僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第51話
僕とレイは暫くの間、圧倒的な存在感を示す魔力炉をただただ眺めていた。僕は未知の物への探求心と憧れと恐怖を感じていたけれど、レイが何を考えていたかは解る筈も無い、ただレイにとっては空を飛び、永らくは恐怖の対象でしかなかった過去の竜たちと、今の狩竜人たちを同じ高さまで引き上げてくれた魔力炉と狩竜人船に、畏敬の念をいだかない筈は無いだろうとは思った。
「おういお前たち、修理の部品が届いたからちょっと手伝ってくれ」
ぼーっと突っ立っている様に見えたのだろう、アル船長が僕たちに声を掛けて来た。いつの間にかすぐ真後ろに横付けされた貨物船も大きな口を開け、たくさんの物資が降ろされようとしていた。
「シリルは船長の後ろに居な、荷物につぶされでもしたら大変だからな」
レイは僕をアル船長に預けると貨物船の中へ走って行った、僕はアル船長と顔を見合わせた後であくせくと動き回っている船員を眺めていた。
船員たちの動きは見事なもので、一切の無駄のない動きで荷物を降ろすと直ぐに船内に戻って行き、外で待ち構えている船員は降ろされた荷物を狩竜人船の前から横から後ろから船内に詰め込んでいる、狩竜人船よりも大きいかなと思える大きさの貨物船から山の様に荷物が降ろされて、それらがどんどんと狩竜人船へ運び込まれて行く。
「どうでぇ、これはこれで見ごたえあるだろう」
アル船長が僕に聞いて来た、僕は大きく頷くと興奮気味に思いの丈を捲くし立てたが、アル船長はにっこりと微笑みながら僕の話しを聞いてくれていた。
「これであと3日か4日でまた出航できるな、シリル、お前の親父さんには本当に世話になった、もちろんお袋さんやお姉さん、それにシリル、お前にも世話になったな」
「そんなアル船長、別れの挨拶みたいなこと言わないでよ」
「出航の時はお前は学校だからな、別れの挨拶みたいなもんさ」
アル船長の言葉に僕の胸が締め付けられる思いがした、目から溢れ出す涙を僕は拭う事もせず、
「だって・・・でも、また戻って来るでしょ」
アル船長は僕の頭に手を置いた、船長の手からぬくもりが伝わって来る、
「ああもちろんだ、だがそれがいつになるかはわからねぇ、雷鳥がたくさん狩れたら少し売りに来るかもしれないし、ぜんぜん狩れなくて来ないかもしれない。だけどな狩竜人なんて事をやってりゃあ、いつどこで死んでもおかしくはねぇ、昨日別れたあいつが今日にはもう居ない、そんな商売だからよ、出来る時に別れの挨拶をしちまうのは俺たちの悪い癖だな」
僕は嗚咽で何もしゃべれなくなった、そんな僕の頭をアル船長はいつまでも撫でてくれていた。




