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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第88話

「なんだかあっという間に終わっちゃって、夢の中に居たような不思議な感じがする」

明日にはアトモスへ帰るんだ、僕一人で。そんな事は最初から解っていた事だけれど、僕はアルデンサルでの3日間を一生忘れる事は無いだろう。

「頭が揺れたからなぁ、ふわふわしてる間は横になっていた方が良いぞ」

相変わらずレイからは頓珍漢な返答が帰って来た、だけど僕はレイの言葉に従った。身体を起こしていたら目眩の様な感覚にとらわれたからだ、そして、こんなやり取りももうすぐ終わってしまう、そう考えるとここでのたわい無いやり取りも良い思いでになるだろう。

「そう言えば、僕は何で倒れたのかわからないんだけど、最後に姫様は何をやって来たの」

肝心な事を聞いていない事を思い出した、試合の最後に僕が闇雲に攻撃をしようとしたところを姫様に止められ、その後に僕の意識が無くなった・・・、で合っているのだろうか。

「ああ、あれを覚えていないのか、なんかごちゃごちゃ喋っていただろ、そのあとお前が後ろに飛び退いて、転んで頭をぶつけたんだ」

聞かなければ良かった、なんて恥ずかしい最後だったんだろう、頬が紅潮してい来るのを感じ取った僕は、思わず布団の中に顔を埋めた。

「と、その前に姫様の横切りがお前の顎を捉えていたんだけど、お前は良くあそこまで飛び退けたな」

あれ、もしかして今、僕は褒められているのか?

「咄嗟に危険を察知出来て、姫様の剣が届く範囲の外まで飛び退けれたんだから凄いぞ」

僕は真っ赤に紅潮していた顔から熱が去るのを感じ、ゆっくりと布団から顔を出してレイに尋ねた、

「飛び退いたのに、なんで姫様の剣は僕に当たったの」

「それなんだが、あの姫様の剣は伸びるんだよ。それもほんのこれぐらいなんだけどな」

そう言うとレイは両手で隙間を作り、僕に見せて来た、それはわずかな隙間だったけれど、剣先が当たるか当たらないかで言えば天と地ほどの差が有る。

「姫様も、お前相手に技を使うとは思わなかったって言っていたぜ」

「でもさレイ、剣が伸びるのは剣に細工がしてあるからなの、それってルール違反だよね」

「違う違う、だから技って言ってるだろ。姫様のやっていたのは俺も真似できないんだけど、握った剣を手の中で滑らせて、ほらこれぐらいは長くなるだろ。それと組み合わせて蹴り足を回転させたり、正対したところから半身になって踏み込んだり、身長が無い俺達みたいなのは、そうやって工夫して大きい相手と戦うんだ。まあこんな小細工は、竜相手には使えないんだけどな」

「僕も練習すれば、出来る様になるかな」

レイは僕の問いに難しい顔をして首を傾げた後で、

「お前が剣戟大会で優勝を狙いたいと言うのなら俺は止めないが、狩竜人には必要のない技だからな。姫様の様に狩竜人をやりながらでも習得出来るのなら良いが、荒ぶる竜と対峙するのと木剣を持った相手と剣戟をするのとでは力の掛けようが違うからな」

「それがレイが剣戟大会に出なくなった理由なの、やっぱり人間相手よりも、竜を相手にしてる方が、やりがいが有るの」

「・・・それだけじゃ無いが、そうだな大会も終わった事だし、お前がこれからどうするのかにも関わって来るから、きちんと話しておいた方が良いな」

「それってあの姫様に深入りするなって言ってた事?」

「そうだ、他言無用だし行動も起こすな、今から俺が言う事を良く聞いて、すぐに忘れるんだ。その方がお前の為でもあるし、そうしないとお前だけで無く、お前の両親もとばっちりを受けるかもしれないからな」

僕は興味と恐怖が入り交じり、冷や汗をかきながらワクワクもしていた。

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