僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第74話
扉を潜るまでは少し早足だったけれど、廊下に出てからはゆっくりと歩きだした。
僕は後ろを振り向いて、誰も着いて来ていない事を確認してから、
「なんで、僕たちの隣の席に、座ったんだろうね」
「あの感じだと、大会に出るお前を見に来たって風でもなかったしなぁ」
「だってあのお姫様は世界最強なんでしょう、僕がレイよりも強いなら偵察をする価値は有るかもしれないけど、今の僕を見てもね」
「それもそうだな」
すこしにやけた顔でレイは僕をからかって来た、そんな事はいつもの事なので気にせずに話しを続けた、
「それに話してる間、僕の方ばかり見て来てたけど、レイの方を一度も向かなかったんだ」
何と無く感じた違和感だったけれど、似たような事がこの前も有ったような気がする、
「どうやら俺は嫌われてるみたいでな、その割に行く先々でばったり会う事が多くて気まずくてさ」
「そうなんだ、もしかしてそれって・・・」
僕は出かかった言葉を飲み込んだ、それは明日になればわかる事だし、もし仮にそうだとしても、僕から伝える事では無いように思う、それに、どうせならレイに対する秘策として、取っておきたい気持ちの方が大きかった。
「どうしたシリル、黙り込んじゃって」
「何でも無いよ、明日はどこへ連れてってくれるの」
「そうだなぁ、明日は魔力車が借りれるから、結構遠くまで行けるんで山の展望台とかどうだろう」
「え、借りれたの魔力車、初めて乗るんだ」
「そうだろう、前に話したときに目の色が変わってたからな。無理を言って貸して貰えたんだ」
「うわぁ凄い本当に、ありがとう嬉しいよ」
「まあな、俺の持ってる権力を全部使ったんだぞ」
僕は心から喜んだ、そんな僕を見てレイも気分が良くなったようだ、
夜通しとは言わずとも、寝落ちしてしまうくらいには夜更かしをした所為で、朝食は少し遅めになってしまった。それでも顔色一つ変えずにメイドの人達は、部屋まで焼きたてのパンと良く冷えた牛乳にゆで卵を届けてくれた。
朝食を終えて、宿から出る時にも一切の支払いをせずにお見送りまでしてくれた、予約の上に先払いなんて変わっているなとつくづく思った。
長い庭を通り抜けてようやく門の前に辿り着くと、そこにはピカピカの魔力車が止まっていた。
「これ、これなの、こんな綺麗なのに乗っても良いの」
僕は興奮して魔力車に駆け寄った、ハンドルに何本かのレバー、舵を切るのはハンドルだと直ぐにわかるけれど、レバーはどう使うのかはさっぱりわからない。
「レイ、このレバーはどうやって使うの」
「ああそれか・・・、俺にも良くわからないな」
「そうかぁ、そうだよね」
何気ないいつものやり取りだったけれど僕は重大な事に気付いた、これからこの魔力車をレイが運転するんじゃないのかと。




