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私は魔法認定指導員。偽りの婚約者様、お覚悟してくださいませ!  作者: 悠木 源基


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第36章 裏切り者の正体


 サロンの中は静寂に包まれた。しかし、その緊張をマリエット様が破った。

 

「今日はルナシー様の卒業祝いのための立食パーティーの予定だったのですが、もうそんな雰囲気ではなさそうですね。後日に改めて行いましょう。

 大切なお話が続きそうですし、皆様お座りになった方がよろしいのではないでしょうか。

 お茶をお願いしてもよろしいかしら?」

 

 マリエット様に声を掛けられたメイドが頭を下げると、すぐにサロンの奥にあるカウンターへ向かった。

 私達はソファへ腰を下ろした。

 今度こそはランサムお兄様の隣に座ろうとしたのに、そのままフリルに両手を取られて、私は彼の隣に座らされてしまった。

 やがて目の前にお茶が置かれた。緊張して喉が乾いていたのだろう。全員がまだ湯気の立つお茶を口へと運んだ。

 

 そしてお茶で喉を潤わせたフリルがようやく重い口を開いた。


 

 フリュードは今も、子供の頃からの夢を諦めていないという。私と一緒にフォーケン領を守っていくということを。

 デビンと王女ではあの地を守れない。王太子殿下もそれをご存知だという。

 いくら国王が娘可愛さでデビンに彼の地を与えようと考えていたとしても、そんなことには絶対にならない。

 フリュードは、最初からデビン達のことなど気にも留めていなかったらしい。

 

 そしてなんとフリュードは、王太子とは幼いころからの友人だったのだという。

 幼なじみだというのに、全然知らなかったわ。というか、みんなも知らなかったわよね。

 それはともかく彼は、国王がどんな人間なのかも大体わかっていて、いつまでも王座に留まってよい器の人物ではないと思っていたそうだ。

 だからこそ殿下に協力して、できるだけ早くその座から退いてもらうことにしたのだという。

 フリル語ったフリュードの大胆な発言に私達全員が絶句した。

 

 殿下が新国王になれば、彼の権限で領地の責任者くらいには任命してもらえるのではないか、そうフリュードは踏んだらしい。たとえ領主にはなれなかったとしても。

 そしてそれは彼の勝手な思い込みではなく、殿下も同じ考えだったようで、成功した暁には彼にその地位を与えると確約してくれたのだという。

 だからフリュードは、王太子の手伝いをしながら、自分がフォーケン領の責任者となったときのことを想定して、早めに行動していたようだ。


 そのために彼はまず、領地内の裏切り者の排除をすることにしたらしい。

 父の生前から裏切って私服を肥やしていた連中を。

 そのリーダー的存在がベルーガ=ヘンドリーだったらしい。

 

「ルナシー嬢、君は以前からあの男に疑念を抱いていたよね? あの男の妻が分不相応な物を身に着けているのを何度も見かけて。

 フォーケン伯爵家には女性視点で物事を見られる者が欠けていて、そのことに気付けなかった。

 フリュードはその話を父親ではなく執事のロンド=ガストン卿にしたのです。

 伯爵はヘンドリーを信じ切っていたので、ショックを受けるのではと思ったのです。

 それでなくても、疲労困憊していた父親をこれ以上煩わせたくなかったという思いもあったし。

 しかし結論を言えばそれは判断の誤りだった」

 

「なぜ?」

 

 私は思わず声に出してしまった。私の友人であるラルフの父であるガストン卿は、誠実な上に優秀な執事だ。

 彼なら上手く処理をしてくれたに違いないと思ったからだ。

 しかし、たしかにベルーガ=ヘンドリーがお咎めを受けたという話は聞いていなかった。

 だからこそ私は、自分の抱いた疑惑が単なる思い過ごしだったのだと、今まで思っていたのだわ。

 一体何が誤りだったというのかしら?

