僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第68話
旅の疲れと満腹感の相乗効果に、気持ちの良い冷風を浴びて、僕はいつの間にか眠ってしまったようだった。
「お、目を覚ましたかシリル。気持ちよさそうに寝てたぞ、初めての船旅は疲れたか」
目を覚ました僕に気付きレイが声を掛けて来た、まだ眠たかったけれど、これ以上レイに僕の寝顔を見守って貰うのも悪いので、二度三度と背筋を伸ばして無理やりに眠気を飛ばした。
「よおしそれじゃあ俺がこの町を案内してやるよ、と言いたいところだけど、どこかのお寝坊さんがなかなか起きなかったから、時間が無くなっちまった。観光は明日にして今日の所は宿でゆっくりするか」
さすがに自分の居眠りの所為なので、どこでも良いから行きたいとはわがままも言えず、僕に出来たのは黙って頷くだけだった。僕が残念がっているのがレイに伝わったのか、
「安心しろ、明日は居眠りできないくらい色々回ってやるから、な」
僕はレイの言葉に笑顔で頷いた。
お店の会計を済ませている時、入り口の扉が開いたと同時に白尽くめの人達が5人店内に雪崩れ込んできた。それに続き白色を基調とした煌びやかなドレスに身を包み、ドレスの輝きよりも美しい女性が、店に足を踏み入れるが早いか僕たちの方へ声を掛けて来た、
「あらあら、こんなところで偶然ですわね」
その美しい容姿から小鳥のさえずりの様な声かと勝手に思っていたが、猛禽類の咆哮の様な鋭さを帯びた声に僕が驚いていると、
「こんなところと言いますがお姫様、あなたがここに居られる事の方が偶然だと思いますが」
レイの言葉に白尽くめの人達がざわつき始める、それにレイは彼女の事をお姫様と言ったぞ。
「こちらへお邪魔すると連絡を入れたはずですが、知らなかったとは言いませんよね」
「もちろんお聞きしていましたが、こんな店に来店されるとは思いませんでした」
「わたくしがどのようなところへ寄ろうとも問題は無い筈ですけれど、それとも、あなたはわたしの行く先を制限なさるおつもりで」
「そんな事はもちろん御座いませんが、こんな店では満足なおもてなしも出来ないと存じますが」
二人の口論・・・と言うのか、会話を僕は黙って聞いていた。しかし店の奥の店長と思しき男の人が真っ赤になって今にも爆発しそうな顔をしてい居たので、レイの服の裾を引っ張り小声で、
「多分店長が凄く怒ってるから、店を出た方が良いんじゃないかな」
僕のささやきを聞いて、レイも店長の顔を確認してはっとした後で、
「それでは私はこれで失礼させていただきます、素晴らしい時間をお過ごしくださいませ」
レイはお姫様に頭を下げ、ついでに店長にも頭を下げると僕の手を取って退店するために出入口へ進んだ。しかしお姫様がその場を動こうとしなかったために白尽くめの人達に僕とレイは囲まれてしまった。
「あの、帰りたいのですが」
「そちらが、あなたのお弟子さんですか」
「はいそうですが、何かお気に障りましたか」
お姫様は僕を一瞥すると、
「名乗りなさい」
僕はどうして良いのかわからずにレイの顔を見ると、レイは小さく頷いたので、
「シリル、アトモスのシリルです」
姫は再び僕を一瞥すると、何も言わずに店の奥へと進んで行ってしまった。




