私と首輪と両親の秘密 前編
前編と後編があります。
「お父さん、これ外しちゃ駄目なの?」
「おうよ。あ…でもな、いざという時には外していいぞ。」
「それはいつ?」
「声が聞こえたら、透和の中で聞こえた声が助けてくれる。」
「声?」
「あぁ」
お父さんとお母さんがいなくなる前日
首に着けられた首輪について
***
透「首…」
「起きましたぞ!!」
「主様ぁー!!主様ぁー!!」
「透和様がお目覚めになりました!!」
私の耳元で騒ぐのは誰?
聞き覚えはあるんだけど…
透「頭痛い…ぶつけたかな…?」
「あぁ!!透和様!!まだ起きてはなりませぬ!!」
布団をバンバン叩いている小さな3匹の小人。
透「…小人?」
スパーーンッ
襖が勢いよく開いた。壊れるくらいの音をたてて。
『透和ぁーーー!!』
ボフッ
入ってきた人物は透和がいる布団にダイブしてきた。
透「き、鬼恐!?」
声の持ち主は鬼恐なのに、姿は人ではなかった。
紅い大きな狐だった。
『おい、鬼恐。小娘が困ってんぞ。』
『姿が違うからであろう。早く戻ってやれ。』
お客さん?
二人目の台詞が聞こえた瞬間。私の上にいた狐の身体は一瞬にして人の姿になった。
いつもの鬼恐の姿になった。
鬼『どこも痛くないか?気分悪くないか?』
透「痛くないけど…とりあえず、降りてくれないかな?重いんだけど。」
鬼『嫌』
透「じゃあ、このままでいい。あの人たちは誰?」
襖の側に立っている二人組。
黒髪を後ろで束ねている見た目は品の良さそうな奴。
逆立っている銀色の髪、左の頬には十字傷がある見た目は柄の悪そうな奴。
鬼『黒いのが鴉天狗の利岐。銀のが狼の我楽だ。』
我『鬼恐が惚れた女だって聞いたから美人で妖艶な女かと思えば…まだ小娘じゃねぇか。』
初対面で第一声が〝小娘”はないって。
我楽っていう奴は柄の悪いうえに口も悪いのか。
利『我楽よ、口を慎め。こやつはあの英雄の娘であるぞ。』
すると、我楽は黙ってしまった。
利『お初にお目にかかる。我は鴉天狗族三男、利岐と申す。そなたのことは存じているぞ。』
透「私のこと知ってるの?」
利『もちろんだ。鬼恐が惚れに惚れまくったという人間の小娘だからな。』
布団の側に座る三人。
利『それと、そなたには世話になったな。太郎たちから聞いたぞ。』
太郎?
利『赤いのが太郎。青いのが次郎。黄色いのが三郎。三人とも我の家の者だ。』
部下みたいなものかな。兄弟かな。
利『失礼。首を見せてもらうぞ。』
利岐が透和の首を触る。手が冷たい。
利『やはり…妖力抑節器具…』
よーりょくおーせつ?
利『鬼恐のお気に入りよ。これを外すではないぞ。』
透「外したらどうなるのよ。」
利『二度と同じことを繰り返したくないのならば、外すな。』
透「あのさ、私…むぐっ!?」
大きな手が透和の手を塞ぐ。
鬼『透和、聞いてくれ。』
珍しく真剣な目の鬼恐。ゆっくり口を塞いでいた手を膝に置く。
鬼『これから話すことは…すべて真実だ。』