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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第04話

市場ではとても珍しい肉が入ったようで、ちょっとした騒ぎになっていたが、とてもじゃないが仕入れられないと父も母も残念がっていた、なんでも20年ぶりくらいの入荷だったらしい、姉も僕も一度も食べた事が無いので特に思い入れは無いが、父と母は帰路の間も思い出の味に花を咲かせていた。

家に着いたのは午後4時を少し回ったころだった、僕を除いた3人は急いで夜の営業の仕込みを始めた。僕は部屋に戻って夕食が出来るまで待っていても良かったけれど、何と無くテーブルとイスを整えたりと開店準備を手伝う事にした、それからしばらくすると開店前にも関わらず大勢の人たちが店に入って来た、

「おおさっきの坊主じゃねぇか、どうやらここで有っているようだな」

「あ、アル船長・・・でしたよね、こんにちはまだお店の方は開店前なのですけど」

「すまんすまん、ちょっと親父さんと開店前に話しがしたくてな。それと、ここは宿屋もやってるって聞いて来たんだが」

「父でしたら厨房に居ます、宿屋の受け付けは扉が違いますので、そちらにお回りください」

「おおそうかいありがとよ、お前らは向こうの扉から入んな」

がやがやと話していたために、何事かと父と母が厨房から出てきた、船長から話しがあるようだと父に伝えると顔を顰めた後で、

「エドから聞きましたか」

「おうよ、どうにも人手が足りなくてな、ずいぶん前に引退しているとは聞いたが、現役の時には船に乗ってたそうじゃねぇか」

僕は父の言葉にとても驚いた、父の口から今まで一度たりとも船に乗っていたと、聞いたことが無かったからだ。父は船長の誘いをのらりくらりと交わしていたが、そこで母が間に入った、

「すいません、夫婦と子供たちで何とかこの店と宿を回しています、今ここでこの人が抜けたらとてもじゃないですけど回らなくなってしまいます」

「すいません、お困りなのは重々承知ですが、今はこの店と家族が大事なので」

そう言ってから父が母を抱き寄せると二人は見つめ合った、船長はそれでも諦めが付かないらしく何とか父をスカウトしたいようだ、

「店を回す人手が足りねぇなら、俺のとこの船員を使ってくれ、あいつらは陸に上がったら何もする事がねぇからよ、日がな一日ぶらぶらとされてちゃあ修理の邪魔なだけだからよ」

「お給金の方は・・・」

「ああ給料なんかいらねぇよ、どうせ修理が終わるまではここに滞在するんだ、何やってようが契約金は払ってるからよ」

「でもこの人は調理もして貰っていますし・・・」

「なーんにも心配いらねぇよ、俺は食事にはうるさくてよ。腕のしっかりした奴らを俺自らスカウトしたぐらいなんだ、なんだったら今から腕を見て貰っても良いぜ、ちょうど良い肉が手に入ったからよ、調理して貰おうと思ってたんだ」

「どうしましょう・・・」

母は口元に手をやり父と船長の顔色を窺っている、父は少し困り顔をして視線を逸らした、

「もちろん旦那さんへの給料も弾むぜ、なんせ資格持ちなん・・・」

「どれほどで」

船長の言葉が終わる前に母が反応した、船長は子供の前だからと母の手を取ると、その手のひらにささっと金額を書いたようだ、確認のためか母が自分の手のひらに数字を書くと、船長は首を少し傾げた後でそれでいい、と答えた。母はみるみる笑顔になり父の背中をバチンと叩き、

「あなたが居なくてもお店の方はエイミーと私で何とかするわ、それにシリルも少しは手伝ってくれるみたいだし」

父は叩かれた背中をさすりながら僕の方を見た、その引きつった笑顔を見て大人の世界を少し覗いた気がした。

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