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私は魔法認定指導員。偽りの婚約者様、お覚悟してくださいませ!  作者: 悠木 源基


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第41章 小物同士


「領民にいかにバルガーニ侯爵令息が素晴らしい人物なのかを吹聴しろ。

 元領主の息子である君がデビンを信頼し、指示していると伝えればいい。そして


『彼が領主に選ばれたら、協力した者にはセラビィーという、この地よりも肥沃な土地の開拓の権利を与える』


 つまり開拓した土地を私有地にできる。そうパロット侯爵が保証しているという餌を撒くのだ。

 そして、ヘンドリーという男には


『君が代表になって動いてくれるというのなら、成功した暁には開拓地の長にしてくださるそうだ。

 どうだい? やる気はあるかい? 受けたくなかったらそれはそれで構わない。別の者に依頼するだけだからね』


 とでも言えば、欲深そうだからすぐに飛びつくだろうさ」


 パロット侯爵はこうフリュードと命じた。

 同類だからあの男の行動原理はよくわかるみたいだな、とフリュードは心の中で冷笑したそうだ。

 以前アニスに金の使い込みを疑われた時、証拠品は処分したものの、いつ領主から取り調べられるかとびくびくしていたベルーガ=ヘンドリー。

 しかし結局領主から取り調べることはなかった。アニスへの脅しが効いたのだとほくそ笑んでいたに違いない。

 

「お前がわざわざ教えてくれたから、俺達は証拠を消せる。ありがとうな。領主様は俺を捕まえられない。お前のせいでな」

 

 そうあの男に脅されたのだと、先日王太子の配下による取り調べを受けたアニスは泣きながらそう供述したそうだ。

 彼女は、バルガーニ侯爵へ移ってからはベルーガ=ヘンドリーとは接触していなかったという。

 ところが半年ほど前に彼女は、主の息子であるデビスから故郷の知人にルナシーの悪口を言いふらせと言われたのだそうだ。

 自分の婚約者をなぜ悪女に仕立てるようとするのかと、アニスは驚いたという。

 すると、ルナシーの有責で婚約破棄するつもりだからとあの男は言ったそうだ。

「自分がルナシーのオマケとして婿入りするのではなく、自分が領主になりたいのだ。

 あいつに勝手に一目惚れされて婚約したが、そもそもあんな女なんて好きでも何でもなかった」

 

 それを聞いたアニスはいい気味だと思ったという。

 フリュード様や奥様にあんなに可愛いがられていたのに、あっさりと侯爵令息に乗り換えたルナシーのことが憎くてたまらなかったと。

 そして、どうにかしてあの女を貶めてやりたいとずっと思っていたが、あの女は愛されていなかったのだ。

 ざまあみろと。

 しかもデビンはこう話を続けたそうだ。

 

「僕は彼女と別れて別の高貴な方と結婚してあの領地を治めていくつもりなのだ。

 そうそう、元領主の息子も私の下で私を支えてくれる予定になっているのだ。

 そうすればついでにお前もあちらで雇ってやるぞ」

 

 デビンのその言葉が彼の手伝いをする決め手になったらしい。

 フリュードを裏切った私に罰を与えたい。

 そしてデビンを領主にすれば、自分がフリュードと結婚できるかもしれない。そう思ったからだそうだ。

 フリュードはもう平民で身分差はない。いいえ、今は男爵令嬢である自分の方が身分は上なのだから断れないだろうと。

 だから、私に関する出鱈目な虚偽の噂を故意に流したのだという。

 

 フリュードがそのことに気付いて止めさせようとしたときにはすでに噂は独り歩きしていて止められなかったという。

 ただし正直なところ、そんな噂を信用した領民はあまりいなかったのだという。

 サンドベック伯爵領だけでなく、フォーケン領のほとんどの人々は私の献身的な働きを間近で見ていたのだ。

 だからそんな誰が言い出したかわからない噂を真に受ける者なんて、ベルーガ=ヘンドリーと繋がりのある者と、アニスの元熱烈な信者くらいだったそうだ。

 それ故に、彼らがいくら

 

「フリュード様がこの領地の領主には、サンドベック伯爵令嬢ではなくてバルガーニ侯爵令息を推薦している。

 だからみんなも彼を応援てくれ!」

 

 と言っても、誰も相手にしなかったらしい。

 焦ったベルーガ=ヘンドリーは、金を渡そうとしたり、脅したりしたそうで、ますます怪しまれ、善良な領民避けられていたという。

 そんな様子を目の当たりにして、彼の命令で仕方なくそれまで不正の手伝いをさせられてきた一人の男が、彼を裏切った。

 隠し持っていた不正の帳簿を、サンドベック伯爵家の騎士であるアロンソ=バルゥードに手渡したのだ。


 なぜそんな行為をしたのかというと、ベルーガと上層部の連中だけが、こっそり不正の証拠廃棄していた事実を偶然耳にしたからだった。

 下っ端の自分にはバレかけた話など一切しなかった。証拠を処分しろとも。

 おそらくいざとなったら、自分をスケープゴートにしようとしていたに違いないと、腸が煮えくり返った。

 それにもうこれ以上、悪い奴らの言いなりになって、やりたくもないことをさせられることに耐えられなくなっていたのだという。 

 その男の告発のおかげで、ベルーガ=ヘンドリーとその仲間が判明した。

 私の悪い噂を流しながら、デビン=バルガーニ侯爵令息の当主選び選挙の応援活動をしていた者達は、フォーケン領内で長年に渡って不正をしていた。農作物の横流しをしたり、税金を誤魔化したりと。

 

 そしてその者達は全員、今、セラビィーという名のこの地よりも肥沃な開拓地へ向かっているところだという。

 デビンが当主選挙で勝利したので、約束通り報奨としてその地の開拓と所有権が与えられたからだ。王太子の配下の騎士達に連行されていることにも気付かないで。

 しかし、今日テビンは禁忌魔法の申請を学園にしなかったこと、そしてその不正使用の疑いで留置場へ送られた。

 彼は有罪になる可能性が高いので、おそらくフォーケン領の領主になることはないだろう。

 そうなると、デビンではない新たに選ばれる領主は、たとえ彼らが今後帰郷を望んだとしても、受け入れてはきれないだろう。だから


「あいつらはその開拓地に留まるしかなくなる」


 フリルはニヤッと笑った。





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