僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第70話
レイに連れられて着いた宿屋は僕の家とは比べられないほど豪華な建物で、まず敷地に入る前に守衛さんが居て、そこからとても綺麗に整備されている庭園を超えるとようやく辿り着いた宿屋の前にはメイドと思われる女性がドアの前に立っており、僕らを見かけると頭を低くして扉を開けてくれた。建物内には受付が有るのが当たり前だと思っていたけれど、その宿屋には受付は無く、宿泊者名簿も書かなくてもメイドが部屋まで案内をしてくれた。
「レイ、ここはとても変わった宿屋だね」
「うん、そうかな。それほど変わっているとは思わないけど」
「だってさ、レイが予約を入れて置いたにしても、あれだけ警備が厳重な割に随分簡単に中まで入れて貰えたし、僕の家と比べるのが失礼なくらいに豪華な建物だし。こんな凄いところに泊まれるなら、守備隊の人達も代表になりたかったんじゃないかな」
「あ、ああ、予約は入れて置いたから、何も書かなくても通して貰えるのは問題は無いぞ。それにたまたま今年だけ運が良かったのか何かだろ、いつもはこんなに良いところには泊まれないと思うぞ」
レイは少し挙動不審に答えたが、豪華な部屋に興奮していた僕はそんな細かな事は気付かず、
「そうなんだ、代表の権利も運良く取れた様な物だし、僕は運が良いのかもね」
無邪気に笑う僕に釣られてレイも笑い出した。
それから暫くのちに扉がノックされた、
「夕食の用意が出来ました、こちらでお食べになりますか、食堂へ参られますか」
「どうするシリル、ここで食べるか食堂へ行くか」
何と無く自分の家の賑やかな食堂を思い出し、食堂へ行きたい旨をレイに伝えると、レイは扉の向こうで待っているメイドに対して食堂へ行くと伝えた。
「かしこまりました、お待ちしております」
そう答えるとメイドは音も無く立ち去って行った、僕たちもだらしなくなっていた服装を整えると食堂へ向かった。食堂へ向かう廊下からは中庭が見え、白い椅子とテーブル、それに屋根には植物による傘が作られていて、窓を開けたらすぐに外、という自分の家との違いに改めて驚いた。
見上げるほどの大きな扉を開けて貰うと、白いテーブルクロスが敷かれたテーブルが燦然と並び、そのうちの一つのテーブルの椅子を、それぞれ後ろに立っていたメイドが引くと僕たちに座るように促して来た。レイと僕はそれぞれ席に着くと、直ぐに飲み物が出された。僕にはレモンの果汁が入っている冷水、レイは恐らく赤ワインだと思う。それを見て僕は小声で、
「何も注文してないのに勝手に赤ワインなんか出して、僕がそれをしたらお母さんに怒られちゃうよ」
それを聞いたレイは苦笑いをしながら頷いていた。




