僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第41話
すらりと伸びた刀身は鈍く光り、周りの空気事切り裂いているかのように錯覚した、手に持った瞬間からすべての重さが消え、柄を握る手応えだけが身体に伝わって来る事に、脳と身体が切り離されたかのような違和感を感じて身体が震えた。
「おいおい、シリルお前震えてるけど大丈夫か」
レイが笑いながらからかって来た、当の本人は身体が震えてきている事に恐怖し始めているというのに、まったくアル船長もそうだけれど、レイも人をからかうのが好きなようで困る。
「不思議な感覚で・・・なんでかはわからないんだけど、身体が震えてきて怖いんだけど・・・」
僕の返答にアル船長もレイも大笑いしだした、あまりな態度に少し腹立たしくなったけれど、助けて欲しかったので出てくる言葉を飲み込んだ。
「わはは、シリル震えてるのはお前じゃねぇのさ、お前の持っている剣が震えてるんだよ」
「シリル、俺も同じように船長に笑われたからな、その鍔の所を台の出っ張りに、そうそこに載せてみろ」
僕がレイに言われた通りに剣を台に載せると、空気が抜けるような音と共に剣が台に固定され、再び手には重みふぁ伝わって来た。それと同時に僕の身体が震える事は止まったけれど、手にはまだ痺れた様な違和感が残った。
「この震えるのも魔力なの」
「お、凄いなシリル良くわかったな、その通りだ。ようやく情報が解禁された最新式の超高速微振動の刀身だ」
「微振動・・・それってどう凄いの」
僕の素朴な疑問だった、包丁で物を切る時は前後に動かすのは、母や姉が調理しているのを見ているので知っている、微振動したところで、何が変わるのだろうか。
「そうだなぁ、まあこればっかりは見てみないとわからねぇだろうな。レイ、何か試し切り出来るもの有るか」
「あーちょうど壊そうと思っていた木箱が有るんで、それを切って貰いましょうか」
「それで良いや、準備してくれ」
レイはかなり大きめの木箱と、最新式の剣を載せた台をスロープから降ろし、僕たちを手招きした。
「これを切っても良いの」
再び剣を持たされた僕がレイに問いかける、今は超高速微振動と言うのは切ってあるらしく、僕の身体は震えていない。
「ああ、十分な切れ味だから全力で振り下ろすなよ、地面に当たると刃毀れが怖いからな」
全力でやるなと言われてもこの剣に全く重さを感じないから、どれくらい力を込めて良いのか全然わからないけど、折れた長剣を振り回してたぐらいの力で木箱に振り下ろすと、バキバキと激しい音と共に木箱が割れた。
「おおシリル、結構良い筋してるじゃないか、初めてなら中々だな」
レイに褒められて嬉しくなり、うきくきしているとレイが柄の所のつまみを回すと、刀身が超高速微振動し始めた。
「な・な・んんか・カチカチ・変な・カチ・か・感じ・な・なんだ・よね」
さっきと比べても明らかに振動が大きくなっており、まともにしゃべる事も出来なくなってしまった。
「そ、それで、や、やってみろ」
またレイがからかって来た。少し腹が立った僕は、前よりも強く剣を振り下ろしてしまった。
刀身が木箱に当たったのは見えた、木箱は何の音も無く二つに別たれ、それでも刀身には何の抵抗も感じなかった、僕がおかしいなと思ったのはその後だった、重さを感じない筈なのに勢いを止めない剣は地面を割り、それでも勢いを止めずに僕の方へ向かって来た。
「離すなよ!」
レイの叫び声が聞こえた、地面を切り裂いた剣が再び刀身を現し、僕の左側を掠めて跳ね上がると、僕はそれに釣られてその場でぐるりと一回転をして、その場に倒れこんだ。
僕の手にはまだ震える剣が握られていた。




