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はじまり
お腹が空いた。
すぐに帰るからお家でお留守番していなさい。
それだけ言って何処かに行ってしまったママ。
珍しい事じゃない。
いつものように夜には帰って来る。
そう思って、待っていても帰っては来なかった。
あれから何日?
お腹が空いたら食べろと言われたお菓子もお弁当もなくなり、お水も出ない。
閉められたシャッターも玄関からも抜け出せないで、幼いながら死を覚悟した。
勝手に抜け出して近所に見られたらママが怒られる。
ママが怒られたら、今度は乃亜がママに怒られる。
熱湯をかけられたり、狭いお部屋に閉じ込められて数日間は何も食べさせて貰えない。
なら、ここで大人しくしているしかない。
大人しく、どこにも行かないでここにいたらママが帰って来てくれる。
そう信じて、どの位が経ったのか。
ガチャガチャと聞こえる玄関を開ける音に薄れる意識のまま、見つめたけど、そこにいたのはママじゃない。
「この子か?」
「そうだ。連れて行け」
どこに?
やだ!やだやだ!!
そんな僅かな抵抗も出来ないまま、大人に抱かれたままに運ばれた。