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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第97話

その日の朝はいつもと変わらない朝だった、ただ僕にとっては特別な朝だった。

「おはようシリル、よく眠れたみたいだな」

明日の朝にはレイは居ない、そんな事はここに来る前から分かっていた事だ、僕は精一杯の笑顔を作ってレイにおはようを言った。

昨日と同じように部屋で座っているだけで朝食が運ばれてくる、昨日と違って食べきれないほどのパンを持って来てくれたので、残りは船の上で食べる為に包んでもらった。

ここに来た時には隙間の有った大きな旅行鞄だったけれど、ここを去る今は荷物でいっぱいになっていた。

忘れ物が無いか部屋の中に目を配る、忘れ物は何もない、忘れたくない思い出がたくさんそこにはあった。

「それじゃあ港まで行こうか、まだ時間は有るが出航時間に間に合わないと大変だからな」

「そうしたらもう一泊出来るかな、それなら遅れても良いかも」

「うーん、それは困るな、遅れたら走るか泳ぐかしてでも追いついて貰わないとな」

「それは僕も困るよ」

「そうか、それなら遅れる訳には行かないな」

そう言ってレイは僕の荷物を軽々と持ち上げ部屋を出て行った、僕はそれに続き部屋を出て、一度だけ振り向いて、それからレイの跡を追った。

玄関では相変わらず扉の左右にメイドが立ち、深々と頭を下げて見送ってくれた。

「ちょっと変だよね」

「ああ、何か変だったか」

「うん、あれだけ凄い宿なんだからわざわざ言う必要が無いのかも知れないけど、またどうぞお越しください、とか言えば良いのになってちょっとだけ思った」

「まあいろいろ事情が有るんだろ、そんな事が気になったのか」

「まあね、これでも一応宿屋の息子なんで」

「ふうん、そう言う物なのかな」

そうこうしていると正門に辿り着き、再び魔力車に乗る事が出来る様だ。

「本当なら歩いて行くんだが、今日は特別に魔力車をまた借りてやったぞ。シリル気に入ってたみたいだったからな」

「ありがとうレイ、僕もこんな魔力車に乗れるようになりたいよ」

「そうだな、その時は俺も乗せてくれよ」

「うん、約束だよ」

レイは僕の頭に手を乗せくしゃくしゃと頭を揺らすと、ゆっくりと魔力車を走らせた。


港へ着くと、僕が乗り込む貨物船はすでに港に入っていた。荷物の積み下ろしにはもう少し時間がかかりそうなので、出航はもう少し先になりそうだ。

「じゃあこれが乗船許可証で、これは食事代だ。余った分はお小遣いにでもしてくれ」

そう言ってレイはそれなりの金額を僕に渡してくれた、三食贅沢をしても十分に余る金額だった。

「こんなに貰っても良いの、僕も旅費は 貰ってきてるから大丈夫だよ」

「いいよ、気にするな。それぐらいの金ならすぐに稼げるからよ」

僕はそのまま俯いて黙り込んだ、レイはそんな僕をずっと見つめてくれていた。

「また・・・」

「ん、どうした」

「また・・・、会えるかな」

どうにか言葉にする事が出来た、涙はとめどなく溢れ、嗚咽以外の声を発することが出来なくなった。

そんな僕をレイは優しく抱きしめて、ゆっくりと話し始めた、

「会えないなんて事は無いさ、俺もお前も、生きていれば必ずまた会える。だから絶対に死なない事、これは俺が言えた義理じゃあないが、とにかく生きろ。どれだけ恥をかいても人は死なない、失敗を恐れずに前に進め、そして、前に進むことと同じくらい休む事も大事だ。身体の傷も心の傷も時間が治してくれる、今すぐに出来なくても、いつか出来れば良いんだ」

僕は頷いた、そのたびに涙が地面を濡らす。絶対に死なない、死なずにまたレイと会いたい。僕は固く心に誓った。

「まあ、2度死んでる俺が言っても説得力が無いけどな」

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