序章 北郷一刀
始めまして、初の投稿に成ります。
拙い文章と、堅苦しい言葉等で読み辛いかも知れません。
そして、オリキャラも採用しようと思っておりますので、恋姫の世界観を壊すのが嫌な方等は、スルーして下さい。
本当に硬いかもなので…
また、アンチ要素も含んで来ますので、それも嫌な方もスルーして下さい。
それでも、楽しんで読んで戴ける方が居られれば、幸いです。
この物語は、あるパラレルワードに存在する『北郷 一刀』の数奇な運命を記す物語で在る。寄って、この物語を拝読して戴ける方の納得の行く語りで在るかは解らないが、此処の記して擱こうと思う。
では、新たな外史の扉を開けるとしよう……
私は、今まで何をしてきたのだろうか…?
私は、今まで何を思い行動してきたのだろうか…?
私は、今までにどれだけのものを残してこれたのだろうか…?
……そして私は………納得の行く人生を送れたのだろうか…?
現在 私こと『北郷一刀』は、鹿児島県のとある大学病院に入院している。何故、病院の世話に成っているのかなど、至極明瞭である。病気を患っているからだ。
その病気自体が厄介なもので、現代の病気の大半が占めている『癌』に侵されている始末だ。祖父『北郷無刀』より「身体だけは、大事にしろ」と耳にタコが出来る位に言われていたが、長年少しずつ溜まってきた疲労等が症状として現れてしまったのだ。まぁ、成ってしまった事を言っても仕方ない。
祖父は剣術道場で剣術を、祖母は道場を間借りして弓術を教えており、幼少より妹『初』と心身共に、叩き込まれながら育った。両親は、私達兄弟が物心つく前に他界していたの、我々の親と言えるのは、祖父達であった。
祖父は、厳格な性格で曲がった事が嫌いな人で、祖母は、芯は強いが何時も笑顔を絶やす事の無い優しい人で、弓道の達人でもあった。この二人が私達を育ててくれた御蔭で、此処まで来れたのだと思う。もっと身体を労わっていたら、尚 良かったのかもな…。
まぁ、話が逸れてしまったが、祖父と祖母によって鍛えられた御蔭で、剣術の腕前は、聖フランチェスカ学園を卒業するまでには、全国レベルに達していたが、弓術には遠く及ばなかった。私には、剣術より弓術の方が性に合っていた様だ。巷では、『弓道界の異端児』と言われていた程だ。
初は、私とは反対に中等部の段階で全国レベルに達していたのだから、剣の天武の才は初に有ったのだろう。人それぞれ持ち得た才能が有るのだ。剣術は初が、弓術は私がと言う具合に…
始めは祖父も、私に道場の後継者に成って貰いたいと思っていた様だが、私の剣術の腕よりも初の天武の才が、際立っているのだから、私が一歩身を引いた為と私の思いを汲んでくれたのか、それ以上は言ってこなくなった。祖母は、私以外にも後継者を育てていたので、強制はしてこなかった。本当は、引き継いで欲しかったのだと思うが…。
月日が流れ学園卒業後は、祖父の進めも有り防衛大学に進学した。授業や訓練は厳しく、何度も根を上げそうに成ったが、祖父からの教えや精神統一等で心を落ち着けながら、日々を過ごして行った。防衛大学卒業後には、陸上自衛隊 西部方面隊 第八師団 司令部付に配属が決定し、この入院が決まる日まで仲間と共に国の為、国民の安全の為に励んできた。
だが、身体の不調が理由で退役し入院するに至って、ある疑問が沸いて来たのだ。
そう…冒頭に述べていた様に自分自身の人生を振り返ってみて、私は一体どれ程の事を成して来たのだろうかと。祖父が開いていた剣術道場は、初が後継者として立派に引継ぎ、門下生も居り安定していると言える。また、今年初めには、初の曾孫が生まれて順風満帆だ。
弓術の方は、従姉妹が後継者と成り、祖母の教えを守りながら教えている。
一般的には、初老と言われる歳に成っているが、今までに良縁に恵まれず一人身なので、当然跡取りは居ない。自分の子孫を後世に残せない程、親不孝な事は無いのではないだろうか?
幾ら富や名声を得ようとも、自分の子孫を残せないので有れば、それは無に等しいのではないのか?
