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今宵共に  作者: 鷹羅
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突然の来客

修羅百鬼夜行


この組の名を知らない者はいない。この組があるからこそ、平和が続くのであった。男ならば、一度でも憧れる戦士。守るため。大切な何かを守るために、戦うのだ。


長い時が経ち、魔界では一つの強大な気を感じ取った。酷く強大な、いつか感じたことのある、あの当主たちの気と同じ感じであった。


魔界の者たちは思った。どこで、誰が、いや…誰かが、中央区に光を灯してくれる。きっと、必ず。ちょうど100代目の当主が我らを導いてくれる。


子供たちの未来のためにも、魔界の未来のためにも。










透和とわ!!」


透「ん…さち?」


重いまぶたを上げれば、目に入ったのは体操着姿の幸。


幸「いつまで寝てんのよ!!体育始まっちゃうよ!!」


透「寝てたのか…?」


いつの間に…寝た覚えがない。何故だろう。眠気が酷い。


幸「ほら!!男子着替えちゃうから早く行くよ!!」


「一ノ瀬になら見られていいかなー!!」


男子たちが騒ぐ。


透「誰が見るもんか。」





朝、さくらという男に会った。眼鏡をかけた、先生のような人だった。


けど…会った後のことをまったく覚えていない。一欠けらも覚えていなかった。


幸「里奈りな、透和やっと起きた。」


運動場に到着。透和と幸が着いた頃には皆全員整列していた。


里「大丈夫?顔色悪いけど。」


透「大丈夫。」


刀「…」


今日の体育は体育祭が近いから、各体育競技の練習だ。点呼して体操して、クラス対抗リレー。


「一ノ瀬さんが心配か?」


刀「翔太郎しょうたろう!!」


伊吹いぶき 翔太郎しょうたろう刀真とうまの幼馴染。和菓子屋の3人兄弟の長男。


翔「確かに、一ノ瀬さん最近調子悪そうだよな。」


刀「あぁ…」


今朝話していて急に消えたのも原因の一つなのだろうか。


翔「刀真も。」


刀「俺?」


翔「サッカー部のイケメンさんが一ノ瀬さんのこと狙ってるらしいからさ。早くしないと取られちゃうよ?」


笑いながら俺の肩を叩く。


刀「うるせぇな。あいつ鈍感すぎて駄目なんだよ。」


翔「押さなきゃ駄目ーみたいな?あ、俺の番だ。」


ま、頑張れよと言ってトラックに入った。


刀「俺に力があれば…」


透「何の?」


刀「うお!!!?」


すぐ横に立っていたのは透和だった。


透「アンカーだったよね?」


刀「おう。お前確か…」


透「アンカーにバトン渡すの。」


刀「お前足速いもんなぁ」


透「どこがよ?」


刀「朝、どこ行ってたんだよ」


透「…」


言えるはずがない。近くに光がいるせいじゃなくて、刀真に馬鹿にされたくないから。知られたら口封じとして何かすればいいかな。


光「一ノ瀬さん、次君の番ですよ。」


透「あ、うん…」


光がいた。気配が感じられなかった。






鬼『どういうつもりだ。』


桜『どうって…先程が申した通りですが?』


鬼『透和は主になんかならねぇ!!』


桜『貴方には分からないのですよ。』


鬼『てめぇ…!!』




ドンッ




何かが崩れる音がした。心臓に響き渡る低い音。鬼恐は真っ先に、体育をしている透和の無事を確認した。


鬼『何の音だ?』


桜『北西の方角です。行ってみましょう。』





『いてててて…着地失敗しちまった。』


枯れた落ち葉がクッション代わりになって助かったぜ。


『と…のんびりしてらんねぇよなぁ。行くか。』


黒い尾がゆらゆら揺れた




透「何…今の」


地が激しく揺れた。地震だ。でも…私しか感じなかった。あんなに激しく揺れたのに。


透和以外の生徒たちは、平然と授業を受けていた。


幸「透和、どうしたの?足くじいた?」


揺れに耐え切れずにしゃがみ込んだ透和を幸は支えてくれた。


透「あのさ…今地震なってなかった?」


幸「地震?…地震なんかなってないよ?」


透「…」


幸「顔色悪いよ。保健室行く?」


透「行かない。」









鬼『ここか。でけぇ音がしたのは。』


桜『そのようですね…。』


森のてっぺんにできた大きな足跡。なぎ倒された木々。とこどころに気を失って倒れている小鳥が目に入る。


桜『獣の足跡みたいです。』


鬼『ただ者じゃねぇみたいだな。…!?』


桜『どうしました?』


鬼『透和の気が乱れてる!!何かあったんだ!!』


桜『気が乱れる?』


鬼恐には分かる。出会ってからずっと一緒に過ごしていたから、透和の気を感じて気持ちが分かったりできる。遠く離れてもできるのだ。


鬼『何だこいつ…』


桜『同じことを思っているようですね。』


冷静になればやっと分かる、薄っすら感じる大きな気。ゆっくりゆっくりと透和の気に近づいている。ということは…


鬼『透和が危ない!!』









さっきまで動けていた身体は、段々だるくなっていた。


頭が重い…寝不足か?


授業はまったく頭に入らない。一つも耳に届かない。


幸「透和、やっぱり保健室行こ。顔色悪すぎるよ。」


透「そっかな…元気だよ。」


幸「どこが…全然元気じゃない。」


ぴしっ


透「っ!!」


幸「透和!?」


何かにヒビが入る音がした。


『見ぃつけたぁ』


がしゃーんっ


教室の窓ガラスが一斉に割れた。


透和の周りの奴らは、悲鳴や大声をあげていた。


透「何…?」


黒い髪をなびかせ、長身の男が窓から入ってきた。


『さてと、いい匂いの女はどこにいるんだぁ?』


いい匂いのする女?



