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今宵共に  作者: 鷹羅
4/9

前触れ

秋の暖かくて柔らかい風は、とても心地好くてついウトウトしてしまう。


授業は何も頭に入らない。


窓際の席最高だよ。



ガラッ



急に教室のドアが開いた。


先生「神谷、遅刻だぞ。」


「すみません。父の仕事の手伝いをしていたので。」


女子の黄色い歓声が起こる。


神谷(かみや) (ひかる)。優等生で先生からの評価が良く、男女関係なしに好かれる。見た目は大人しそうだが、実はドSな男子。


「光くん!!お父さんの手伝いしてたの?」


光「はい。除霊を少し。」


確か、神谷の父親は神社の神主をしているそうだ。


学校の除霊もしてくれないかなぁ。


少しばかり神谷を見ていると、視線に気づいたのか、目が合った。周りの女子と同じ笑顔を振り撒いている。神谷の笑顔でおちる女子は数知れず。


スマイルの大バーゲン中かよ。


呆れて目をそらす。そういうのには興味が無いからだ。


あーあ…退屈だ。



『またアクビをなさったぞ』


『これで五回目ですな』


『Σややっ!?こちらを見ておられるぞ!!』


一時間目の用意をしようとしたら、机の足のそばに三匹の妖怪がいた。


『見えているのですか?』


見えるっつーの…。


私は霊でも妖怪でも見える。嫌って程、見えるものは見えるのだ。


しかも触ることができる。


生まれつきの力かな?このことは、鬼恐以外誰にも言っていない。


透「(私を観察して楽しい?)」


『なんとっ!!口を開かずに声を発しましたぞ!!』


驚きすぎだよ。


妖怪限定だが、私は妖怪と話すことができるし、口を開かず相手に伝えることもできる。


鬼恐が言うには、“心の声”らしい。


意外と便利なんだよね。


『私共が見えているのですか?』


透「(もちろん。ハッキリ見えてるよ。)」


だいたい15㎝くらいの大きさ。可愛らしい小人。


私の机によじ登り、教科書の上にちょこんと正座した。


うーん…可愛い…


『私共が怖くないのですか?』


慣れだよ。最初は本当に怖かった。


今ではこの通り、学校の怪談とかへっちゃら。


透「(怖くないよ。)」


『でわ…私共を…ひぃ!!』


突然の小さな悲鳴。



「一ノ瀬さん」



光だ。話しかけてくるなんて珍しい。



あれ?



『あ…あ…』


三匹共に目を見開いて震えている。まるで、蛙が大蛇に怯えているかのように。


光「次移動ですよ?行かないんですか?」


透「行くよ。」


ちょうど教科書の上に乗ってくれたから、そのまま連れて行ける。


大丈夫かな…?



光「…」



◆◆◆



昼休み、少し空腹の予感。


「あれ?透和、購買?」


透「あぁ…幸か。」


同じクラスの九条(くじょう) (さち)。中学から知り合って、今では親友みたいな感じだ。真面目で可愛い系女子。


幸「誰だと思ったのよ。あ、そうそう。また告られてたね。」


幸は恋バナ(恋の話)などの女子が花を咲かせる話が好物だ。


透和は興味がないから軽く流している。


朝、ギリギリ遅刻にならなかった。安心して教室に向かっていたら呼び止められて、その場で告白された。


透「振ったから。」


幸「何でー!?」


透「何でって…。」


幸「あと何ヵ月かで高校生だよ!?花の高校生だよ!?彼氏作らないと独り身だよ!?」


また説教ですか…。花の高校生って何だよ?


