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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第53話

夕食には約束通りカレーが出てきて、僕と姉は念願のお代わりをする事が出来た。カレーの素となる粉末をアル船長の伝手で、定期便で海送してくれることになり、お店でいつでも提供できるようになると母は言っていたが、雷鳥の肉を使うととても高額になるため、店で出すカレーは豚肉になるようだ。

夕食が済むとレイはすぐに船に帰って行ってしまった、本当なら色々と教えて貰いたかったけれど、さすがに荷物が届いているので、やる事が山ほどあるらしい。そのため僕は店の奥からあくせくと働いているシンディとシェリーを眺めていた、店には二人の看板娘を目当てに来店してくれる客も増えたようで、空席も無いほど繁盛している。二人が船に乗って居なくなって、母と姉に変わってからも、この喧騒が続いて欲しいなと思った。

風呂の準備が出来たと母に呼ばれたので、風呂に入って部屋に戻ると、いつものように本を読んで就寝した。


次の日、学校へ行く途中でアーノルドとマリーに学校を休んだ理由を聞かれた。そう言えば誘拐されたから次の日は学校を休んだんだっけ、そんな事も有ったなぁと思い出したけど、口止めをされているので突然の発熱で休んだと説明して、もう直ったから今は元気だよと伝えた。当然と言えば当然なのだが、二人は嘘の説明でも納得をして、お見舞いに来れ無かった事を謝って来たので少し心苦しかった。かと言って本当の事を言う訳にもいかないから、これは、吐かなくてはいけない嘘なのだと、自分を納得させた。

学校に着き、朝礼で先生が教室に入って来た時に、狩竜人船の見学の約束をしていた事を思い出した。先生も僕の顔を見ると、なんとも言えない複雑な顔をしたけれど、放課後までは特に何も無かった。

本当なら道場へ行って、レイと剣戟の訓練をしたいのだけれど、約束を完全に忘れていた自分に非があると思うので、今すぐにでも帰りたい衝動を抑えて職員室までやって来た。

「あの・・・」

先生の前に立ち、約束をすっぽかした謝罪の言葉を述べようとしたけれど、僕の顔を見るなりぽろぽろと涙をこぼし始めた先生を見て、僕は言葉を失ってしまった。

「ごめんなさい」

僕と先生は同じ言葉を口にしていた、驚いた顔をしている僕を先生は抱きしめると、

「シリルが謝る事なんて無い、大変な思いをしたんだよね」

大変な思い・・・、先生は僕が誘拐された事を知っているのか、誰が教えたのかはわからないけれど、先生たちに伝わっている事は僕にも教えて欲しかった。

「教室では話す事が出来なかったから、また呼び出してごめんなさい。シリルが大変な思いをしている時に、私たちは何も出来なかった」

「でも、誘拐されたにはされたんですけど、すぐにレイが助けに来てくれたので」

すこし間が開いてから先生が口を開いた、

「レイって呼び捨てにしているけれど、レイナルド・エースの事・・・だよね」

「はい、レイには随分気を使わせてしまったみたいで、昨日は船の中を隅々まで案内してくれたし、試し切りまで見せて貰えたんですよ」

にこにこと自慢話をする僕を、涙目で見ていた先生は再び涙を溢れさせた。

「・・・い・・・良いのよ、大変な目に合ったのですから、その様子だと心配の必要は・・・」

「はい、もう吹っ切れています。これからレイに剣戟の訓練をして貰う予定が有るので、もう帰りますね」

先生に心配して貰える事は嬉しいけれど、結局は自分の心の持ちようだとレイに教えて貰えたし、先生が昨日の事を怒っている訳では無いと判断した僕は、失礼しますと頭を下げて反転すると出口の扉に小走りで向かった。

先生の目から涙が消えて、羨みと恨みの眼つきに変わっていた事を僕は知らない。

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