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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第92話

「俺が言った事が事実かどうかを確認できない以上、やっぱり忘れて貰うのが一番良いと思う」

レイが話してくれた事は僕の中に深い影を落とした、確かに何も知らずにいるよりは、知っておいた方が良い事だったと思う、だけど、知らない方が良い事も、世の中には有ると教えて貰えたとも思う。

何も知らなければ、遠くからあの美しい姫様を眺めているだけで良かった、僕が今よりももっともっと強くなって再び姫様の前に立った時に、今日姫様に手合わせして貰った事だけを覚えていれば、ただ再戦を喜ぶだけで良かったのに。

「僕は今のままではとても姫様には勝てないけど、レイなら、レイがまた本気で訓練すれば姫様に勝てるんじゃないかな、そうすれば姫様も・・・」

一気に捲くし立てる僕をレイが制した、レイは首を左右に振りながら、

「俺だろうと他の誰かだろうと、負けたら姫様は終わりなんだよ。国民の人気だけがあの姫様を支えているような物だからな。力になってくれている権力者たちも、国民の人気が有るから姫様を支援しているだけで、一度でも負けてしまえばおしまいなんだ。また来年頑張れば良いなんて思ってくれる国民も居るだろうけれど、そんな事を許して貰えるほど甘い世界では無いんだ」

レイは僕が言おうとしていた事を察してか、僕の言葉を制して答えてくれた、確かに負けてしまえばそこで終わってしまうのだろう、そんな事は無いと思いたいけれど、それは僕が勝手に思い込んでいるだけかもしれない。

「本当に、悲しい立場なんだね」

「ああ、だからあの姫様には深入りするな、今ならわかるよな」

僕は無性に大声を上げて泣き出したくなった、別に僕は泣き虫でも何でも無いけれど、とにかく何かを吐き出したくて、無性に泣きたくなった。

僕は涙を堪えて頷いた、それと同時に大粒の涙がしたたり落ち、顔を上げる事が出来なくなった。

そんな僕の頭をレイは優しく撫でてくれた、とても硬く鍛えられた手のひらだったけれど、その手はとてもやさしくて温かかった。


どれくらいの時間だ立ったのだろうか、僕の中から記憶が流れ落ちてしまったのか、泣く事よりも腹の虫が大きな声を上げた。

「そろそろ夕飯を食うか、俺も腹減っちゃったよ」

僕の頭を撫でていた手で腹をさすりながらレイが言った、僕は大きく頷いてすぐに頭を上げて荷物を手に持った。姫様から送られたビンを抱えた時に淡い液体が音を立てたが、僕の心は揺るがなかった。

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