 

「フリュードとガストン卿の会話を、彼の娘のアニスが聞いていたんだ。

 そして彼女はそれをヘンドリーの妻に話してしまった。

 その結果高価な装飾品は隠され、裏帳簿などの証拠品は全て廃棄されてしまったんだ。

 そのせいでいくら怪しくても証拠がなかったせいで、やつらを捕らえることができなくなったんだ。

 もちろん、疑惑は残ったままだったから、その後は監視を厳しくした。だからもう悪さはできなかったはずだ。

 しかし、ヘンドリー夫婦はそのことを逆恨みしたんだ。自分達が悪いのに。

 しかもそれはフォーケン伯爵家やアニスではなくルナシー嬢に対してだった」

 

「なぜルナシーに逆恨みするのだ。そいつらに接触したのはアニスなのだろう?」

 

 私の代わりに、今度はロダンお兄様が怒りの形相で訊ねた。全くよ。どうして私に恨みを向けたのよ。

 

「アニスは、ヘンドリーの妻が身に着けていた装飾品を指差して


『そんな高級品をあなたが買えるわけがないわ。お金を誤魔化しているでしょう。わかっているのよ。

 このことを旦那様に言い付けてやるから覚悟しておきなさいよ』


 と自慢気に言い放ったらしい。

 だが、そのとき女が身に着けていた装飾品は、ただの安物だったらしい。

 それでやつらは、自分達の悪事に気付いたのはアニスではないと気付いたようだよ。

 そして、勘付いたのはおそらくルナシー嬢に違いないと結論付けたみたいだ。

 そんな頭の切れる女性を、君以外思い浮かばなかったのだと思う。サンドベック伯爵夫人はすでに亡くなられていたから」

 

「しかし、そもそもなぜアニスのやつはそんな余計なことをしたのだ?」

 

「ルナシー嬢に対する対抗意識だと思う。

 フォーケン伯爵親子や領民のみならず、自分の父親や弟までルナシー嬢を褒め称えていたから」

  

 フリルがこう答えると


「使用人の立場でありながら、自分の主がお世話になっているご令嬢に対抗意識を持つだなんて、どんな了見をしているのでしょう。

 いくら嫉妬(・・)に狂っていたとしても許されることではありません。

 しかも、主の指示も受けずに勝手に罪人を取り締まろうとするなんて言語道断です」

 

 もう我慢できないというように、オルガが思わずこう口を挟んだ。


「全くもってその通りだ。うちのルナシーに対抗しようなんて、身の程知らずだな」

 

「ちょっと可愛い顔しているからっていい気になっていたのか? 性格悪かったんだな。

 女って怖いな」

 

「執事のガストン卿の妻は二人目の子供を出産後、産後の肥立ちが悪く、その数年後に亡くなってしまったそうです。

 侍女頭やフリュードの乳母達は残された子供達を気の毒に思い、主同様に彼らを可愛いがったので、ラルフはともかくアニスは勘違いをしたのでしょう。

 それに周りが気付いたのは、フリュードとルナシー嬢がお揃いのネックレスをしているのを見て、自分も同じものが欲しいと夫人に強請ったときだそうです」

 

 フリルからそれを聞いて、みんな遠い目をした。知らないって怖い。

 あのネックレスは、フォーケン伯爵家に代々伝わる家宝である魔石で作られたものだ。

 それを使用人の子供が欲しがるなんて、いくらなんでも無分別過ぎる。

 使用人が自分のことをこの家の女主にしろ、と要求しているようなものだったからだ。

 

 ガストン卿は床に額を付けて謝罪したが、普段は鷹揚な夫人もこのときばかりは凄まじい怒りを表したという。

 そして、二度とその娘を屋敷内に立ち入らせないように、ガストン卿を含む使用人達に命じたそうだ。


 伯爵一家や執事の父親はアニスに対してきちんと節度を持つように教育していた。

 しかし使用人達は、ついつい母親を亡くした哀れな娘だと、彼女を猫可愛がりして甘やかし過ぎた。

 弟ラルフに対しては男爵家の後継者として厳しく接していたのに。

 

 キツイ見た目の私と違って、彼女がとても愛らしくて可愛い風貌をしていたせいもあったのだろう。

 そのせいで、彼女は自分の立場を弁えない人間になってしまったようだ。




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