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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第85話

係員の後に続いて廊下を歩いて行くと、会場に近付くにつれて次第に騒がしくなって来た。

普段の予選からこれだけの人が集まっているのかはわからないけれど、世界一位のお姫様の試合を目の前で見る事が出来る機会なんてそうそう無いと思う。決勝戦を行う国ならば毎年見れるだろうけれど、この国の人達にとっては初めての事だろう。昨日ならばもっと間近で見れたかもしれないけれど、世界一強くてとても美しい他国のお姫様がその辺を歩いていて、街の食堂で食事をしているなんて思わないだろうな。

僕はざわめきの中、緊張と興奮で自分の身体に防具が付けられている事にすら気付かなかった。

「あ、あの、これは何ですか」

防具を付け終えた係員が不思議そうに僕の顔を見て、

「防具・・・ですけど」

それは僕でもわかる、でも僕が聞きたいのはそうじゃあない。

上手く言葉に出来ずにまごまごといていると、係員は僕の言いたいことを察してくれたのか、

「この防具は初めて見ましたか、これは、木剣が当たって骨が折れても、痛みを我慢して戦い続ける人が続出したので、これを付けて試合をする事に決まりました。この防具は強く叩くと、中から赤い液体が流れる様になっています。そうした場合は、そこから先は欠損したものとして、拘束をして試合を再開します。但し体の中心に攻撃を受けた場合は、死亡した物として試合終了です」

説明を聞いて、なんで三層構造になっているのかが理解できた。そしてレイはなんで防具を付ける事を教えて置いてくれなかったんだと腹立たしく思ったけれど、どうせレイの事だから忘れていたんだなと自分を納得させた。気を取り直して試合場への階段を登ると、防具を付けていても想像以上に動きやすい事に驚いた、そして僕と反対側に立つ姫様の凛々しい姿に見惚れて、僕は一瞬足が止まってしまった。

僕からしたらほんのわずかな戸惑いだったとしても、お姫様には何もかもお見通しだろう。

すると姫様が不意に口元に手をやり震え出した、僕には何が起こっているのか全く分からなかったけれど、あまりに腑抜けた僕に怒りが込み上げて来たのだろうか。そんな不安を抱えていると、観客が僕を見て一斉に笑い出した。いくら僕が弱そうだとしても笑う事は無いだろう、両こぶしを突き上げて抗議の意を示していると、両手で拳を作っている事に驚いた、それと同時に僕の後ろから係員が申し訳なさそうに剣と盾を渡して来た。差し出されたそれを受けとるとざわめきは音量を増し、僕は耳を塞ごうと両手を耳に当てようとしたら剣と盾に邪魔をされてしまった。火に油を注いでしまった僕は、目を瞑りざわめきが収まるのを待った。それでもヤジが聞こえて来たけれど、自分の失敗なのでそこは甘んじて受け止めた。

僅かな時間だったけれど平静を取り戻し始めた僕は、姫様が取った不思議な行動が気になった。

口元に手をやり震えていたのは、まさか僕が素手で目の前に立った事が可笑しくって笑いを堪えていたのかもしれない。まさかの結論に辿り着いた僕が目を開けて姫様を見ると、いつものように涼しげな顔立ちでしゃんとしていた。その姿を見てやはり笑いを堪えていたのは勘違いかなと思い、確認するためにもう一度両手で耳を塞ごうとして剣と盾を頭にぶつけると、姫様は後ろを向いて肩を震わせていた。

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