透「耳元で騒ぐな。私は屋上で食べるんです。」


幸「たまには教室で食べようよ。ほら座って座って。」


無理矢理座らされた。ここで逃げたら後でうるさいのがオチだ。


幸「透和さぁ、好きな人とかいないの?」


突然これか。


透「何回でも言ってあげる。興味ない。」


幸「でもさぁ、今日のは超イケメンだったんでしょ?いいなぁ~。」


羨ましいなら遠慮なくあげるよ。



「また振ったのか。」



幸「キャー!!!!」


声の先には、神谷(かみや) 刀真(とうま)がいた。


神谷光とは双子の兄弟。刀真が兄、光が弟だ。

見た目も性格もまったく似ていない二人は、仲が良いのか悪いのか。


刀真は学年1位と言われるイケメンで、告白殺到中。俺様系男子だ。


幸が興奮するのも当たり前か。


刀「男が可哀想だ。」


透「うるさい。アンタだって女が可哀想だよ。」


刀「モテる男は辛い辛い。」


腹立つなぁ…。


幸「神谷くんはどうしたの?」


刀「別に?透和と話したかったから。」



シーン…



刀「冷めた?」


教室にいる皆の視線が痛い。ここで地雷を踏んだ本人はヘラヘラ笑っている。


学年トップのイケメンが気安く女の名前を呼ぶなんて。しかも下の名前。


透和と神谷は付き合っても何でもない。


こいつと付き合うなんてごめんだ。


幸「この…浮気者ー!!」


透「浮気してないし。屋上行ってくる。」


そう言って屋上へ足を進めた。



◆◆◆



屋上は教室と違う景色が見られる。透和のお気に入りの場所だ。


恋なんて分からない。


今までに恋なんかしたことがない。


透「はぁ…」


溜め息が出ちゃうよ。





『止めっ…放しなさい!!』





透「え?」


どこかで声がした。さっきの授業で会った妖怪の声だ。三匹は、さっき『主人のもとへ帰ります』と言っていた。


急いで階段を上がる。


声が震えていた。


たまに見る。妖怪が妖怪に食べられるところを。


あれはあまりにも残酷すぎる光景だった。


あの三匹も…!!




少し重い扉を開けると向かい風が激しく吹いてきた。


それに混じって聞こえた声に耳を疑った。



『一ノ瀬殿…!!』



私が呼ばれてるの…?



「あぁ…貴方でしたか。」



信じられなかった。


整った制服を身に纏い、片手には数珠。片手には抵抗している…


『来てはなりませぬ!!この男は…!!』


さっきまで話していた妖怪。


教室にいた時とは違う。


私が知らない神谷光だ。


光「もうすぐ終わりますから、向こうで待っていてくれますか?一ノ瀬さん?」


どうして震えているの?逃げ腰になっている自分はおかしい。


透「除霊…するの…?」


光「はい、もちろんです。」


息が上がる。


何でこんなに苦しいの?光の台詞一つ一つが私を縛りつけている感じがする。



助けなきゃ


助けないと









「…!!透和!!」


透「ん…幸?」


重いまぶたを上げると、幸がいた。


自分は、屋上の地で仰向けに倒れていた。


幸「いつまでも寝てるのかな?もうHR始まっちゃうよ。」


嘘…私寝てたの?


そうだ!!あの子たち…!!


いない?


幸「聞いてよぉ!!光くん怪我したって!!」


透「光くんが?」


幸の話によると、光は昼休みに階段から落ちたらしい。背中の強打だけで済んだそうだ。


昼休みって光といたはず。その時は何も…無いような、あるような…。



記憶を辿るが、分からず終いになってしまった。



◆◆◆



何で私は寝ていたのだろう。


あの時、眠気は一切無かった。


怪我もしていない。


夜更かししたからかな…。


鬼『透和、魚焦げてる。』


病気なのかな…。


鬼『おーい、焦げてるぞー。』


透「えぇっ!?」


鬼恐の声にハッとした。


火を止めたが遅かった。晩ご飯のメインが真っ黒に焦げてしまった。


鬼「大丈夫か?ボーっとして…。」


頭の中がモヤモヤする。考えることが多すぎる。


今はただ、あの妖怪たちが無事であることを祈ろう。









『ご苦労。休んでおれ。』


『はい。』


『それにしても、放っておいていいのかよ?』


『神谷家は今、力をつけています。要注意すべきかと…。』


『うむ。目をつけておこう。それと…長に報告せねば。』


『あぁ。行くぞ。』









『強力な妖気が、神谷家の一人とぶつかった と』

初めまして&こんにちは。

鷹羅(たから)と申します。


“今宵共に”を読んでくださり、誠にありがとうございます。


透和、鬼恐以外の人たちが登場しました。


神谷(かみや) 刀真(とうま)は、ナルシストで偉そうな性格を持っている設定です。透和に馴れ馴れしい。学年一のイケメン設定…のはず。ファンクラブあり。


神谷(かみや) (ひかる)は、常に敬語で優男という設定です。神主をしている父を尊敬していて、父のようになりたい一身で陰陽師の道を選びました。兄 刀真とはあんまり仲がよくない。ファンクラブあり。


九条(くじょう) (さち)は、しっかりしている可愛い系という設定です。恋人募集中です。高校までに彼氏をつくる予定。



次回は、“前触れ”の続きです。


また新たな人物が出てきます。



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