羽様!男の人が、盗賊と思われる三人組に絡まれている様です!!」


「な!なんですって!!」


斗詩の報告を聞いた麗羽は、直ぐ様 急行させる為に令を発せ様とした時に、


「姫!何か様子が変ですよ?」


と、猪々子が前方の様子が変だと言い出した。


麗羽もその言葉に釣られて前方を確認した時に、それは起こった。


貴族風の男が、少し腰を落としたかと思うと、キキンと金属音がした様に聞こえた。すると三人組の内の二人が地に伏したのだ…まさに刹那の出来事である。そして、最後の一人も返り討ちに合い、先の二人と同じ様に地に伏していた。その出来事を見ていた麗羽達全員呆けていたのだ。いや、呆けたと言うより、その件の男が見せた剣技の美しさに見惚れていたのだ。


「あ…あんな剣技見た事ないぜ?…斗詩有るか?」


一番に正気を取り戻し声を発した猪々子が、斗詩に振っていた。


「わ、私も見た事無いよ…?」


斗詩自身も知らなかった。


「アイツ…相当出来るよな…?」


「うん…私達でも、敵うかなぁ…?」


「たぶん…厳しいつぅか…ヤバイかな…?」


「うん。私もそう思う…」


猪々子・斗詩が、素直な感想を言っているのを聞いていた麗羽は、


「う、美しいですわ…」


と、一言呟いていた。


「姫?」


「麗羽様?」


麗羽の一言に反応して、二人は声を合わせていた。


「と、取り合えず、あの人物の元に向かいますわよ!」


「「「「「はっ!」」」」」


麗羽は、件の男の剣技に見惚れていた事が恥ずかしく成り、軍を進める事で皆の意識を自分から離そうとしていた。


(それにしても…見事な剣技でしたわね…私も手習いは一応していますが、あの様な剣技は、始めて見ましたわ…水が流れるが如く流麗とした剣技を…)


麗羽は、馬を進めながら件の男を見つめ続けていた。麗羽達が、件の男に後半町と迫った所まで来た。


そして、時は元にもどる…



件の男は、盗賊と思しき男達を解き放ったかと思うと、麗羽達を伺う様に見えた。


「全軍停止!猪々子、斗詩さん 着いて来なさい」


麗羽は、全軍に令を発し猪々子と斗詩に共を命じた。


「麗羽様 不用意に近づくのは、どうかと思いますよ?私達が様子を観て来て、大丈夫そうだったら、御呼びしますから其れまで待機してて下さい」


「姫ぇ~。斗詩の言う通りだと思うよ~?」


(そうですわね…貴族かも知れないけど、得体の知れない人物でしたわね…)


斗詩と猪々子の讒言も尤もだと思い、麗羽は猪々子・斗詩に様子を伺わせた。


「猪々子・斗詩さん 先に行って事情を聞いて来なさいな」


「アラホラサッサ~」


「はーい」


二人それぞれ返事をして、件の男の元に近づいて行った。

如何でしたでしょうか?邂逅其の一では、一刀と麗羽の視点で物語りは進めました。次回は、斗詩と一刀の視点で話は進みます。

御期待に沿えているか解りませんが、生暖かい目で見守って遣って下さい。


では、次回の講釈にて…

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