入院と言う事態に至り、初めて我が人生を振り返って見れば、後に残せる物が無かったのだ。これ程、虚しい事はないであろう。
「我、此処に至って、我が人生の虚無を知り得たり」
これが、私の後悔の気持ちが詰まった時世の句に成った。
それから、数か月後 秋風が吹く時期に私は、初や従姉妹達親類に看取られながら、この世を去った。
(…………………)
私は、どうしてしまったのだろうか………?
意識は有るのだが、目が開かず身体が動かないのだ…。
周りは、包み込むような明るさを感じるのだが、瞼が開かなくては話に成らない。
取り敢えず、今 何が起きているのを確かめようと、意識を集中させてみようと試みた。
(…これは…?)
今現在 私は微温湯に浸かっている様な気持ちの良い状態だと言う事だけしか解らないのだ。
(もしや、ここが「あの世」と言う処なのか…?)
「あら~ん♪ 御主人様 此処は、あの世じゃないわよん。」
何処からとも無く、気色の悪い言い方で私の答えを否定する声が、聞こえた。
「御主人様 気色の悪いって…失礼しちゃうわ!貂蝉泣いちゃうわよ!(グスン)」
受け答えが出来ているらしい。
『聞こえた』と言うより、『意識へ直接伝わって来た』と言った方が、良いだろう。
考えても現状は解らない事ばかりなので、取り敢えず質問してみる事にした。
(貴方の事を貂蝉さんと御呼びすれば、宜しいのですか?)
「まぁ、今度の御主人様は、礼儀正しくてダンディで…♪もう貂蝉 チューしちゃいたい!」
(…私は、とんでもない人物を相手にしているのだろうか?)
「ゲフンゲフン…!私とした事が、初めての接され方だったので、思わず取り乱してしまったわん。」
(私の接し方は、普通だと思うのだが?それに、御主人様と呼ばれる人物に心当たりは無いのだがな…それだけ、この人は不当な扱いをされているのだろうか?
…それだったら、不憫な人だな)
「もう!御主人様は、罪作りな お・ひ・と!身体が有ったら、抱き付きたいくらい!」
(…ふぅ、話が進まないな……………ん?今、何か変な事を言わなかったか…?)
「そうねん。そろそろ御主人様の質問に対して真面目に答えようかしらん。」
(話し方は、変だが……そう願いたいね)
「じゃぁ、御主人様 心を落ち着けて、よぉ~く聞いてちょうだいねん。」
「まず、御主人様は、病で死亡したと言う事実は、解っているわよねん?」
(…あぁ。それは、解っている。)
「そして、生前に色々と後悔等をしてたわよねん?」
(あぁ。人として生まれ、後の世に子孫を残せなかった等だな。)
「えぇ。でも、御主人様?その苦悩・後悔を踏まえて、別の世界で新たに遣り直せるとしたら?」
(む?何だと?確かに、その話が本当に叶うのなら、嬉しい事では在るが…)
誰だって、遣り直しが可能と聞いたら、飛びつく物である。
それは、北郷一刀も例外ではなかった。
「それが、可能なのよん。ただし、それには、条件が有るのよん。」
(その条件とは?)
「御主人様が、通っていた学園の名前 覚えてる?」
(…聖フランチェスカ学園の事か?)
「そうよん!!実は、私が管理している世界…これを『外史』って言うんだけれど、その外史に入る事が出来るのは、聖フランチェスカ学園に通っていた時分の
北郷一刀なのよん。」
(ま、待て!貂蝉さん!私では、その条件をクリア自体出来てないではないか!もう何十年前の事だぞ!)
人生の遣り直しが可能と聞き、喜んだのも束の間、地獄へ落とされる気持ちを一刀は味わっていた。五体満足の状態なら、両手両膝を地に付いて地面に頭をつけている状態だろう。
「御主人様の気持ちは解るけど、もうちょっと私の話の続きを聞いて貰えるかしら?御主人様は、パラレルワールドとか聞いた事ないかしらん?」
(パラレルワールド…平行世界とかも言うやつか?)
「そう…この世には、幾つ物平行世界が有って、何人もの御主人様が時期が来たら、外史へ旅立って行っているわん。…でも、御主人様…貴方だけは、その事象から外れていたのん。」
(私だけが?何故だ?)
「それは、解らないわん。外史から何らかの意思が働いているのか?それとも別の『何かが』かも知れないわん。」
(…もしくは、今の事象を待っていたのか?)
