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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第72話

僕たちが全部飲んでしまったからなのか、違うスープを提供したことの説明に料理長と思われる人まで厨房から出てきて弁明をし始めた。僕がたくさん飲んだ所為だと心を痛めていると、目の前のレイは下品に音を立ててスープを啜り、

「いやぁ相変わらず上手いスープだなぁ」

と誰が見ても下手糞な演技が見え見えの台詞を吐き、二度三度とスープを口に運んだ。

それがお目当てのスープだと気付いたお姫様はなぜかすっと冷静さを取り戻し、料理長に謝罪をするとお目当てでは無かったスープを飲み始めた、そのスープもとても美味しかったのか、お姫様は機嫌を取り戻したかのように見えた。

それからは静かに食事を進め、デザートのケーキを食べていると、

「どうだったシリル、この町の料理は口に合ったか」

レイの問いかけに思わずスープが美味しかった、と言いそうになるのを堪えて食べた料理を思い出してみた。やっぱり思い出されるのはスープだったが、それを口に出すのは憚られるため、なんかの肉を焼いてソースをかけたものがメイン料理だったためにそう答えた。

「あれはこの前狩って来た川豚の肉だな。ちょっと大きくなりすぎてたから肉が硬かったけど、美味かったなら良かったよ、狩ってきた甲斐が有るってもんだ」

「へぇ、あの肉はレイが狩って来たんだ」

僕の言葉に姫様が少し反応したように感じたけど、僕の話しなんかを姫様が気にするわけ無いと思った僕は話しを続けた、

「どうやって狩ったの、レイ」

「あいつらも雷鳥と似たようなもんさ、ロープの付いた矢を撃ち込んで甲板に引きずり降ろして」

レイは話しながら手のひらを振り下ろした、恐らく持っている剣を振り降ろしたと言う意味なのだろう。

「そうなんだ、じゃあまた簡単な狩りだったんだね。レイはその狩りの後で僕を迎えに来てくれたの」

「ああそうだぞ、アトモスから帰って来てすぐ狩りに出かけてな。船の整備が完ぺきだったから、休みなしで狩りに出されて大変だったんだ」

「良かった、お父さんの整備は上手く行ったんだね」

「ああ、良すぎて困ってるくらいだよ。今度船の調子が悪くなった時にはまたアトモスに行きたいくらいさ、宿はまたお前の家に厄介になってな」

「また来てよ、家はいつでも大歓迎だからさ」

「そうか、それは嬉しいな。俺が言うのもなんだけど、今まで食べて来た中でもお前の姉さんの料理は抜群に美味かったぞ」

「僕のお母さんの料理よりも?」

「あ、いや、お前の母さんの料理も美味しかったぞ」

レイは頬を赤らめてもじもじし始めた、僕を迎えに来た時も姉を探していたけれど、運悪く姉は出かけていたので、レイは姉に会えなかった。

「いやあしかし、シリルは肉が一番美味いと思ったのか、俺はてっきり三杯もお代わりしたスープが一番だと思っていたんだけど」

とんでもない事を口走ったレイへの返答に困っていると、鋭い視線に気が付いた。いつの間にかお姫様が僕を睨んでいたのだ、お付きの人達も目線は隠れているけれど同様に僕を睨んでいる様に感じて、僕は内心穏やかでは無くなっていた。

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