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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第81話

それからもアントニオの突っ込みどころ満載の話しは続いた、レイはそんなアントニオを気に入ったのか世界一位と言われたことで気を良くしているのか、アントニオの誉め言葉に舌の回転も良い様だ。

僕は口を開くと失言をしかねなかったので、突っ込みそうになるたびに下唇を噛んで言葉を厳選してから反していたのでとても疲れた。

すると突然アントニオが目を見開き視線を逸らした、何事かと思って後ろを振り向くとすぐに白装束の者たちに囲まれ、ゆっくりとお姫様が近付いて来た、レイの方をちらりと見ると僕の方を真っ直ぐ見つめて、

「特別にあなたの相手をしてあげます、これは懲罰では無くてご褒美です。感謝をしなさい」

そう言われた僕も、レイも当然僕の一回戦の相手であるアントニオも驚いた、

「お待ちください姫様、そのような事は事前に言っていただかないと」

「ですから、前日に伝えました」

「ですがこちらにも手続きの時間と、それに参加資格の審査とか色々ありまして」

「私に、予選参加の資格が無いと言いますか」

レイは必死に弁明をしているが、当の姫様には何も響いていないどころか、言いくるめられている様にしか見えない。僕としても世界最強と剣を交えるのは少し興味があったけれど、かなりの手加減をして貰ったレイを相手にしても全く歯が立たないのに、手加減無しのお姫様を相手にしたらいったいどうなってしまうのか、少なくとも今僕の目の前にいるお姫様はとても美しく、微かに香る香水に僕の足は震え、体中から冷や汗がしずくになるかのように溢れ出ていた。とても敵わない。そんな事はわかっている、だとしてもその前に立たないといけない時が来る。それが明日なだけだ。

僕が密かに覚悟を決めていると、アントニオが口を挟んで来た、

「ちょっと待ってもらっても良いですか、明日のシリル君の一回戦の相手は私なので、シリル君と戦いたいのならば、その前に私を倒してください」

アントニオの言葉に姫様の視線が鋭くなった、当然アントニオも勝てる訳が無いのだけれど、どうやら真意は巧く伝わらず、姫様を侮っていると取られてしまったようだ。

「良いでしょう、予備予選でも何でも何戦でもやりますわ。私の前に立てるのなら」

そう言って姫様はアントニオに本気の殺気を向けた様だった、もしかしたら、あれでも本気じゃなかったかも知れない。それでも近くに居た僕は身も凍るような気がしたし、遠巻きに僕たちを見ていた人たちも、その場に留まる事が出来ずに一歩下がる程の威圧感を感じたようだった。

当のアントニオは地面を濡らし、青ざめた顔で何かを言っている様だったが、あまりに小さな声で聞き取る事は出来なかった。

「ちょっと姫様、このような場所で困ります、どうかお控えください」

レイはそう言って、カチカチに固まっているアントニオを抱えると、

「シリルすぐに医務室へ行こう、このままだとアントニオが可哀そうだ」

レイはお姫様に一礼すると、医務室が有ると思われる方向へ駆け出してしまった。僕はその場に残される訳にもいかないのでレイの行く方向を目で追い、ある程度の咆哮が解ると振り返り、

「それでは失礼させていただきます、明日の授業を楽しみにしています」

そう言うと白装束の人達がざわめきだしたので、僕は姫様の顔を見る事無くその場を去った。

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