鬼恐が言ってた。


(透和は、俺ら妖怪からしたらすげぇいい匂いなんだ。他の人間とは違う。特別な感じがする。すっげぇひきつけられる感じなんだ。)


このことだったら、私が危ないのか?


周りの奴らは、やっぱりあの男が見えていない。窓ガラスが割れたことにパニックを起こしていた。


どうしたらいい?どうしたら…


光「一ノ瀬さん!!来て!!」


透「え!?」


光「いいから!!」


近くにいた光に引っ張られ、教室を出た。


『あの女が怪しいな。』






光「一ノ瀬さん、見えてた?」


光のことは何度も聞かされた。きっと光は、私のことを知っているのだろう。隠していても仕方がない。もういいだろう。


透「うん。」


光の目に見えた透和は、まっすぐな目で自分を見つめていた。先日、殺そうとした奴を恨んではいないのか。


光「あれは、魔界の奴だよ。確か…帝豪っていう主の組だったかな。今の中央区の主らしい。」


透「中央区…」


自分の目で見たことも無い祖父を殺した主。


光「来た!!」


また引っ張られ、走り出す。手に力が入っているのか、手首が痛い。



『鬼ごっこかい?俺、負けないよ?』






透「光!!待って!!光!!」


さすがに、男子の体力についていけない。足が重くなっていく。


光「止まらないで!!このまま走らないと!!」


あと、気づいたことが一つ。


私たちは同じところを走っていること。


光は気づいていないだろう。


階段を上がって走って上がって走っても、同じ景色しか見えていなかった。


『鬼ごっこは、もう飽きちゃったなぁ。』


すぐ後ろから声が聞こえた。今、振り返ったら駄目。逃げないと。


『んー…噂以上の極上の匂い…。とろけちゃいそう…。うおっ!?』


透和の肘が相手の溝うちに入る。


透「捕まって!!」


透和が伸ばした手にしがみつく。


ポケットに入れていた白い布を広げる。すると、2人を覆いかぶさった。


(妖怪に襲われそうになったら、これを広げてください。遠くへ逃げることができます。)


部屋に置いてあった置手紙に書いてあった通りに動く。桜に感謝する。


(そして叫んでください。)


透「しゅん!!」


『!?』


妖怪の目の前で、透和と光の姿は消えた。跡形もなく。


『俺を驚かしたつもりかぁ?そんなの匂い嗅げば分かるっつーのぉ。』






ドサッ


枯れた葉の上に落下した。どうやら、ここは学校の裏山のようだ。


白い布はいつの間にか、ハンカチサイズに戻っていた。


光「上空から落ちたのか…。」


一ノ瀬さんが持っているハンカチでここに来たのだろうか。


光「良かった。枯葉があって助かった。ね、一ノ瀬さん。…一ノ瀬さん?」


自分の横にいる彼女を見ると、身体は震え、目は潤んでいた。


光「一ノ瀬さん!?」


透「あ…」


光「え?」


目を閉じてゆっくりと言葉を発し始めた。


透「きゅうじゅ…きゅ…」



『見ぃつけたぁー』



黒いマントをなびかせて、草木を荒く踏み潰す。


『やっぱ良い匂いだわ』


気づかないうちに、透和の首筋に鼻をつけていた。


透和は身動きができずに硬直していた。動かないのではない。動けないのだ。


光「一之瀬さんから放れろ!!」


『いただきまぁす』


妖怪には、光の声は一切聞こえてなかった。光の存在が気づかれていないのだ。


光「(獣化の妖怪か。何系か分からないから…)」


制服の内ポケットから紙きれを出す。


光「滅‼」


呪符がかかれた紙は妖怪の額に当たる。


『っ⁉』


利いてる。妖怪は疼くまり始めた。今のうちに一ノ瀬さんを…。


『なぁーんだぁ?この紙きれは?』


額についた札を外しヒラヒラ揺らす。


利いてないのか⁉お父さんの呪札を使ったに‼いつもなら簡単に倒せたのに‼


『そこらの下級共と一緒にすんなよなぁ』


左腕で動けない透和を抱えて、右手を光に向ける。


『バイバイな』


手から黒い煙が出る。


何だ。死ぬのか?僕は…負けたのか?





ボンッ





黒い爆発。辺り一面に黒い煙がたちこめる。爆風で光は数メートル飛ばされた。


『この野郎‼俺様に傷付けやがったな‼』


爆発でできた煙で何が起きたのか分からない。見えない。透和はどうなったのだろうか。


あ、あれ?


気が増えた?しかも、あの時の気。あの、一ノ瀬さんを消す時の気が。この身体に響く。


煙が消えたと思ったら、妖怪はいなくなっていた。倒れている透和は眠っているようだった。


光「何があったんだ…?」



***




ドサッ


身体を寝台に預ける。半身が痺れて自由に動かせない。


『何だってんだよ…あの娘…』


呼吸をするのも苦しい。


『さすが影月の娘。お前でも無理だったか』


『うるさいな…』


帝郷(ていごう)様が身体を癒せと申していた。油断しているからそうなるのだ。』


『ちっ…』




***




今回起きた事件は原因不明。一週間休校になった。


透和は何が原因かは知っていたが、あえて言わなかった。誰も信じないと思ったからだ。


















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