僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第44話
「それじゃあシリル、あなたの番よ。私がやったようにしてみて、あ、でもまだ弾は撃たないでね」
シンディに促された僕は、見様見真似で魔砲を構えてみた。魔力による補助が効いていた剣と違い、重さを両手に感じるけれど、子供である僕でも狙いを定める事ぐらいは出来た。ただ問題としては僕の目では的の真ん中の円をとらえる事は出来ず、的の方向へ魔砲を向けているだけの状態だった。
「へえ、結構様になってるじゃない、でも狙いが全然ダメね。まだ引き金は引かないでね、こうして・・・、もうちょっとだけ下に向けて・・・、あ、行き過ぎ、ダメダメ、もっとゆっくり動かさないと、うん、いいわ、そう、そこよシリル、撃って」
後ろからシンディに抱えられ、両手を支えられ、両肩に重さを感じながら僕は弾を放った。
「凄い当たったわ」
耳元でシンディが声を上げたが、僕の耳はシンディに包まれていたために、弾が当たった衝撃音は聞こえなかった。
「もう一発撃とうか」
シンディがウィンクをしながら親指を立てた、僕も同じように親指を立て、魔砲を構えた。
「今度は私が支え無いから、撃って良いと言ったら撃ってね」
シンディは僕の手から両手を離すと腰に回して、僕の前で手を組んだ。
「そうそう上手くなったわね、もう私が手伝わなくても良さそうね。いいわ、そこよ。撃って」
2発目の衝撃音は音では無く、両耳を塞いでいるシンディが微かに震える事で的に当たった事が伝わって来た。拍手をしながら喜んでいるシンディを眺めながら、音が振動で伝わる事と、大きな音で微かにでも震える事がわかった。
「それじゃあ最後は私は何も言わないから、自分の意志で撃ってみて」
的の中心の円を外したとしても、2発とも的を捉えている事で少しは自信が付いていたが、それでも一人では心細い。黙って見守っているレイとアル船長も固唾を飲んで見守っている中、僕は出来るだけの事をやる決心をした。
まず呼吸を整える。レイにも見せて貰ったし、シンディにも見せて貰った。ゆっくりと呼吸をしていると少しだけ時間が遅く流れて行く気がする。僕のやり方で正解なのかはわからないけれど、精神統一は出来ているようだ。そして魔砲に息を吹きいれた、シンディも試し打ちではあまり意味が無いと言っていたが、呼吸の一環としてやってみた。けっしてシンディがいつも口を付けているからだとか、そんなやましい気持ちは僕の中には微塵も無かった。そんな事を考える余裕など僕には無い、魔力を込める事は出来ないが、僕の気持ちは弾に込める事が出来たと思う。その証拠にシンディも何も言わなかったし、レイもアル船長もからかってこなかった。そして呼吸を整えたはずだったが、鼓動は高鳴りそれに釣られて呼吸も荒くなってきてしまった、定めていた狙いも上下左右にぶれ始め、とても的に当たらないだろうと判断して一度構えを解いた。
「どうしたの、やっぱり一人じゃあ怖いかな」
シンディが心配をしてくれた、何もやましいところの無い僕はきょどきょどとしていたら、見た事の無いほどの笑顔でレイとアル船長が僕を見ていた。
何だろうと思っていたらアル船長が噴き出し、それに釣られて大笑いしだしたレイがその理由を説明しだした、
「シリル、ぷぷぷ、その魔砲の握っているところを見てみろ」
レイに言われた通りに、僕は握っている所を見てみると文字が刻印されていた。
J.J
高鳴っていた僕の鼓動は落ち着きを取り戻し、静まり返った水面の様な静寂を取り戻した。




