僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第91話
僅かながら複雑な状況に置かれている事を理解し始めた僕にレイは次々と追い打ちをかけて来た。
「なんであの姫様が剣戟をやり始めたり、狩竜人になったのかはわからないが、国民が姫様の剣戟大会での勝利を望む以上に、国王はその敗北を望んでいるんだ、あまり気分の良い話しじゃないよな」
その通りだ、国王で有る以前にひとりの親だろう、なぜ我が子の活躍を素直に喜ぶことが出来ないのだろうか。
「そして、健気にも先頭に立って国民を鼓舞し続ける姫様に同情して、国王に次ぐぐらいの権力を持っている大臣たちの中にも、姫様を支援をする人たちが沢山出て来た。姫様にとっては味方が増える事は喜ばしい事だが、その事が更に国王の気分を害してしまう」
確かに味方が増える事は嬉しい事だけれど、その事がまた分断を生んでしまうなんて、
「そして、周辺国も姫様と王子のどちらが跡を取った方が自分たちの利益になるのかで、様々な関与をしてくる、正直、アルデンサルとしても招かれざる客・・・になりつつあるんだ」
そう言ってレイは少し寂しそうな顔をした、なんでレイがそんな顔をするのかはわからなかったけれど、姫様の肩を持っていると疑われる事は不利益につながりかねない事はわかる。
「まあアルデンサルの国王はそう言う面倒くさい事には、はっきりと面倒くさいという人だから、大事にはならないと信じているけどな」
なかなか豪快な人なんだなアルデンサルの国王は、ここへ来て初めて名前を覚えたぐらいの国王だけれど、なんだか懐かしいような気持になった。
「あくまでも噂話程度の事だから、どこまで正確かは俺にもわからない。姫様に直接聞く訳にもいかない事だしな、俺に出来る事は出来るだけ関わらないって事だけなのさ」
レイは再び寂しそうな顔をした、剣戟大会で剣を交えて、狩竜人としても一目置いている姫様の力になりたくても、なれないもどかしさがそんな顔をさせているのだろうか。どれくらいの時間だったかわからないけれど、僕も姫様の前に立ち、戯れとはいえ剣を交えた仲だ。たったそれだけの時間でも、姫様は僕の心を引き付けて止まない。レイがどれだけの時間、姫様と対峙していたかはわからないけれど、少なくとも三回は剣戟大会で剣を交えていると聞いている。だとしたら、僕のこの気持なんかとは比べ物にならないほど感情をぶつけ合った筈だ。レイの中にもどんな形で残っているかはわからないけれど、姫様は必ずそこに居るはずだ。
「何と無くだけど、レイやアル船長が関わるなと言っていた意味が解ったよ。他国の一平民が姫様の肩を持つような事をし出したら、最初は小さなさざ波程度の事かも知れないけど、やがて大きなうねりとなって自国民を巻き込んでしまうかもしれない。そうならないために他国の子供が一人死んだとしても、大した事では無いって事だよね」
レイは小さく頷いた。




