僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第47話
艦橋へ来た時と違う階段を下りて行くシンディに付いて行くと、今までのすれ違うだけの最低限の広さしかなかった廊下の左右に、恐らく武器類を掛けて置くフックや、剣を載せて置く台を固定するベルトなどが備え付けられ、まっすぐ進んだ前方には広い甲板が見えた。
「ここでそれぞれ武器を持って外に出て、竜を狩るのよ」
シンディが言った言葉は普段と変わらない澄んだ声だった、だけどレイやシンディ、ジェイジェイやシェリー、もちろんその他の狩竜人たちがここで武器を持った時、その眼前には今日の様な澄んだ青空では無く、自分の何倍もの大きさの竜が待ち構えていて、それに向かって走って行くのはどれだけの勇気を振り絞れば出来るのだろうか、そんな事はとてもじゃないが今の僕には出来ない。
「シンディはここから外に出る時には何を考えているの」
「そうねぇ、とにかく帰ってきたら何をしたいか考えているかな、すぐにシャワーを浴びたいとか、美味しい食事がしたとか、とにかく戻って来た時の事ばかり考えているわね。」
「相手の竜の事は考えていないの、火を噴くかもとか爪が鋭いかもとか」
僕の質問にシンディは少し考えて、考えが纏まったのか僕の方を向いて、
「戦い方がわかっている竜を狩る場合はきちんと調べてから狩るわよ、それでも不意を突かれて火を噴かれたりしたらそこでおしまいなんだけどね。初めて狩る竜の場合は、その竜の体格や住んでいる場所、どんなものを食べているかなど、その竜の生態からある程度までは想定してから狩りに行くんだけど、どれだけ調べてもやっぱり初めて相対する時は何が起きるかはわからないの。だけどそこで得られた情報を元にどうやって狩るかを突き詰めていくの、それは最高に楽しい時間、その狩りの途中で自分は死んでしまうかもしれない、でも、それでもまた戦いたい、断末魔の叫びを上げるのが自分が先か竜が先か、その興奮は狩竜人にならないと得られない快感なの」
恍惚の表情を浮かべてシンディが話し続けている、レイも似た様な事を言っていたけれど、狩竜人と言うのはやはり人を狂わせるほどの魅力を持っていると思った。生と死のやり取りをしているとそうなってしまうのか、その答えを知るためには狩竜人にならないとわからないだろう。
ゆっくりと歩を進めて甲板に出た、暗いところに居たからだろうか日差しを眩しく感じた。
ところどころ引っ搔き傷やへこみが見える、変色している所も有った。
この傷の一つ一つに竜との死闘の歴史が詰まっているのだろう。
僕は足を踏み鳴らしてみた、ビクともしないこの甲板を凹まし傷を残す竜という生き物に、僕は憧れと恐怖を感じたが、それと同じくらいその竜を狩る狩竜人たちにも尊敬と恐怖をいだいた。




