僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第76話
展望台の中に入ると建物の外周に沿って上まで続く階段と、中心に聳え立つ筒状の柱の様な物が見えた、その周りを数人の人達が慌ただしく動き回っている。僕たちが中に入った時に皆が一斉にこちらを見てきたけれど、アトモスの道場に入った時も似た様な経験をしているのでそれほど気にはならなかった。ただどちらかと言うと僕を見て来たと言うよりも、レイを見て元の仕事に戻って行ったように感じた。僕たちの他には観光客など一人もおらず、みんながここで働いている人なのは不思議に思えた。
「訓練も兼ねて、上まで階段で登るか」
レイが中央の柱のボタンを押した後で、にこやかに話しかけて来た。ここで良いよと言うと、見上げると首が痛くなるほど高い最上階まで階段で行かされる事は間違いないので、僕は丁重にお断りをした。
「いいんだぞ子供は遠慮しなくて」
「遠慮なんかじゃないよ、弁えてるだけだよ」
「なんだ難しい言葉を使って、勉強している事をひけらかしたいのか」
「まあそれほどでもないけどね」
そう言って僕は胸を逸らした、そんな僕のおでこをレイは指で押すと同時に、レイの後ろで柱の扉が開いた、
「それじゃあこれで一気に登るか、階段で登ってると明日になっちゃうかも知れないからな」
「そんなに遅くはないよ、夕方には着くさ、多分」
「・・・まあ良いや、中に入れよ」
レイに言われた通りに扉を潜ると、中も外側と同じように円形をしていた。10人くらいは一度に乗れるくらいの広さが有る、窓の様な物は有るけれど今は外を見る事は出来ない。レイが扉の横にあるボタンを操作するとガタンと扉が閉まり、ふわりと浮き上がった様に感じた時にはものすごいスピードで上に登っていた。のぞき窓からは流れていく無機質な柱の内側と、時折訪れるガラス張りの所では外の景色がちらりちらりと見えた。
「俺が階段で登るよりも、ちょっとだけこれの方が早いんだよな」
レイが冗談ぽく言っているけれど、恐らくそれは本当の事だろう。当然、僕が階段を登る速度はこれより遅いし、何なら途中で休憩をしないといけないから余計に時間がかかる。
「これも魔力で動かしてるんだ、どこもかしこも魔力を使ってるんだね」
「ああ、便利な生活には魔力が要る、そのために竜を狩る、それには俺たちが要るって事さ」
「狩竜人が竜を狩れないと、魔力が無くなって階段で登らないといけないんだね」
「そうなるな、そうなったときに困らないように下りは階段で行くか」
またレイがにこやかに挑発してきた、ここで挑発に乗る程僕は馬鹿じゃない、
「良いよ、意地悪されて階段を使って展望台から降りたって、いい経験だよこんなに高い所から階段で降りるなんてね、どんな事でも、ここでの思い出話を父も母も楽しみにしてるから、早く話したいな当然姉ちゃんにも・・・ね」
「言うようになったな、シリル」
「師匠が良いからね」
「・・・それは、俺は褒められたのか」
「あ、着いたみたいだよ」
ガタンと言う音を立てて扉が開くと、そこは一面ガラス張りの明るい部屋だった。遥か彼方まで見通せて、港から明日の闘技場、泊っている宿に狩竜人船の整備工場、街のすべてとその向こうまで全部見て取れる、まさしく展望台そのものだった。




