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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第08話

先生に野暮用で呼び出されてしまったため、家に帰るのが遅くなってしまった。

とは言っても開店前には家に着いたはずだが、すでに扉は開けられて中には客らしき人影が見えた、そのため入って良い物かと店内を窺いながらうろうろとしていると、おかえりー、と元気よく声を掛けられた。

そこに立っていたのは紺色のワンピースにエプロンを付けた女性だった、昨日から厨房の手伝いをしてくれている内の一人だ。明るい笑顔で出迎えてくれた女性の名前がわからずもじもじとしていると、その女性はすぐに気付いたようで、

「シンディよ、おかえりシリル君」

僕もシンディに負けない笑顔を作り、

「ただいま、シンディさん」

と返事をした、シンディは優しく肩を組むと店内へ案内してくれて、

「ここで寝てるのがレイナルド、こっちがジェイソンよ」

そう言うとピシャリとジェイソンのスキンヘッドを叩いた、しかしジェイソンはそんな事はおくびにも出さず、

「俺の事はジェイジェイと呼んでくれ、こいつはレイで良い」

「はいありがとうございます、ジェイジェイさん」

ジェイジェイは僕の頭を優しく撫でてくれた、でもその手はすごく硬く力強かった、それに気付いたのかジェイジェイはすぐに手を離すと、

「おおすまんな、こんな仕事やってるとどうしてもな」

僕が不思議そうな顔をしているとシンディが僕の頬を撫でてきた、その手はとても柔らかく暖かかった、

「へっへーん、私の手はそんな風になっていませーん」

そう言いながら僕の頬を自由気ままに触り続ける、ジェイジェイに同じことをされたいとは思わない、

「シリル君、まだ食事には早いけどお腹空いてる」

さんざん頬をいじくりまわした後でシンディが腹具合を聞いてきた、いつもの食事の時間より早いため、そんなに減っていないという結論に辿り着いた。

「じゃあ丁度良いわね、ほらレイ起きなさい」

そう言うとシンディは寝ているレイの頭に拳骨を落とした。ゴツンという鈍器がぶつかったような音がしたがレイはすぐに起きなかった、正直、僕はレイが死んでしまったんじゃないかと勘違いするほどすごい音だった。

シンディには逆らわないでおこう、と僕は密かに心に決めた。

「んだよシンディ、痛てぇなぁ・・・」

眠い目を擦りながらレイは大きく伸びと欠伸をした、痛い、程度で済むのかと口を開けて驚いている僕に気付いたレイが、

「なんだこのガキは」

「ガキじゃない、シリル君、この店の主人の子供なんだから、大事に扱いなさい」

「あー、はいはい」

シンディに窘められ面倒くさそうに返事をするレイにシンディは、

「あんたが一番暇なんだから、食事の時間までシリル君の相手をしてちょうだい」

「んだよ、面倒くさい」

「しなさい」

レイは返事もしなくなった、僕も嫌がっている人に構ってもらうのも悪いので、部屋で待ってると伝えようとした矢先に姉が帰って来た、

「シリルおかえりなさい、シンディさんも御留守番ありがとうございました」

「いいえ、構わなくても良い客しか来てませんので」

「そりゃ俺たちの事か」

苦笑いしながら言うジェイジェイにシンディは鼻で返事をした、姉も帰って来たのなら良い頃合いなので部屋に向かおうと思ったとたん、眠そうな目をしていたはずのレイが姉を見るなり立ち上がり、

「おかえりなさい」

と言い直立不動のまま固まってしまった、不思議そうな顔でエイミーがシンディに目配せをすると、

「ああ、紹介するわねこっちのカチンコチンなのがレイナルド、こっちがジェイソン」

シンディは再びジェイジェイのスキンヘッドをパチンと叩いた、綺麗な手形が2つ出来てもジェイジェイは涼しい顔をして姉に会釈をした、

「娘のエイミーです、ゆっくりしていって下さいね」

「お気遣いありがとう、だが、そろそろ船の様子でも見に行かないとね」

ジェイジェイは席を立ちレイに退店を促したが、部屋へ向かっている僕を捕まえて、

「よし、お兄さんと遊ぼう、何が良い」

と言ったレイの目は姉を見ていた。


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