僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第77話
展望台の中にも観光客の姿は見えず、職員と思われる人たちが遠くを眺めてはメモを取っている。
そんな中で、のんびりと外を眺めている僕たちは少し異質な気がした。と言っても、高くて見晴らしの良い場所に居るだけで、気分が盛り上がらないわけが無い。
出来るだけ小さな声を心掛けていたけれど、どれだけ声量が抑えられていたかはわからない、それでも気を付けながら遠くに見える建物についてレイに質問をしながら一通り見て回った。
「どうだ、楽しいかったか」
円筒の中を降りている途中で、今度はレイが僕に質問してきた、僕の興奮っぷりを見ているので答えはわかっているだろうけれど、そこは演技派の僕は大げさに頷いて、
「楽しかったよ、あんなに高い所に登ったのは初めてだったし、アトモスとは海の色が違うんだね、海は繋がっているのに不思議だった。レイは何で色が違うか知ってる?」
「ああ、ここはアトモスよりも南に位置しているから水温が違うんだ、あとこの辺は急に深くなっているからな、途中で色が変わっていただろ」
思っていた答えと違って僕は驚きが隠せなかった、てっきり知らないと返って来るものだと思っていたので、全部を聞き取ることが出来なかった。それでも僕は頷いて理解したふりをした。
守衛に挨拶をして展望台を後にして、僕たちは昼食のためにレストランへ立ち寄った。
すでに複数台の魔力車と馬車が止まっていて、その店の盛況ぶりが伺えた。店内に入るとすでに空き席が無い程埋まっていたけれど、運良く退店する人たちがいたお陰で、それほど待たずに席に着く事が出来た。
「何か食べたい物は有るか・・・って言っても、そんなに料理の種類もわからないよな」
レイがメニューを僕に見せながら聞いて来た、確かに肉、魚、野菜、果物、それぞれの材料くらいは半分ぐらいはわかるけれど、それをどう調理すると、どんな名前になっているのかは全然わからない。
「お前も海の近くに住んでるから魚は食べ慣れてるだろ、それと肉はやっぱり好きみたいだな。それと適当に前菜を頼んで・・・、腹は空いてるんだよな」
「うん」ぐぅうううう
大きな返事と共に僕のお腹が鳴った、店内に漂う多種多様な料理の匂いが、僕のすきっ腹を刺激したようだ。
「腹が減ってりゃ何でも美味い、それが美味い料理ならなおさら美味いからな」
「僕もそう思う」
恥ずかしさを誤魔化すように大きな返事をしたけれど、僕のお腹が鳴った事をレイはからかうつもりが無い様だ。
「お前は好き嫌いが無いみたいで、食べさせ甲斐が有るから好きだわ」
にこにこと話すレイを見て僕も笑顔になった、昔から好き嫌いが無かったわけでは無いけれど、父も母も姉も料理をする関係で、味付けから調理方法、使う食材の偏りが有るから好き嫌いが無くなっていった。
ここにきてそれが、こんなに喜んでもらえるとは思っても見なかった。僕は料理を前に手を合わせて食材と両親と姉に感謝をした。




