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私は魔法認定指導員。偽りの婚約者様、お覚悟してくださいませ!  作者: 悠木 源基


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第35章  明かされる真相


「ねぇ、フリルさん。あなたのお誕生日がいつなのか聞いてもいいかしら?」

 

 私がこう訊ねると、返ってきたその日付はなんとまさにフリュードと同じだった。

 

「フリュードは君の存在を知っているのかい?」

 

 ランサムお兄様がこう訊ねると、フリルは頷いた。

 すると父がパッと明るい顔になってこう言った。

 

「やっぱりそうか。君はフリュードと密かに手を組んで、ルナシーを今日まで守ってきてくれたのだな」

 

「それはどういう意味ですか?」

 

 兄ランサムが今度は父に訊ねた。

 

「以前フォーケン領内でルナシーの悪い噂が流れ出した時、すぐに調査をしたのだ。そして、その噂を流した者が判明した。

 ベルーガ=ヘンドリーという男で、以前フォーケン領内で領民のまとめ役をしていた男だった」

 

 父はこれまで語っていなかった真相を話し始めた。

 なぜその男がルナシーの悪口を言いふらしているのかと、その真意を探るために、父はベルーガに見張りの騎士を付けたそうだ。

 するとその彼が、行方不明になっていたフリュードと接触している現場を目撃したのだという。

 そして見張り役の騎士は、フリュードの後をこっそりと付けて行き、彼がパロット侯爵家の門の中に入ったのを確認したらしい。

 名前を告げることなく顔パスだったことで、かなり親密であることは見て取れた。

 

 その報告を受けた父の衝撃はかなり大きかったという。

 親友の息子だからと、愛情を持って大切にしていたつもりだった。実の子より(・・・・・)むしろ可愛がっていた。

 それなのに、紙切れ一枚だけ残していなくなり、必死に探し回っていたその三年間、敵だと思っていた家の世話になっていたのか?

 

 裏切られた思いだったという。いくら娘が彼を裏切り、バルガーニ侯爵家の息子であるデビンを選らんだことを恨んだとしても、そこまで娘や我が家を蔑ろにするのか?

 これまで家族や使用人一同一丸となってフォーケン伯爵家や領地のために貢献してきた。妻にも無理をさせて死なせてしまった。

 それなのに、私が娘を使って乗っ取ろうとでも誤解したのか?

 自分の純粋な思いを疑われたと思って腹が立った。

 そしてそれと同時に、こんな結果を生み出す原因を作った()をさらに忌々しく感じたのだという。

 

 ところがだ。

 父が適当に(・・・)選んだ騎士であるアロンソ=バルゥード卿は、偶然にもかなり優秀な人物だったようだ。

 本来噂を流した人間を見つけ出すことだけが任務であったはずなのに、それを命じた相手を見つけた上に、その人物の目的まで探り当てたのだから。

 

 フリュードはパロット侯爵家だけでなく、王家やバルガーニ侯爵家とも繋がっていたのだ。

 しかもそれは側妃側だけでなく、なんと王太子側ともだ。

 それを突き止めたアロンソ卿は、父にとある一つの仮説を聞かさせたのだという。

 

「フリュード様がどんな手を使ったのかはわかりません。

 しかし、王太子殿下と知り合って手を組み、パロット侯爵家やバルガーニ侯爵家の罪を暴こうとしているのではないでしょうか」


 そうアロンソ卿に言われて、父はなるほどと納得したようだ。

 フリュードはフォーケン領を愛し、大切に思っていた。それにかなり優秀な男だった。

 それなのに女一人に裏切られたくらいで、その嫌がらせのために領主の地位を簡単に諦める捨わけがない。

 それがルナシーの噂を流すこととどう関係しているのかはわからなかったが、きっと何か大きな目的があるに違いないと考えたらしい。

 

「フリル君、君が娘に近付いたのはフリュードの命で、デビンの情報を得るためだったのだろう? 

 もちろん守るためもあったのだろうが」

 

 父の話は驚くことばかりだったが、その極みが最後にフリルしたこの質問だった。

 フリルは私を利用するために近付いて親切にしてきたの? 

 それを知らずに私は彼の思い通りにペラペラと自分の事情を話していたってわけ?

 なんてチョロいのかしら、私って。

「終わり良ければ全て良し」なんて笑った私を、フリルはさぞかし心の中で呆れていたことだろう。

 馬鹿みたいだ。辛かった学園生活も終わってみれば楽しかった、素晴らしかったと思ったことも結局幻だったのね。

 

 スウーッと体中の力が抜けて立っていられなくなった私を、フリルが後ろから両手で捕まえて受け止めた。

 そして声を振り絞るように呟いた。

 

「違う。違うよ。僕は君を利用するために近付いたんじゃない。

 デビンみたいなクズを調べるのなんて簡単だ。君を利用する必要なんて最初からない。

 僕は君を守りたかった。支えたかっただけなんだ」

 

「そうフリュードに頼まれたからだったのかい?」

 

「……」


 ランサムお兄様はフリルが答えなかったので、そのままさらに質問を続けた。

 

「黙っているということは、肯定していると受け取ってもいいってことかな?

 もしそうだというなら、フリュードはあの事があった当初から、妹のことを恨んでいなかったということになるよね?

 それなのに、なぜ彼はあんなひどいデタラメな噂を放っておいたのだろうね。

 最初にフリュードを裏切ったのは自分だから仕方ないと、ルナシーは彼を責めたことはなかった。

 それでも妹が傷付いていたことは確かだよ。

 君に妹を守るように命じておきながら、妹を傷付けていた彼の本意は何だったのか、君は知らないかな?」

 

 父とは違い、兄は私の側に立って質問をしてくれた。そのことが私にもまだ信頼できる人がいるのだと教えてくれた。

 だからこそ私は長兄の元へ行こうと思ったのに、後ろからフリルにがっしりとガードされて動けなかった。 

 

「フリュードは先祖代々守ってきたあのフォーケン領を大切に思っていた。

 そして愛する(・・・)ルナシー嬢と結婚して、二人であの地を守ることを幼い頃からずっと夢見ていたんだ。

 だからあの婚約者選定の日に自分が選ばれなかったことに、当然彼はひどい衝撃を受けた。

 しかし、彼女に裏切られたなんて、彼は一瞬たりとも思わなかった。自分達は誰かの罠に嵌められたのだとすぐにわかったからだ。

 でも、それを証明することが難しいということにも。


 だから自分達にとって一体誰が敵で、最終的な目的が何なんかを探るために、彼はサンドベック伯爵家を去って身を隠したんだ。

 でも、ルナシー嬢が家族の中で孤立して辛い思いをしていることはわかっていたので、それが心配だった。

 その上、恋愛感情どころか思いやりの一欠片も持ち合わせていなそうなデビンが、彼女にどう接するのかも気になった。

 だから……」

 

「だからフリュードは、ルナシーを見守ってやって欲しいと君に頼んだということか」 

  

 やはりフリルは返事をしなかったが、つまりそういうことなのだろう。

 その場にいる者達は皆フリルを見つめ、彼が言葉を紡ぐのをじっと待った。

 彼は決してスパイなどではなく、純粋に私を守ろうとしてくれていた恩人だと分かった。

 それゆえに、フリルを問い詰めることは間違いだと皆が思ったからだった。



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