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僕がただ竜を殺すだけの物語 第1章 運命の出会い 第40話

次の日の朝、朝食を食べ終えてゆっくりと身支度をしていると、母にレイが迎えに来たから早くするようにと急かされた。少しだけ急いで身支度を済ませ、レイに朝の挨拶をすると、

「今日には部品が届くみたいで、のんびり見学できるのも配達が来るまでだから、急かして悪いけど、まあ見て楽しいところは少ないけどな」

「そんな事無いよ、中に入れるだけでも楽しみだよ」

「そうかそれなら良いが、じゃあ走って行こうか、なんてったって持久走で代表を勝ち取ったんだしな」

「・・・レイが本気で走ったら、あっという間に見失うから止めてね」

僕の言葉にレイは笑顔で答えると、僕の頭を手で軽く叩くと港の方へゆっくりと歩き始めた。レイの大きな背中を眺めながら僕はそれに続き港へ歩き始めた。


レイは僕の速度に合わせて凄くゆっくり歩いて貰っている筈なのに少しづつレイとの間隔が開いて行き、そのたびに僕は小走りをして後に着いて行った、

「シリル、もうちょっとゆっくり歩いたほうが良いか」

「大丈夫だよレイそのままで」

と言ったけれど、なんでこれほど歩行速度に差が有るのかを考えた、レイをよく見てみるとほぼ一定速度で歩いていると思っていたけれど、実は一見まっすぐに歩いているように見えるが、他の歩行者に詰まり速度が落ちる事が無いように、上手く躱して歩いているようだ。そんなレイの足元を見てみると、以前道場で教えて貰ったあの歩法を使っていた。

「僕も練習したらレイみたいに歩けるかな」

そんなレイがとても格好よく見えた僕は思わず尋ねた、レイは僕の声に反応して振り返りながらも、歩く速度は変わらず、しかも後ろを向いているにも関わらず、誰にもぶつかる事は無かった、

「俺に出来るんだからシリルにも出来るよ、言っただろ全力で走ってもぶつからないって、歩いてるならなおさらぶつかる事なんて無いぞ」

今日から少しずつでも良いから練習しようと心に決めた。


港に着いて、レイがエドワードさんと言葉を交わすと直ぐに扉が開いた。2度目の狩竜人船は魔力炉が降ろされ、色々なところが開いたりしていて依然見た姿形とは違い、整備中だと言われれば納得するし、臨戦態勢だと言われれば、それぞれの部位に何かしらの意味を見出せそうだった。

まず目につくのは大きく開いた船首で、竜が大きく口を開いたかのような威圧感を感じた、

「レイ、なんであそこが開いているの」

「ああ、あそこから荷物の出し入れをするんだ、捕まえた竜を中に入れたりすることも有るんだぞ」

レイの言葉に僕は思わず駆け出した、そしてその大きく開いた口の前に立つと、薄暗い船内はまるで竜の口の中を彷彿させ、降りてきているスロープはまるで舌を伸ばしているかのようで、その舌を駆け上がると胃の中に飲み込まれたかのような錯覚を覚えた。

胃の中には様々な物が並べられ、そのどれもが僕の興味を誘ったけれど、やはり一際大きい剣に興味を惹かれた。

「これは、何で台に載っているの」

「持ってみればわかるけど物凄く重いから、台に載せておかないとまともに動かせないからな」

「そんなに重いなら、使い物にならないんじゃないの」

「ああ、使う時は魔力で軽くするんだ、これはそれだけじゃなくて最新の・・・とこれはまだ内緒だったかな」

「もう解禁されたぞ、よく来たなシリル、気になるんなら一回持ってみるか」

声を掛けて来たのはアル船長だった、僕の身長よりも長く見える剣を持ち上げるなんて、僕に出来るわけが無い。僕は剣が置かれている台に近付き柄を握ってみた、ズシリと来る重みを感じ取る事は出来たけれど、案の定剣は微動だにしなかった。

「やっぱり重くて無理ですね」

アル船長はそりゃあそうだと言ってニヤリと笑うと、剣が置かれている台のつまみを回した。

シューと言う音と共に剣を固定していた部品が外れて、それと同時にあれほど重かった剣の重みを感じなくなった。力を込めずとも剣は持ち上がり、それは折れた長剣の柄よりも軽く感じた。

「良かったなシリル、それとフォークが有れば、どんな分厚いステーキでも食えるな」

始めて手に持った長剣に、僕の心は踊り出した。

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