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0.第三次世界大戦

 西暦一九八五年の夏に(ぼっ)(ぱつ)した第三次世界大戦は、東側と西側――共産主義、資本主義を奉じる国々が二つの陣営にわかれ、約三ヶ月ほどの短い期間、その総力をもって激突した戦いであり、

 最終的には(限定的な使用ではあったものの)双方ともに核兵器を応酬するにまでエスカレートして、結果、戦火がゆえに引き起こされた惨禍は、規模もさる事ながら歴史上類をみない凄惨なものとなった。

 第一次、第二次の世界大戦につづき主戦場となった欧州は、ほぼ全域が焦土と化し、それぞれの陣営の中心であったアメリカ合衆国、ソヴィエト連邦の両超大国も、やはり、都市居住者を中心として数千万の国民を永久に喪った。

 また、(直接交戦国ではなくとも)戦闘行為の周辺にあった国々も被害を完全にはまぬがれえず、世界はまさに苦鳴と(しん)(ぎん)の声に満たされたと言える。

 喪われた人命はもとより、産業基盤がこうむった被害、情報通信をふくむ流通網の破壊が、急激、かつ大規模に起きたため、戦場から遠く離れた国であっても経済的な(ダメ)(ージ)を避け得ず、その運営に苦しむこととなったからである。

 かくして大戦は、言わば自然消滅的――勝者も敗者もないまま沙汰やみとなり、事実上の終戦をむかえる。

 が、しかし、余燼(よじん)は依然として世界のあちらこちらで(くすぶ)りつづけ、新たな国際秩序の構築と、あらゆるレベルでの復興は遅々として進まなかった。

 その理由の最たるものが、首都に核攻撃をうけはしたものの、ほとんど無傷で生き残った大国、日本の戦争被災国に対する冷淡さであり、

 戦後社会は、

 アメリカ合衆国の分裂、ソヴィエト連邦の崩壊、混乱のつづく欧州諸国、内戦に突入した中華人民共和国etc.と、大戦に端を発する政治的、経済的な変動が、仲裁する者、援助する者とてないまま放置され、悪化するにまかされて、更なる混乱と悲惨を生み出す事を余儀なくさせられた。

 言うまでもなく、

 既存の諸勢力の瓦解と、従来のパワーバランスの崩壊によって引き起こされた混乱は、大戦に数倍する犠牲者を生み出す要因となったのであり、それはまた、新しい憎悪と不信を生む源ともなったのである。

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