「あらん。それも有り得るわねん。やっぱり御主人様って、ス・テ・キ!!」
(…あ、あぁ…有難う…)
(…意識だけの状況なので、他の事が見えたりしないから、全く状況が見えないぞ?)
「あらん、御免なさいねん。その事なんだけど、さっきも言った様に『聖フランチェスカ学園』に通っていた『北郷一刀』でないと、『外史』には行けないの。
だから、現在 御主人様には勝手で申し訳ないけど、聖フランチェスカ学園に通学していた時分の『北郷一刀』に、身体を再構成しているのよん。」
(なんと!そのような事が可能なのか?)
「えぇ、此処は、簡単に言えば『あの世とこの世の狭間』なのよん。だから、大抵の事は可能なのよん。それに、礼儀正しくてダンディーな対応の御主人様の
為なら、貂蝉 頑張っちゃう!」
(そうか、その様な事をしてくれて本当に有難う。)
「いやん♪本当に素敵な御主人様なんだから!!!あら…そろそろ最終段階に到達しそうね…御主人様 暫くお話は中断しなくては、成らないわん。話の続きは、
再構成が終わったらね。では、深呼吸をして心を落ち着ける様にして頂戴ねん。」
(…承知した。)
私は、深呼吸をする感じで、心を落ち着ける様にしていた。そして、暫く経ったと思うが、徐々に生きている時の五感の感覚が伝わってきた。
「さぁ、御主人様 再構成が完了したわん。ゆっくりと目を開けてみてん。」
私は言われるままに、ゆっくりゆっくりと目を開けていった。
「ここが『あの世とこの世の狭間』なのか?」
そこは、天も地も無い乳白色一色が広がる世界。立っているのか、浮いているのかも解らない。何とも不思議な感覚に囚われてしまった。そして、今まで感覚の無かった手を見てみると、手の皺も無い若々しい指が、目に飛び込んできた。
「おぉぉ…まるで若返ったみたいだ…。」
そして、鏡は無いが、その若々しい手で顔を触ってみても、深い皺が有ったとは思えない程、張りの有る肌だった。そして、着ている服装は、懐かしい『聖フランチェスカ学園』の制服だった。
「成功のようねん。凄く気に入ってくれた様ね。貂蝉も嬉しいわん♪それと、その学生服はサービスよん。」
私を生まれ変わらせてくれた貂蝉さんの声が聞こえたので振り返ってみると、そこには、光り輝く球体だけが有った。
「…貂蝉さん?」
光り輝く球体に、私は、首を傾げながら聞いてみた。
「えぇ、改めて始めまして。御主人様♪私が、貂蝉ちゃんよん♪」
やはり光り輝く球体から、その声は聞こえてきた。
(彼もしくは彼女は、どう言う存在なのだろう…?)
考えても仕方ないので、質問をぶつける事にした。
「貴方は、一体どう言う存在なのですか?」
光り輝く球体は、揺らめきながら私の質問に答えだした。
「まず、私は外史の管理者…幾通りも有る外史の管理をしている者、その外史の行く末を見守る者でも有るのよん。」
「外史とは、どういうものなのですか?」
先程から、外史と言う単語が出てくるので、序に聞いてみた。
「そぉねん…御主人様…人の思いって凄い力を、生み出す事が有るって知ってる?」
(人の思い…?)
「理想とか思想とか、『こうしたい!』『ああしたい!』等の事か?」
私は、思い付いた事を口にしてみていた。
「そう。でも、今 御主人様が言った思いの内容は、良い感情。正の感情よね。」
その言った内容は、正しく『正の感情』だった。
(待てよ…今、私も認めたが『正の感情』が有るのならば、『負の感情』でも外史は成り立つのか?)
