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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第83話

あれほど自信に満ちて、大きく見えていたアントニオも小さく縮こまってしまうと、自分と年の差も左程ないため、お互いまだまだ子供なんだなと改めて思わされた。しかし、僕と同じ年の時には、あのお姫様は剣戟大会でレイを倒して優勝をして、それからもずっと勝ち続けている。レイが深入りをするなと言うのもなんとなくわかって来た。

どれだけの修行をすれば、目力だけで自分よりも大きい男を、ここまで小さく出来るのだろうか、目が合っただけで心を奪われるほど美しい顔をしていながら、なぜそんな事が出来るのだろうか。

いままで僕がやって来た訓練なんて、子供のお遊戯ぐらいの事なのだろう。手に肉刺が出来たら痛くて素振りの回数を減らし、足が痛かったら走る距離を減らし、それでも毎日へとへとになるくらいには頑張って来たけれど、僕は両の足で歩いて家まで帰っていた。次の日も学校へ行って半分眠りながら授業を受けて、それから道場へ走って行った。

僕は僕なりに頑張った、頑張ったつもりだった。僕はレイがにこにこと食事をしている所や、姉の前で小さくなっているところしか見ていなかった。

僕が学校へ行っている間、道場で守備隊と訓練をしている所や、船に戻って何をしていたかなんて何も知らない。

僕が代表になった時だってそうだ、ジェイジェイにしごかれた守備隊の人達は、僕と持久走をして負けてしまう程の訓練をしていたんだ。

僕はまだまだだ、でもそれはまだまだ強くなれるという事、僕は小さくなったアントニオ見てそう思った。

明日、僕は姫様の前に立つ、どれくらい手を抜いてくれるかはわからないけれど、その覚悟は出来た。


僕の雰囲気が変わった事がレイにも伝わったのだろうか、夕食を食べて床に就くまで一切からかって来なかった。朝起きてから、新しい足さばきと剣と盾の使い方を教えてくれた、すぐには身につかないと思うけれど、レイからの最後の教えだと思って心と身体に刻み込んだ。

昨日と同じよう朝食を部屋で済ませて、宿を後にした。魔力車で会場に乗り付けて、いよいよ僕の剣戟大会が幕を開ける時が来た。

「じゃあ俺はここまでだ、試合は見てるから終わったら迎えに来るよ」

僕が頷くのを確認すると、手を振りながらレイが控室を出て行った。

僕の他に何人もの参加者が居たけれど、その目線の先に僕は居なかった、みんなは出て行くレイを目で追っていた。誇らしくも有り悔しくも有ったけれど、それは当然の事なので傷つくほどでは無かった。

「おい、お前ら。今日の参加者に竜姫が居るぞ」

控室に乱暴に入って来た男がそう言うと、参加者はいっせいにざわざわとし出した。

僕は最初は誰の事かわからなかったけれど、みんなの話しに耳を傾けるとどうやらオフィーリア姫様の事だとわかった。竜姫なんて呼ばれているとは知らなかった、レイはそんな呼び方してなかったし、もうちょっと容姿に似合った呼び方という物が有るだろうと、少し腹立たしく思った。

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