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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第59話

「何も言わなくて良かったんですか」

修理を終えたばかりの魔力炉は快調そのもので、安定した出力のお陰か、艦橋まで伝わって来ていた不協和音は鳴りを潜め、せわしなく動いていた計器の指針もゆっくりと散歩をしているかのようにゆっくりと動いている。一際豪華な椅子で昼寝をしようとしていた男は、日よけのために顔に載せていた帽子を取り、声を掛けて来た男の方に起き上がると、

「いやあレイよ、俺はきちんと挨拶は済ませたぜ」

「ええ、なんてこった船長はずるいな、今日旅立つって知っていたなら、俺ももっと色々と教えて置いたのに」

「いつも言ってるだろ、いつ別れが来るかわからねぇってよ。と言っても、お前は大会でまた会うんだろ」

「確かにそうですけどね、それでも別れの挨拶くらいはしておいた方が良かったかなって」

「泣き顔が見てぇってんならそれも良いけどよ、俺はあんまり子供の涙は見たくねぇからな」

「泣いちゃいます・・・かね」

「泣くだろうな、必死に泣かないと堪えはするだろうがよ」

「すぐにまた会えるのに」

「それよ、俺は国に帰ったら次はいつ船を出せるかわからねぇしな。まあ縁が有ればすぐに会えるし、運が悪けりゃ・・・」

「船長」

レイは大きな声で船長を制した、船長が何を口走ろうとしていたかはレイ自身も痛いほどわかる言葉だけれど、それはまだ心に留めておきたい言葉だ、

「その先を口にしたら、いくら船長でも怒りますよ」

「ははは、口に出さねぇとしても、狩竜人になるってんならその覚悟は必要って事だ。あいつが狩竜人の道を行くってんなら俺は応援してやるけどよ、いついかなる時も、すぐそばにそれが有るって事を自覚しねぇとな」

「それは、これから数年で自覚して貰うしかないですね。あまり気乗りはしないけど、あいつには紹介状を渡しておきますよ」

「ああん、あそこのか」

「ええ、まだ生きてるみたいなんでね。ですが、あそこ以上の適所を俺は知りませんし」

「そうか、紹介状を書いたら俺にも見してくれよ、お前がなんて言って頭を下げるのか見物だからな」

「嫌です、とは言えないですね。国印も要りますし、あいつは犯罪歴無いよな」

「お前じゃねぇんだしそれは大丈夫だろ、犯罪には巻き込まれちまったがな。しかし、お前も思い切った事したな、大会の代表にしちまうなんてよ」

「ええ、ですがそれが一番手っ取り早かったですからね。代表選手には手を出さない事は知ってましたし」

「お前も、お前の周りも色々やられてるからなぁ」

レイは大きくため息を吐いて俯いた、色々とあった事を思い出しているのか暫く黙った後で、

「なんかむかついて来たな、子供を誘拐するなんて事は今まで無かったのに」

「何か事情が有ったのかも知れねぇが、俺が口を出すと国際問題になっちまうからなぁ。レイ、お前顔見知りなんだから、次に会った時にでも一言言って置いてくれよ」

「どうですかね、向こうは俺の事なんてなんとも思って無いと思いますよ、それにその事は、あの姫様は知らない筈ですし」

「踊り子が勝手にやった事、だからな。それ以上はつつかない方が身のためかな」

「そうですね、あまり関わると戦争になりかねませんから、内政干渉はどこの国でも重罪です」

「まあそう言う事だな、それじゃ俺はひと眠りするから、後は頼むわ」

「はい、おやすみなさい」

船長は帽子を顔に載せ、椅子に身体を預けた。レイは艦橋から周りを見渡し、視認できる範囲に何事も無い事を確認すると踵を返し、艦橋を後にした。

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