「まさか『負の感情』でも…」
私は、思ったと同時に言葉に出していた。
「えぇ…その通り…。そういった外史も中には有るわん。その外史に飛ばされた御主人様は、酷いものだったわん。今 思い返しても、涙が出てくるわん!わぉ~~ん!」
球体なだけに、本当に泣いているのかは解らないが、赴く外史には、色々なパターンが有る事だけは、はっきりと理解出来た。
「では、私が赴く外史も『負の感情』が勝っている所なのか?」
やはり不安なのだろう、本人がこれから赴くであろう外史とやらが、気に成らないと言うのは嘘になる。なので、『負の感情』が勝っている外史でも、その事が
解っているだけでも、心構えだけは出来るだろう…と、思い質問していた。
「そぉねん。曖昧に答えるのも、御主人様を混乱させるだけだし、生前からの経験も有る御主人様なら対応出来ると思うから言うけど、はっきり言って『負の感情』が大いに勝っているわん。」
「………」
予想はしていたが、『大いに』と言う単語が出てきたので、内心穏やかでは無かった。
(『大いに』と言う事は、相当『負の感情』が強いと言う事だ。これから赴く外史でも、私は『死ぬ』事も有る…と言う事か…?)
「あぁ…御主人様が赴く外史先を教えて無かったわねん。行き先は、御主人様も良く知っている古代中国の『三国志』の時代よん。」
一刀が、考え事に集中していたので、物凄く不安に成っているのではと、貂蝉が勝手に思い込み教えてくれた行き先が、三国志の時代だった。
(おいおい…『死』が、標準装備じゃないか…?だが、貂蝉さんの言った『大いに』と言う言葉には、当て嵌まらない気がするな…)
「三国志の時代なら、『死』は人と隣り合わせだから、貴方の『大いに』と言う言葉には、違う気がするのだが?」
そうなのだ。現代の場合は、よっぽどの事が無い限り『死』と隣り合わせには、成らない。
そう思い一刀は、貂蝉に対し思った事を告げてみていた。
「そうねん。…言葉が悪かったわね。『死』とかではなく、その『負の感情』は、『恨み・妬み・謗り』等の事をさしているのよん。」
その言葉を聞いて一刀は、考え過ぎていた自分に安堵している事に気づいた。
その私の様子・雰囲気が貂蝉にも伝わったのだろう、今までとは違う雰囲気を込めた言葉で、貂蝉は話し出した。
「御主人様。確かに私は、『追い詰めたり・虐めたり』等の事と言ったけれども、それは『時代もしくは、世界』が、仕向けてくる事なのよん。安易な考えは、
捨てた方が身の為よん。」
確かに、個人的な事柄なら問題無いが、貂蝉が言う様に『時代・世界』が相手なら生半可な覚悟では、外史に飛んで直ぐ『死』に成る可能性は、十分に考えられるのだ。貂蝉が言う『感情・想い』が、外史自体に大きく影響を与える事に、一刀は改めて気を引き締める事にした。だが、「あの『三国志』の時代に飛ばされるのなら」と思うと、疑問も出来てた。
「貂蝉さん。貴方の言葉で生半可な覚悟のまま赴く事に成らなくて感謝します。だが、そうなると、私は『負の感情』に打ち勝つ為にも、私が知っている『三国志』の歴史を滅茶苦茶にしてしまう事に成るかも知れませんよ?それは、問題に成らないのですか?」
当然の疑問だ。一刀を含む現代人の殆どの人が知っている『三国志』だ。歴史を壊して良いのか?と言う疑問も出てくるはずだ。この事を貂蝉は、どう答えるのだろう…と、尋ねずには居られなかった。
「そぅねん。普通の外史なら、小さい事象なら『そのまま』。大きい事象だと下手をすると、
御主人様の存在自体が『消滅』に成るわねん。」
(何だと!『消滅』って、消えてなくなる事かよ!それは、拙いじゃないか!)
内心 ショックをしていた一刀に対して、続け様 貂蝉は語り出した。
「でも、これから御主人様が向かう外史は、先程言った様に『負の感情』が勝っているから、『外史自体』が抗えずに居る状態なのよん。だから『時代や世界』は、歴史に不干渉と言うか干渉出来ないでしょうね。
そして、行動した結果が歴史として残る訳よん。だから、御主人様は遠慮なく『負の感情』に対抗してくれれば良いと思うのん♪」
(なるほど…時代や世界さえも凌駕する『負の感情』だとはな…これは大仕事だ…何処に行き着くのかは解らないが、今まで培ってきた経験を出し惜しみせずにしなければ、生き残れないだろう…)
現代では、平々凡々と生きていても、最低限の生活は出来るだろうが、古代中国の三国志では、そうは行かない。自分の持っている能力を最大限に発揮しなくては、それこそ直ぐ『死』で在る。
(私には、剣術・弓術・自衛隊所属期間の経験、歳を取ってからの歴史書・政策書等の読書等、前世で得た知識・経験を活かせるのだ。時には、壁にぶつかるかも知れない。だが、それも一興!そして、今度こそ悔いの無い人生を謳歌してみせる!)
