僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第80話
「なんだシリル、今から緊張してるのか、そんなんじゃあ明日が心配になるなぁ」
僕が緊張している事がレイに伝わってしまったらしく、いつものようにレイがからかって来た。
咄嗟に反論をしようと思ったけれど、緊張している事は間違いが無いので黙っておいた。
レイも僕からの反応が無いと面白くないのか、それ以上何も言ってこなかったので、案外黙っているというのも対処としては間違っていないようだ。
大会の前日という事も有り、僕たちの他にも参加者であろう人達をちらほらと見かけた。当然僕は無名の参加者なのだけれど、師匠は有名なレイナルド・エースという事も有り、時折周りからの視線に気付く事も有った。すると、その中の一人が僕たちの前方に立ち塞がり声を掛けて来た、
「すいません失礼します、あなたはレイナルドさんですか」
レイより少し背の低い男だった、長年の訓練の集大成として、この大会に参加することが出来て、しかも憧れのレイに会えたと喜んでいる、レイの陰に隠れながら見上げた男の顔は僕とは違い自信に満ち溢れていた。
「ああ、名前に聞き覚えが有ると思ったら、お前の明日の一回戦の相手じゃないか」
名乗りを上げた時に気付いてはいたけれど、レイが気付いていなければ、そのまま何事も無く分かれる事が出来たのに、僕はレイの後ろから顔だけ出していたけれど、そこから一歩前に出た。
「では、そちらがシリル・エアハートさんですね、私はアントニオ・パガーニと言います。明日は正々堂々と戦いましょう」
そう言って差し出された手を僕は握り返して頭を下げた、アントニオの顔は変わらずに自信満々だった。
握ったアントニオの手は、レイには敵わないまでも少し硬くなっており、日々の訓練の積み重ねを感じ取る事が出来た。まずは一回戦突破だと息まいてはいたけれど、こうやって現実を突きつけられると、途端に自信を喪失してしまう。僕はまだまだ綺麗な指先を触りながらそう思った。
「まさかとは思うんだけど」
アントニオが少し屈んで僕の耳元で囁いた、
「後ろに居る白装束の集団は、まさかオフィーリア姫様御一行なんじゃないのか」
僕は後ろを振り返る事無くそうだよ、と答えた。
「やっぱりそうか、まさかこんな所にオフィーリア姫様が来るわけ無いと思っていたけれど、今日は最高の日になったぜ。世界一尊敬する二人を見れたからな」
それだとどっちかは世界二位だと思うけれど、初対面の人に突っ込むのは止めて置いた。




