僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第66話
船の旅は初めての経験だったけれど、とても快適に過ごす事が出来た。
貨物のおまけで乗せて貰えている立場なので、僕たちの扱いは貨物より下なのだけれど、レイのお陰なのかそれほど邪魔がられることも無かった。
途中途中で荷物の積み下ろしと、積み上げを繰り返したため、目的地の城下町に着くのは2日ほどかかってしまったが、その分運賃が安くなっているのだから仕方がない。
「明後日が開幕日だからゆっくり出来るな、シリルどこか行きたいところは有るか」
初めて見る城下町は、僕の住むアトモスなどとは比べる事がおこがましい程活気に溢れ、行きかう人たちの多さに圧倒されていた。ある程度は予想をしていたけれど、それを上回る現実に僕は思考能力を失ってしまった。行きたいところと言われても、どこにどんな施設が有るのかわからず、足元がふらついている事にも気が回らなかった。
「レイ、とりあえずどこかゆっくり座れるところが良い、なんだか頭がくらくらして来た」
「そうか、それは船酔いだな、吐き気は有るか」
「吐き気は無いけど、なんだか地面がゆらゆらしてる」
「そりゃあお前がゆらゆらしてるんだ、じゃあどこか座れそうなところと言うと・・・、ああ、あの店が良いな」
レイは僕の手を掴むとゆっくりと目的地に向かい歩き始めた、僕は揺れる地面に戸惑いながらレイの手をしっかりと握って体重を預けながらゆっくりと後を着いて行った。
「いらっしゃいませ」
店の扉を開けると良く通る声の店員が声を掛けて来た、決して大きな声では無かったがしっかりと耳に聞こえてくる声だった。
「個室は開いてるかな、出来れば風通しの良いところが良いんだけど」
「こちらへどうぞ」
店員の案内で店の奥へと進む途中ですぐに気が付いたのだが、明らかに店の外よりも店内はひんやりとしていた。風通しが良いと言っていた割に小さな窓しかない部屋に通され、僕が不思議そうな顔をしていると、
「待ってろ、直に風が吹いてくるから」
僕の表情から何を考えているのかバレてしまったようで、僕が何かを言う前にレイが先手を打ってきた。
そのため僕は何も言わずに座っていると、壁の隙間から冷たい風が吹き出して来た。
「窓は開けなくても良いの、そうしないと風通しが良くないと思うんだけど」
「開けなくても良いよ、せっかくの冷気が逃げちゃうからな」
僕はレイの言っている事が理解できなかったけれど、外の気温よりも明らかに低い温度で吹き込んでくる風はとても気持ちが良かった。
「冷蔵庫と同じ原理だ」
冷たい風に、船酔いと強い日差しにのぼせていた僕の頭が冷やされて、思考がめぐるようになってようやく気付いた。
「そう言う事、俺も原理は知らないが気持ちいい物だろう」
僕は席を立ち冷気の吹き出てくる壁の前に立ち、僕はまだまだ知らない事が多いと改めて認識した。