一刀は、自分の培ってきた経験・知識を存分に発揮出来る機会が与えられた事を、心の底から嬉しさが込み上げてきていた。
「考えに耽りながら、笑みが出て来るなんて…大胆不敵な御主人様も、サ・イ・コ・ウ♪!もう、我慢出来ないわん!」
と、言いながら球体が私の身体を擦り抜けて行った。
「あぁ~ん。私とした事が、気持ちの高ぶりの為に、球体状態で在る事を忘れていたわん。貂蝉 ショック…シクシク…」
(球体状態と言う事は、現在は『仮の姿』って事だろうな。まぁ、余り突っ込まない方が身の為だな)
などと、ちょっと保身に走り気味の一刀だった。
「あぁ、そうそう。」
そんな一刀の心情等、露知らず貂蝉は、話の続きを語り出した。
「これから向かう外史に際して、望みは有るかしらん?可能な限り三つ叶えてあげる。武器や能力でも、構わないわよ。ただし、一つの願いの内容が大き過ぎると、願い事の数が減るかも知れないけど…だから、よぉ~く考えて答えて頂戴な。」
(ほぅ…これは、高待遇だな…それだけ困難な状況に陥るのだろうか…?だが、くれるのなら、遠慮なく貰っておくべきだろうな。さて、なににするかな…)
「すまんが、暫く考えさせてくれないか?」
「えぇ。悔いの無い様にして頂戴ねん。」
貂蝉の返答を待って、一刀は貰える物に対して考えだした。
(さて、『三国志』の時代だから、戦は必定だろう。となると、やはり武器か。なら、決まっている。日本刀と弓だな。刀一振り…出来れば、最上大業物が貰えれば御の字だろう。
弓は、カーボン弓が貰えれば良いな。矢は現地で調達出来ると思う。
これで、もう二つ目か…残り一つは、どうするか………
待てよ?三国志の時代って軽く聞き流していたが、私は、漢文も読めなければ、書けもしないし、ましてや話も出来ないのではないのか?しかも、物の単位や距離等の事も有るな…ふむ…どうするか…漢文等は他の者に代筆なり頼めば良いか…ふむ…大体決まったな…知識は有る方だと思うので、これで良いだろう。)
暫く思案に耽っていた一刀だが、考えが纏まったのか面を上げ貂蝉に願いを伝え始めた。
「貂蝉さん 願いが決まったので、お伝えしても良いですか?」
「えぇ。聞かせて貰えるかしらん?」
貂蝉の返答が有ったので、一刀が考えた願いを伝える事にした。
「まず一つ目、三国志の時代なので、戦は必定だから、刀もしくは刀を一振り 出来れば『最上大業物』を。 二つ目は、カーボン弓を一張。三つ目は、生前に得た知識は、そのまま生かせるので在れば、文字の読み書きが出来ないし話さえ出来ない状況だが、取り敢えず会話が出来る様にして欲しい。
以上三つの願いだが、許容範囲内に収まっているのかな?」
出来る限り平静を装いながら、貂蝉の返答を一刀は待った。
だが、返ってきた答えは、一刀の不安を裏切る形に成った。
「あらん。御主人様って、案外 欲がないのねん。私ったら、『誰にも負けない武力が欲しい』とか、『無限に使用出来る超能力が欲しい』とか、そう言う事を言ってくるものだと思っていたのだけれども…それが、武器と会話なんて…現実思考の強い御主人様なのねん。」
(いやいや…貴方が言う『誰にも負けない武力が欲しい』とか『無限に使用出来る超能力が欲しい』とか使ったら、まず外史の世界が黙ってないだろう?確かに
出来たら、死ぬ事は無いだろうが、それは現実的に考えて、『異常』だろう…まぁ、通るのかも知れないが、それでは二度目の人生を楽しめないではないか…そんな事は、此方から願い下げだ。)
などと一刀が思っているもの知らずに、貂蝉は話の続きを語り出した。
「そぉねぇ~。二つの武器は、問題ないわよん。御希望通り、銘は無いけど『備前長船兼光』作の刀一振り。そして、最強強度に作成された『カーボン弓』一張を用意させて貰うわん。」
(ふぅ…武器は望み通り、いや私が思っていた以上の代物を貰えるか。)
一刀は、自分が思っていた以上の収穫を聞き、全て受け入れられるを踏んでいた。だが、
