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最後の恋文  作者: 月樹


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第7話 最後の恋文

 ポケットの中に、見知らぬ手紙が入っているのを見つけたのは、愛するアンネマリーとの結婚式を1週間後に控えたある日のことだった…。


 この世に生まれ出るよりもずっと前から、見守り続けてきた愛しい妻マリー。


 私は【メッセンジャー】なんて固有魔法を持っているくせに口下手で…

 彼女に愛の言葉の一つも贈ったことはなく…いつも言葉より態度で愛情表現してしまう性質(たち)だったから…


 私達にはすでに双子の子供達がいる…。



 ストラルガー公爵家の特色と固有魔法を持つ長男フェリックスと、ガーランド公爵家の特色と固有魔法を持つ長女オリビア。


 入籍は予定通り彼女の17歳の誕生日にしたけれど、式は子供達の誕生を待って挙げることになった…。


 双方の両親には『どうして()()が出来ない!!』と呆れられたっけ…。


 そろそろマリーの体調も回復したため、子供達のお披露目も兼ねて式を挙げようと考えていた矢先…

 不幸にも両親が馬車事故に遭い、帰らぬ人となってしまった…。


 予定よりかなり早く当主になった私は、喪に服すためと襲爵の準備で忙しくなり、更に式が延び…

 周りに私達の結婚と子供達の誕生を紹介出来ないまま、2年が過ぎてしまった…。


 世間では、挙式の予定日を過ぎても式を挙げることがなかった二人の不仲を噂する者もいた…。

 もちろん五大公爵家でそんなことを思う者はいなかったが、格下の侯爵家や伯爵家の者達の中には、あわよくば自分達が公爵家と縁を結べるのでは?と思った者もいたようだ…。

 そんなこと…あり得ない話なのに…。


 ~・~・~・~・~


 両親の馬車事故は、馬車がスリップして崖下に転落して起こったものだったが…


 その日は天候も良く、事故が起こった道は泥濘んでもおらず、幅の広い見通しの良い馬車道だった。

 地面にはスリップしたりブレーキを掛けた痕跡がなく…

 たぶん馬車自身に何か細工がされていて制御不能だったと思われるが、大破していたため原因を探ることは不可能だった…。


 その馬車事故について、新たな証拠が見つかったという、匿名の手紙は些か怪しかったけれど…

 手紙に書かれた店【キツネのボタン】はキノコのキッシュが美味しいと評判の店で、休日は予約でいっぱいになると聞く名店だし、待ち合わせ時間も昼の3時と健全な時間帯だった。


 通常なら平日の昼間に出掛けるなど難しいが、幸い指定された日は式前日なので、準備のために休みを取っていた。

 何らかの情報が得られたらラッキー、もしガセネタでも、その場合はせっかくだからマリーにキッシュのお土産を買って帰れば良いだろう…。


 そんな気楽な気持ちで、私は何も知らずに敵のアジトに、護衛も付けず向かってしまった…。



 まさか、通された個室に自分そっくりの人間が待っているなんて…誰が思うだろう…?

 ましてや双子の兄だと名乗ったその男が、公爵家を乗っ取るために仕組んだ罠だなんて…誰が想像できただろう…?


 ~・~・~・~・~


 マリーは字が書けるようになってからは、毎日手紙(ラブレター)をくれた。


 最初はまだ字があまり書けなかったから、ほとんど絵で埋められた可愛い手紙。


 それが少しずつ字が増えて、難しい言葉も書けるようになって…字も子供の書く字から、大人っぽい女性らしい字に変わって…。


 ちょっと右上がりの彼女のクセのある字を読むのが好きだった…。


 いつも恥ずかしがって返事を書かない私に、『一生に一度でいいから、私にも素敵な恋文(ラブレター)を送ってね』と微笑んでいたマリー…。


 ウェディングドレスは当日のお楽しみと言われたのに…

 こっそり試着姿を見に行ったのがバレて、可愛く『もう!!』って怒られたっけ…でも、見ておいて良かったな…。



 アイツに注射された毒が回ってきたのか、もう意識を保つのが難しくなってきた…。



 マリーの美しい花嫁姿を思い浮かべながら、()()()()()()恋文(ラブレター)を君に贈ろう。


 私の【メッセンジャー】という固有魔法をこれほど有り難く思ったことはない。





『愛してる


 誰よりも大切な君の幸せを願っている


 側にいてあげられなくなってごめん…


 今まで…ありがとう…』


お読みいただきありがとうございます。


新年最初に番外編1話投稿いたします。


結婚式前夜のお話で、二人の子供達も出てきます。

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