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第11章 選挙対策


「あの、誤解して欲しくないのだけれど、俺は何も君を矢面に立たせたいわけではないんだよ。

 断罪はもちろん俺や王太子殿下達でやるつもりだ。

 ただ気持ちだけでいいから、君にも一緒に戦う気になって欲しかっただけなんだよ」


 フリルは言った。

 えっ? そうなの?


「バルガーニ侯爵令息やエバーナ王女殿下のやりようがあまりに酷いからさ、以前王太子殿下に苦言を呈したんだよ。

 自分の妹が婚約者のいる令息に手を出しているのになぜ止めないのかって。


 そうしたら、ずっと注意しているのに言う事をきかなく困っていると殿下が言ったんだ。

 情けないけれど、妹を押さえつけるだけの力が()()自分には無いとね」


 そりゃあそうでしょうね。

 王太子は、正妃である王妃がお産みになった正統の後継者だ。そのことに間違いはない。

 とはいえ、隣国の王家から嫁いできた王女様故に、王妃と王太子は国内に味方が少ないのだ。

 もちろんもし誰かが王太子を蔑ろにし、廃嫡しようとすれば、即刻隣国から攻め込まれことになると思うわ。

 だから、表面上は大切にされているけれど。


 それに比べると王太子の一つ年下のエバーナ王女は、国内有数の貴族であるパロット侯爵のご令嬢だった、側妃がお産みになった姫君だ。

 王太子とは違って大きな後ろ盾があるので、たとえ妹であっても彼女に強く出られないのだろう。

 そのことは私でも容易に想像がつく。

 その上、国王が自分似のエバーナ王女を溺愛しているのだからなおさらだと思う。


 もっとも、王女が兄の言うことを訊かないのは、デビンに「誘惑」の魔法を掛けられているせいなのだが。

 その魔法のせいで彼女は、誰から何を言われようと、彼とは別れられない。

 彼と結婚したくて、めちゃくちゃなことを両親にも要求しているのだ。

 本当はその事実を教えてあげたいところなのだが、私にとってこのことは大切な切り札だ。

 最終局面まで秘密にしておきたいから言うつもりはない。



 はあ〜。

 それにしても、王太子も大変よね。あんな馬鹿な父親と妹がいたのでは。

 なんでも王太子は世のため人のため、できるだけ早く国王を隠居させるつもりらしい。

 そのために、王家の後ろ盾だという側妃の実家を失脚させるために、長年に渡り悪事の証拠集めをしているのだという。

 そしてそれはすでにほとんど揃っているらしく、あとはタイミングを見計らっているところらしい。

 どうしてそれを知っているかといえば、私が生徒会役員だから。

 意図的なのか偶然なのか、この生徒会は改革派の人間ばかり揃っているのだ。

 これまで政治的発言など一切してこなかった私を、彼らがなぜ信用したのかはわからないけれど。



 フリルは入学した年に、当時三年生だった王太子のフェリウス殿下の目に留まり、密かに協力させられていたようだ。


 すごいわね、フリル=ボーン!

 さすが入学以来主席なだけあるわ。


「君を悪く言う人間はたしかにフォーケン領だけでなく、王都にもいると耳にしている。

 だけど、少なくても君を知っている学園の人間の中で、君を悪く言う者なんてほとんどいないと思うよ」


「でも、王都や学園の票だけでは絶対に当選できないわ。

 たしかにうちの領民だけじゃなく、フォーケン領でも多少は私に票が入るかもしれない。

 けれど、救世主サンドベック伯爵家の令嬢というだけじゃ、その他の地域での票は望めないわ」


 自虐的にそう言って笑った。

 前世のときだって、元アイドルとかタレントとかならともかく、優秀だ、善人だとどんなに周りから評価されていたとしても、全国区の知名度がなければ議員になんて当選できなかったもの。

 それに、無名の男女の候補者が立候補した場合、ほとんど男性が当選していたし。

 たとえ女性参画や男女平等を目指すという理念を謳っていた社会でさえも。

 それなのに、男性主上主義のこの世界ならなおさら、ただの令嬢に投票する人なんていやしないわ。


 すると、フリル=ボーンは机の上に置いてあった筒状の紙を私の前で広げて見せた。

 それを見て私は目が点になった。

 そこにはパロット侯爵家とバルガーニ侯爵の悪事がズラッと書き記されてあったからだ。

 まあ、あんなこと、そんなことまでやっていたのね。と、それを読んで正直呆れた。


 脱税、収賄、密輸、違法賭博、土地転がし、脅し、エトセトラ。

 人身売買と麻薬、強盗をやっていないだけ、危ない商売人よりはまだマシ?と思えるレベルだった。


「これを掲示板に貼って、皆に彼らの悪さを示せば、バルガーニ侯爵令息に投票する者は激減するんじゃないかな」


 ヘイト攻撃ね。

 前世では真偽も定かでないヘイトがネットで炎上して、正直選挙民が混乱していたわ。

 まあ、フリル=ボーンと王太子殿下のことだから、前世の嘘情報なんかじゃく、ちゃんと裏取りされた確かな情報なのだろう。でも……


「この選挙ポスターは掲示を許されないと思うわよ」


 私がそう言うと、フリル=ボーンは目を見開いた。


「どうして?」


「どうしてって、ポスターは掲示する前に検閲されるからよ。

 側妃殿下のご実家や王女殿下に関わる醜聞が書かれてあったら、王家の沽券に関わるとして絶対に認めてもらえないわ」


「……」


 彼はガクリと肩を落とした。そして少し間をあけて悔しそうにこう呟いた。


「役人には分からなくても他の人には伝わるような方法ってないのかな」


「暗号みたいなものってこと? 

 でもそれって、そもそもそれを共有する人にしか伝えられないから、あまり意味がないんじゃないかしら……」


 そう言いつつ、私はふとあることを閃いた。


「ねぇ、ただ名前が書いてあるだけのポスターを貼っても、私に入れてくれる投票者が増えるとはとても思えないわ。

 それならまず、選挙を応援してくれる人を募集するポスターを作ったらどうかしら。

 その方達に口コミでもいいから真実を広めてもらった方が効果はあるかもしれないわ。急がば回れと言うし」


「選挙応援者(サポーター)募集!と書いたポスターを貼るってこと?」


「まあ、そうね。

 最初に言った通り、私はフォーケン領の領主になんてなりたいわけじゃないの。

 でも貴方達の調べた犯罪記録を見せられたら、そのまま放置するわけにはいかないと私も理解したわ。

 だから、できるだけ私も選挙活動をしてみるわ。

 私の当選はともかく、王太子殿下や貴方達の同志を増やせるかもしれないしね」


 あなたたちに協力すると言ったつもりだったのに、どこかフリル=ボーンは不機嫌そうだった。

 しかし、それでも渋々というように彼は頷いたのだった。




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