「ただ、三つ目の願いは、叶えられないわよん。」
「な、なんだと!」
(まさか、その様なオチが来ようとは…武器を二つ望んだのが、拙かったか…)
「では、大業物の刀を取り下げて、普通の刀…それでも駄目なら、刀自体を取り下げてでも良いから、会話が出来る様にして欲しいのだが!!」
一刀は、焦りに焦った。それはそうだろう。現代でも古代中国在ろうと、言葉が通じない人間同士は、大なり小なり諍いが必ず起きる。現代では、ジェスチャーも合わせて片言の英語でも話せれれば、何とか成るだろうが、三国志の世界に飛び込むにあたっては、そんな事さえ通用しない。人間一人では生きていけないのだから…
両手両膝を地面に付けて頭を垂れる勢いで凹んで居た所へ貂蝉が話しかけてきた。
「あのね、御主人様…言い忘れていた事なんだけど、元々外史では、会話は成立するのよん。だから、三つ目の願いは必要無いって言いたかった訳なのよん…」
その話を聞いた瞬間、一刀は、安堵感が押し寄せて来たと同時に、何故もっと早くに話さなかったのか、と言う思いに駆られた。
「……………」
「そんな怖い目で見つめられたら、貂蝉 腰が砕けそう!」
(駄目だ。今までの価値観を変えよう。こいつは、ある意味ヤバイ。)
「まぁ、おふざけは此処までにして、会話が成立するので三つ目の願いは、無いままよん?武器二つだけで良いのかしらん?」
(どこまで本気か冗談かは解らないが、まだ三つ目の願いが出来るのなら、どうするか…。ふむ…文字の読み書きを叶えて貰った方が良いかもな。試しにちょっと注文を入れてみよう。)
「先程の願いにも言った事だが、文字の読み書きが出来る様にして貰いたい。しかも、どんな難しい文字・文章も読めて、速記の様な速さで書いているにも関わらず、文字が綺麗に書けるようにして貰えるのだろうか?」
読む方は無難な願いだが、書く方は無理かも知れないな…と思っていたら、
「そんな事なら、御安い御用よん。本当に御主人様って、欲が無いのねん。貂蝉 更に惚れちゃいそう♪」
気色の悪い事を言いならがも、私の願いを叶えてくるのなら、感謝をしておこう。
「貂蝉さん 第二の人生を歩ませて貰うばかりか、願いを聞き入れてくれて本当に有難う。この気持ちは、言葉では尽くせないです。本当に有難う。」
私は、出来る限り誠意を持って、感謝の意を告げた。
「いいえ。いいのよん。でも、私が手助けできるのは、此処まで。此れから行く外史は、御主人様一人。だから私は、少しでも手助けがしたいだけなのよん。だから、気にしないでねん。」
「あぁ。解った。あとは、私の力量次第と言う事だな。新たに与えられた第二の人生だ。力の限り生きていこう。」
私は言葉にしながら、自分自身に言い聞かせ決心を決めた。
「御主人様の決心がついたので、そろそろ『外史への扉』を開きましょうか。」
私の決心を見定めて、貂蝉さんと名乗る球体は、輝きを増していった。
「あぁ。…色々世話に成ったな。…では、宜しく頼む。」
私は、目を静かに閉じて、その時を待った。
「では、いってらっしゃい、御主人様。外史の外側で、御主人様の活躍を見させて貰うわ。」
そう言うと、その輝きは、目を閉じていても解る位に更に輝きを増し、私を包み込んで行った。
そして、その瞬間 私の意識は、消えた。
「御主人様…『負の感情』に負けないで。でも、その感情の持ち主を助ける事が出来るのなら、助けてあげて頂戴…。だって…友達だものん…」
こうして、北郷一刀は、新たな外史へと旅立っていった。
これから待ち受ける運命は、誰にも解らない。
そう…外史の管理者でも、外史の世界でもだ。
如何でしたでしょうか?何分 初めての事ばかりなので、大変恐縮しているところです。
ですが、一人でも、楽しんで頂ける方が居られるのならば、精進してゆくつもりです。何卒温い目で見守って遣って下さい。
では、次回の講釈で…