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最後の恋文  作者: 月樹


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第4話 五大公爵家の秘密

「あなたは五大公爵家の当主になるための資格をご存知?」

 アンネマリーは包帯男を見て、問い掛けた。


「それはもちろん、公爵家直系の嫡男だろ?」

 ごく当然のことを何故聞くのか?と不思議に思いながら男が返すと…アンネマリーは首を横に振った。


「それでは半分しか条件を満たしておりません。

 五大公爵家当主になるには、その公爵家固有の魔法が使えなければならないのです。


 ストラルガー公爵家の固有魔法は【メッセンジャー】。

 国民全体に王の言葉を瞬時に伝えたり、遠く離れた地にいる者にメッセージを送ることができる能力です。


 そして私の出身のガーランド公爵家固有魔法は【鑑定】。

 物でも人でも…その対象の真実を見抜くことが出来ます。


 他の三家にもそれぞれ当主とその後継者だけが使用できる固有魔法があり、それは正しく王と王国のためにだけ使われなければなりません。

 私達が自分のためにその魔法を行使して良いのは、一生に一度だけ…」


「嘘だ!!そんな話、聞いたこともい!!」

 それ以上、アンネマリーが語る、自分の知らない事実を聞いていられなかった男は、怒鳴って無理やり話を遮ろうとするが…


「その秘密を知らないということ自体が、あなたが当主ではないと語っています」


 アンネマリーの言葉に、書記官も頷く。


「それは当主と後継者しか知らない話なのでしょ?どうしてあなたが知っているのよ?」

 ずっとカヤの外にいたミッシェルが、少しでも話の矛盾点を見つけようと割り込んできた。


「それは、私がガーランド公爵家の固有魔法を使える後継者だからです。

 秘密を漏らさないために、私達五大公爵家では後継者同士で婚姻することが多いのです。

 そして妻の家には、妻の家の固有魔法を持って生まれた子を後継者として養子に出します。

 固有魔法を持つ後継者を生み育てるために、私達は若いうちから婚姻するのですが…

 そうしても近親婚が多いため、なかなか子供ができにくいのです…」


「そんな固有魔法が使えるかどうかなんて、どうやって分かるのよ?」

 尚も食ってかかるミッシェルに…


「ガーランド公爵家の固有魔法は【鑑定】だと申しましたでしょ?

 ガーランド公爵家当主が五大公爵家に生まれた子供は全て鑑定を行い、固有魔法を持つ者を後継者として認めます」


「では…俺は固有魔法を持たなかったから、外に出されたのか…」

 思わず、謎の男から言葉が漏れた…。


「あなたが公爵家から出され、イザベラ様の乳母の元で平民として育てられたのは、そのためではありません。

 通常固有魔法を持たなくても、普通に公爵家の子息として育てられます。

 本人が使えなくても、その子供に固有魔法が現れることもありますから…。

 でも、あなたの場合はどうしても公爵家から排除しなくてはならなかった…。

 そもそも、亡くなられた前ストラルガー公爵は、生まれたばかりのあなたの処分を決めておられました」


 思った以上に残酷な真実に、包帯の男ユーリーは目を見開いてアンネマリーを見つめた。それを気に留めることもなく、アンネマリーは話を続ける。


「前ストラルガー公爵夫人で、あなたの母であるイザベラ様は、【未来視】を固有魔法とするクリムゾン公爵家の後継者でした。

 一生に一回だけ許された未来視を、固有魔法を持たずに生まれた双子の兄のために使用したイザベラ様は、その子が将来父母殺しの罪を犯す未来を見てしまいました…。

 例えそれが自分の息子であろうと、危険分子は芽のうちに摘むのが五大公爵家当主の務め。

 前ストラルガー公爵は、家臣が迷いなく始末出来るよう息子の顔に一生消えない罪人の刻印を付け、処分するよう申し付けました」 


「「!!!!」」


 思わずユーリーは、包帯で隠している自分の頬の目立つアザを押さえた。


「冷酷になりきれなかったイザベラ様は、自分の乳母であるマーサに息子を託し、処分したことにして公爵家とは二度と関わることのない世界で育ててくれるよう頼みました。

 でも…何の運命のイタズラか…平民と公爵家なんて一生関わり合いを持つはずのなかったあなたが、どうした流れでか自分が公爵家の血を引くことを知ってしまい、公爵家の乗っ取りなどという大それた野心を抱いてしまった…」

お読みいただきありがとうございます。


誤字脱字報告ありがとうございます。


※書記官、執事は仕事上、固有魔法の秘密を知っていますが他言できない魔法契約がされています。



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